ハゼ釣りデート
「雪華さ、今日岸壁採集と潮溜り採集に行こうと思ったんだけど一緒に行く?」
「何かあったの?」
「いつも釣りに行く防波堤の岸壁採集でハナデンシャを採集したってSNSに上げてた人がいたからさ、俺も採集したいと思って」
「ハナデンシャって何だっけ?」
「ウミウシの仲間。餌がクモヒトデと判明している種類だな」
彩夏の教室にメダカ水槽のセッティングをした翌日の日曜の朝食後、雪華に海に岸壁採集に行かないか提案してみた。
「折角、海水水槽の設置場所を広げたのにウミウシなの?」
「う〜ん。それを言われるとなあ。やっぱ魚のほうがいいか」
「それよりもハゼ釣りに行こうよ。今年はハゼパーティはやらない事になったし」
「わかった。それじゃハゼ釣りに行くか!彩陽姉さんが家庭教師に来るし、ハゼの天ぷらにでもすっか」
「うん!ハゼの天ぷら食べようよ」
雪華はハゼ釣りに行きたいみたいだから、ハゼ釣りに行くことにした。
河口だから電車には乗らずにバスのみで行けるから、パパパッと準備してハゼ釣りに出発した。
「彩夏ちゃんの教室のメダカ水槽に入れた水草はどの種類にしたの?」
「水草育成用の照明じゃないし、二酸化炭素を添加するような設備も無いしな。ごく普通の水槽だから、簡単に育成可能な種類だよ」
「学校のメダカ水槽だもんね」
「ただ、気泡が発生する水草を植えてきたからさ、光合成で酸素が発生する様子も観察出来る、小学生の勉強には最高の水槽にしてきたぜ」
「ひろ君らしいや。でも管理する先生は大変だ」
「週交代の当番制で生徒が管理するみたいだからさ、管理方法をしっかりと教えてきたし先生にはマニュアルを渡しておいたよ」
「そうなんだ」
「管理方法を教えていたらさ、俺の呼び方が先生になったんだよね」
「あはは」
バス内でそんな会話をしていれば釣り場最寄りのバス停に到着する。
「それじゃあ、ミミズは俺が付けるから雪華が釣っていいよ。雪華が休憩する時に俺がやるから」
「ありがと」
釣り道具屋に寄って青イソメを買うのは面倒臭いからウチで飼育中のミミズを餌にするから、雪華にはやらせない。
雪華は立ちながら釣りをしているけど、俺はその隣でクーラーボックスに座っている。
雪華はハゼを釣り上げると俺のほうに寄越すから、ハリを外してからミミズを付けて振り子の要領でポイントへと投げてやる。
「ひとりで釣っているけど、流れ作業でやっているから釣れる数は多いよね」
「まあな。息が合っているからこそ出来るワザだよな」
「夫婦ならではだよね」
「だな」
「ひろ君、休憩したいから交代してくれる?」
「あいよ」
雪華から竿を受け取り、俺が釣りはじめるとブルッとした感触があったから釣り上げると小さなカレイだった。ここで雪華が釣ったカレイは小型水槽で今も飼育しているけど、これも仲間入りだな!ただ、喧嘩するから別の水槽だけど。
「さて、天ぷらのことを考えるとそろそろ終わりにするか」
「うん」
「雪華?どうした?」
木製の杭?みたいなのを見ながら、心ここにあらずな雪華を心配する。
「ムラサキイガイってムール貝なんだよね?」
「だな。同じ場所に群れているミドリイガイも食用可能だけど、急にどした?」
「いや、防波堤にあるのに食べたこと無いなーと思ってさ」
「あー。防波堤のは貝殻が大半だと思うぞ?クロダイやイシダイの餌になっているだろうから」
釣り餌として利用することがある位だしな。
「そっかー」
「食べてみたい?」
「うん。また?と言われるかもだけど、テレビ番組の影響で」
「なるほどね!それなら磯場で最大サイズが繁殖している場所を知っているから採取して食べてみるか?」
「食べたい!調理法はあたしが調べるから」
「はいよ。外来種だから密漁対象外で大量に採取しても問題無いからな」
釣り倶楽部の時に採取するかはわからんが、今月中にムラサキイガイが食卓に出ることになるだろう。
え?来月に専門学校の推薦入試があるし、中間テストもあるけど遊んでいていいのか?って?いいんだよ!ちゃんと勉強しているからな。
雪華が休憩中に俺が釣った9匹のハゼは蔵持先生達のお土産にした。今年はハゼパの予定は無いから蔵持先生から「ありがとーございます」と感謝されたよ。
「こ、これがハゼの天ぷらなの?研修中の都内では高級な天ぷらでございましたわよ?」
「お?料亭か天ぷら専門店にでも行ったの?」
「いや、上司に頼まれて値段を知らべる機会があってね。そこで知ったのよ」
「なるほどね」
帰宅したらすぐにハゼを天ぷら用に開いて晩飯にしたら、彩陽姉さんが乱れた言葉遣いになっていた。ま、食べ始めたら「んまー」と言って白ご飯が腹の中に消えていきました。




