【第66話:陽だまりのティータイム】
外の空気や春の光に触れたあと、
自分をいたわる静かなティータイムを描きました。
今日も、小さな肯定感を大切に。
【第5章】心のひかりをたしかめて(26話目)
窓を閉じたあとも、るなの胸の中には外の空気のやさしい余韻が残っていた。
春の光とそよ風に背中を押されて、
「今日もほんの少しだけ進めた」と静かに思う。
リビングに戻ると、彼がちょうどティーセットを用意してくれていた。
カップに注がれる淡い色のハーブティーから、
やさしい香りがふんわりと漂う。
「温かいうちにどうぞ」
彼の声に、るなは「ありがとうございます」と微笑んだ。
テーブルの上には、小さな焼き菓子と、
今朝摘んできた庭の花がガラスの小瓶に生けられている。
その彩りを眺めながら、
るなはゆっくりとカップを手に取った。
一口飲むと、ほんのりと甘みが広がり、
体の奥まで温もりがしみわたっていく。
「今日のハーブは何ですか?」
そう尋ねると、
「レモンバームとカモミールです」と彼が答える。
やわらかな香りが心を静かにととのえてくれる。
窓から差し込む陽射しがテーブルの上を照らし、
カップの影がやさしく伸びている。
遠くで小鳥のさえずりや、
時折、外を通る車の音が響いてくる。
けれど部屋の中は、どこまでも静かで温かい。
るなは、焼き菓子をひと口かじった。
さくりとした食感と、バターの香りが広がる。
こうして味わうお茶の時間も、
ずっと忘れていた「自分をいたわる」ひとときなのだと気づく。
「最近は、ご自分から少しずつ動こうとしているご様子ですね」
彼がそっと言葉を添える。
「はい。まだ不安も残っていますが、
無理のない範囲で、できることを増やしていきたいんです」
るなはゆっくりとうなずいた。
「とても素敵なことだと思います」
彼の言葉に、るなは少しだけ胸が熱くなる。
「ありがとうございます」
その一言が、今日の自分をそっと肯定してくれる気がした。
カップを両手で包み、
ゆっくりと目を閉じると、
静かな温もりと、春の光、ハーブの香りに包まれる。
ほんのひとときでも、自分を労わる時間を持つことで、
また明日も、少しだけ前を向けるかもしれない――
そう思いながら、るなはもう一口、
ハーブティーを口に運んだ。
淡い陽射しが部屋の奥まで届き、
心の奥にもやさしい灯火が、そっとともっていた。
日々の中で自分をいたわる時間が、
また次の一歩をそっと支えてくれる気がします。
明日も0:00更新でお届けします。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。




