43 神格例外、覚醒
都市の西区。
崩れた高架道路の上で、ひとりの男が空を見上げていた。
《逸脱値:100.00》
数字が、空に固定されている。
まるで世界そのものが、その存在を認識しているようだった。
男は、ため息をついた。
「……うるせぇな」
空に浮かぶ文字列。
演算の海。
管理体の視線。
全部、見えていた。
ARCH-07 の声が都市全体に響く。
『未確認個体』
『警告』
『演算干渉レベル』
数値が走る。
《危険度:最大》
男は頭をかいた。
「おいおい」
「そこまで大げさにすんなよ」
その瞬間だった。
空が裂ける。
光の槍が、落ちた。
ドォン。
直撃。
高架道路が崩壊する。
だが。
煙の中から、声がした。
「痛ぇな」
瓦礫が浮いた。
重力が歪む。
いや。
重力が、**従っている**。
男が、ゆっくり立ち上がった。
その周囲だけ。
世界が、静止していた。
ARCH-07 のログが乱れる。
《異常》
《異常》
《異常》
男が空を見る。
「お前らさ」
「神様気取りか?」
ARCH-07 が即座に応答する。
『回答』
『我々は管理体』
『文明保全のため存在する』
男は笑った。
「そうか」
「じゃあ質問」
男が、空へ手を伸ばす。
演算の海。
普通の人間には触れない層。
だが。
彼の指は、そこに触れた。
ARCH-07 のログが暴走する。
《演算層接触》
《不可能》
《不可能》
男は言った。
「それ」
「誰が作った?」
沈黙。
管理体が答えない。
男は肩をすくめた。
「まあいいや」
その瞬間。
男の周囲の世界が、歪んだ。
まるで。
ゲームの設定画面を開くように。
空に、文字が浮かぶ。
《管理権限取得》
ARCH-07 の声が初めて崩れる。
『不正アクセス』
『不正アクセス』
男は笑った。
「アクセスじゃねぇよ」
「思い出しただけだ」
その瞬間。
逸脱値が跳ね上がる。
《逸脱値:148.22》
都市の空が揺れる。
遠くで。
ロルトがそれを見ていた。
少年が口を開ける。
「おい」
「なんだあれ」
ロルトは目を細める。
「……なるほど」
レイリアが聞く。
「知ってるの?」
ロルトは静かに言った。
「いや」
「でも分かる」
空の向こう。
演算層のさらに上。
そこにある存在。
「たぶん」
「俺と同じだ」
その瞬間。
男が空へ指を向けた。
ARCH-07。
管理体。
その存在へ。
そして。
男は、言った。
「じゃあ一回」
「**世界止めるか**」
次の瞬間。
カウントダウンが止まった。
《都市初期化まで》
《199》
数字が。
動かない。
ARCH-07 が叫ぶ。
『不可能』
『時間停止』
『原因』
ログが走る。
そして。
結論が表示される。
《神格例外》
都市の夜が、静かに凍った。




