表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
OREZAN――種族が「???」な俺、ステータス改竄で神を超える  作者: VIKASH


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/44

33 救われなかった未来が、彼女を敵にした




 都市は、静かだった。


 崩壊の兆候は消え、空の裂け目も一時的に収束している。

 人々は自分たちが“戦場の中心”にいたことすら理解しないまま、日常へと戻りつつあった。


 信号は規則正しく点滅し、車は走り、店のシャッターが上がる。

 誰もが生きている。


 ――それが、唯一の異常だった。


 ロルトの視界にだけ、残像が見えていた。

 ビルの壁際、交差点の中央、雑踏の隙間。

 そこにあったはずの“可能性”が、空白として抜け落ちている。


 未来図が、完全ではない。


 枝分かれは無数に残っている。

 だが、その根元の一部が、明確に――削除されていた。


 誰か一人分。

 名も、顔も、記録もない。


 だが、確かに存在した未来。


 ロルトの胸が、重く軋む。

 選択肢を増やしたはずだった。

 世界を守ったはずだった。


 それでも、“全て”ではなかった。


 隣で、レイリアが立ち止まる。


 彼女の瞳が、都市の奥を捉えたまま動かない。

 秩序核としての演算が、未来図の欠損を検出していた。


 ――理解してしまったのだ。


 守られた都市。

 救われた多数。

 そして、計算の外で切り捨てられた一つの可能性。


 レイリアの中で、何かが静かに反転する。


 秩序とは、最適解を選ぶこと。

 だがその最適解は、常に“誰かを含まない”。


 光が、彼女の周囲で揺らいだ。

 これまで安定していた秩序波が、微細なノイズを帯び始める。


 未来図に、新たな表示が浮かぶ。


 《秩序核、再定義開始》


 空気が、冷える。


 ロルトは気づく。

 これは第三層の攻撃ではない。

 世界そのものの反応だ。


 レイリアは、秩序を守った。

 だが同時に、“選択の自由”を肯定した。


 矛盾。


 世界は、その矛盾を許容しない。


 《個体:レイリア》

 《秩序逸脱値、基準超過》

 《排除対象、指定準備》


 都市の光が、一瞬だけ暗転する。


 人々は何も感じない。

 だが、ロルトの視界には見える。

 都市の下で、巨大な演算が彼女を“不要”として分類し始めている。


 レイリアが、ゆっくりとロルトを見る。


 恐怖はない。

 後悔もない。


 ただ、自分が選んだという事実だけが、そこにある。


 ロルトの拳が、震える。


 救えなかった未来。

 切り捨てられた一人。

 そして、今――目の前で消されようとしている存在。


 彼は理解する。


 これは選択の罰だ。

 世界を救うとは、世界から裁かれることでもある。


 未来図の最深部に、文字が浮かぶ。


 ――進化段階:第二層・共鳴期。

 ――例外個体、二名確認。

 ――修正対象、指定。


 ロルトは一歩、前に出る。


 もう、迷わない。


 選ばれなかった未来があるなら。

 排除される秩序核がいるなら。


 次は――

 世界そのものを、選び返す。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ