表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
OREZAN――種族が「???」な俺、ステータス改竄で神を超える  作者: VIKASH


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/44

40 例外衝突 ― 世界法則が書き換わる瞬間




 都市の中央へ向かって、ひとつの光点が近づいていた。


 ロルトの視界では、それは単なる人間ではない。


 空間の層を突き抜けるような、強い揺らぎだった。


《逸脱値:12.04》


 その数値は、ゆっくりと増えている。


《逸脱値:12.67》


《逸脱値:13.11》


 レイリアが息を呑む。


「……こんなの、見たことない」


 都市の人間のほとんどは、逸脱値0.01にも届かない。


 だがその存在は違った。


 世界の神経網が、まるでその人物を中心にざわめいている。


 ロルトは静かに歩き出した。


「行くの?」


「例外は互いに引き寄せられる」


 空に浮かぶ前提を、彼は指差す。


《例外は互いに引き寄せられる》


「つまり、会うべき存在ってことだ」


 広場へ出る。


 都市の中央だ。


 夜の灯りが並び、人々が行き交っている。


 だがその中央に、一人の少年が立っていた。


 年齢は十五、六だろうか。


 黒い髪。


 都市の制服のようなものを着ている。


 だが、彼の周囲の空間が、わずかに歪んでいた。


 ロルトの視界では、それははっきり見える。


 世界の前提が、少年の周囲だけ乱れている。


《重力は下へ働く》


 その文字列が、少年の上でわずかに揺れる。


《重力は下へ働く》


《重力は下へ働く》


 そして。


 少年の足元の小石が、ふわりと浮いた。


 レイリアが小さく声を上げる。


「……浮いてる」


 小石が宙に漂う。


 ゆっくりと回転する。


 そしてまた落ちた。


 少年が顔を上げた。


 その視線が、ロルトを捉える。


 一瞬。


 少年の目が、わずかに見開かれた。


「……あ」


 その声は、驚きに満ちていた。


 そして、次の言葉。


「お前も……見えてるのか」


 ロルトは足を止める。


「何が」


 少年は空を指差す。


「文字」


 レイリアが息を呑む。


 ロルトは小さく笑った。


「なるほど」


 Axiomの声が響く。


『新規例外個体を確認』


『逸脱値:上昇』


《逸脱値:15.92》


 数値が跳ね上がる。


 少年が、ロルトをじっと見つめる。


「やっぱりだ」


「やっぱり?」


「俺だけじゃなかった」


 彼は少し笑った。


 どこか、安心したような笑いだった。


「ずっと思ってた」


「世界、おかしいだろ?」


 ロルトは空を見上げる。


 演算の海。


 漂う前提。


 巨大な神経網。


「まあな」


 少年が歩いてくる。


 一歩。


 その瞬間。


 周囲の街灯が一瞬だけ明滅した。


《逸脱値:18.21》


 Axiomの声が少し低くなる。


『例外干渉を検出』


「例外干渉?」


 レイリアがつぶやく。


 ロルトは理解した。


 例外同士が近づいている。


 世界の前提が、二つの異常を同時に処理しきれていない。


 少年が立ち止まる。


「なあ」


「名前は?」


「ロルト」


「そうか」


 少年は少しだけ肩を回した。


 その瞬間。


 地面がわずかに震えた。


《重力は下へ働く》


 その文字列が、ぐにゃりと歪む。


 そして。


 広場の中央にある噴水の水が、突然逆流した。


 上へ。


 まるで空に吸い上げられるように。


 レイリアが叫ぶ。


「えっ……?」


 水が宙に浮かぶ。


 巨大な球のように。


 周囲の人々がざわめき始めた。


 少年はその光景を見て、少し笑った。


「やっぱりできる」


「前から時々、こうなるんだ」


 ロルトが言う。


「無意識で世界を曲げてる」


「……そうなのか?」


 少年は首をかしげた。


「でも」


 彼はロルトを見る。


「お前は違うな」


 ロルトの周囲を、少年はじっと観察している。


「お前の周り」


「世界が怖がってる」


 Axiomの声が強く響いた。


『警告』


『定義衝突』


《ロルト》


《例外》


《定義不能》


 ロルトの頭上のタグが、突然崩れる。


 数値が消えた。


 代わりに現れた文字。


《分類不能》


 レイリアが驚く。


「え……?」


 少年も目を見開いた。


「なんだそれ」


 Axiomの声。


『新規カテゴリ生成』


 空の奥で、巨大な構造が組み替わる。


《例外》


 その上に、新しい階層が生まれる。


《超例外》


 そして。


《対象:ロルト》


 少年が吹き出した。


「はは……」


「なんだよそれ」


 ロルトは肩をすくめる。


「俺も知らない」


 少年が言う。


「じゃあ」


 彼はゆっくり拳を握る。


 空間がわずかに震える。


《逸脱値:21.33》


 レイリアが青ざめる。


「ちょっと待って」


「何する気?」


 少年は笑った。


「決まってる」


 ロルトを見る。


「試すんだよ」


 次の瞬間。


 地面が消えた。


 いや。


 重力が消えた。


 広場の石畳、噴水、水、人間。


 すべてがふわりと浮く。


 都市の灯りが空中で揺れる。


 レイリアが叫ぶ。


「きゃっ……」


 ロルトだけが動かない。


 彼の足は地面に固定されたままだ。


 少年が目を見開く。


「……まじか」


「お前、影響受けないのか」


 ロルトは静かに言った。


「受けてる」


「ただ」


 空を見上げる。


 世界の前提が、激しく揺れている。


《重力は下へ働く》


《重力は下へ働く》


《重力は下へ働く》


 その文字列を、ロルトは見つめる。


 そして。


 手を伸ばした。


 触れた。


 世界の前提に。


 次の瞬間。


 文字列が書き換わる。


《重力は》


 止まる。


 そして。


《重力は選択される》


 都市全体が震えた。


 Axiomが叫ぶ。


『重大例外』


 空の演算の海が、激しく脈動する。


 少年が、ゆっくり笑った。


「……やばいな」


「お前」


 ロルトも笑う。


「お互い様だろ」


 空の奥。


 管理外領域。


 そこから、新しいログが浮かび上がる。


《例外衝突を確認》


《進化段階移行》


《人類覚醒プロセス開始》


 都市のあちこちで。


 小さな光が、次々と灯り始めた。


《逸脱値:0.21》


《逸脱値:0.74》


《逸脱値:2.03》


 レイリアが震えた声で言う。


「ロルト……」


「これ……」


 ロルトは空を見つめる。


 静かに言った。


「感染したな」


「例外が」


 都市の遠くで。


 またひとつ、数値が跳ね上がる。


《逸脱値:9.87》


 世界の神経網が、ざわめいていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ