【第65話:窓辺の決意】
静かな午前の光とそよ風に包まれて。
今日は、少しだけ勇気を出して窓を開け、
外の空気や小さな前進を感じるるなを描きました。
【第5章】心のひかりをたしかめて(25話目)
そよ風と静けさに包まれた午前のひととき。
るなはソファで本を閉じ、
しばらくカーテン越しの光や、
部屋に流れる穏やかな空気を感じていた。
気がつけば、雲の流れもゆっくりと変わっている。
光の射し方が少しずつ強まり、
部屋の奥まで柔らかな明るさが広がっていた。
外からは鳥のさえずりや、
たまに通る自転車の音も聞こえてくる。
「そろそろ、窓を開けてみようかな」
ふと、るなはそんな気持ちになる。
少し勇気を出して立ち上がり、
リビングの窓まで歩いていく。
ガラス越しに庭の緑や小さな花が見え、
その生命力に心がほんのりと温かくなる。
窓の鍵をそっと外し、ゆっくりとスライドさせる。
新鮮な空気が部屋の中に流れ込み、
土や草、花の香りがほんのりと鼻先をくすぐる。
足元には、朝よりも少しあたたかい陽射しが差し込んでいる。
「気持ちいい……」
るなは声に出さず、
そっと目を閉じて深呼吸した。
心にこびりついていた小さな不安や、
昨日までの重さが、風と一緒にすこし遠くへ流れていくようだった。
しばらくそのまま、
窓辺に腰かけて外の景色を眺める。
庭では、淡い色の花がそよ風に揺れ、
どこか遠くの家からは、子どもたちの笑い声も聞こえてくる。
「今日も、少しだけ前へ進めた気がする」
そんな実感が、るなの心に静かに灯った。
“無理をしすぎない”と決めていたけれど、
こうしてほんの少し勇気を出して、
新しい空気や光に触れるだけで、
自分自身を認められる気がした。
すると、キッチンから彼が顔をのぞかせた。
「風、冷たくありませんか?」
「大丈夫です。とても気持ちがいいです」
るなが微笑むと、彼も安心した様子でうなずいた。
窓の外を見ていると、
庭に小さな蝶が舞い降りて花にとまるのが見えた。
その淡い羽のきらめきは、
まるで今のるなの心のように、
そっと新しい一歩を踏み出している気がした。
部屋に広がる春の香りと、
静かな光、やわらかな風。
それらすべてが、るなに「今日も大丈夫」と
静かに語りかけてくれているようだった。
ゆっくりと窓を閉じると、
るなはもう一度深呼吸をし、
今日という一日にやさしい決意を重ねた。
たったひとつの小さな一歩でも、
自分を認める力になると信じています。
そよ風のようなやさしい日常を、
明日も0:00更新でお届けします。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。




