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 ふだんと変わらぬ一日は、あっけないほどあっさり終わった。

 授業終了のチャイムが鳴ると、あたしはちょろちょろしているミツオを無視して、シホと家路についた。前日とおった土手の方向とは違う駅まえに向かう。

 十五分ほど歩くと駅まえにつく。

 下校時刻の駅まえは、いろいろな学校の生徒たちがうじゃうじゃしていた。

 学校の最寄り駅の周辺はわりと発展していて、遊ぶ場所もたまる場所も、うんざりするほどたくさんある。誰も彼もがひまを持てあましてるって感じ。

 あたしとシホも直帰する習慣はないので、今日はどこのファストフードに寄ろうかなんて相談をしながら歩いた。

「でも、なんであのヤンキーモンキーはあんたなんかに夢中なんだろうね」

 歩きながらあらたまってシホがいう。

「あんたなんかのどこがいいんだろ?」

 きかれたって、そんなの知らない。そもそも、『あんたなんか』とはひじょうに失礼だ。まあ、否定する材料はとくに持ちあわせていないので簡潔に答える。

「とりえなんて、なにもないからね」

 自分でいっていて悲しくなる。

「そうだよねえ」

 ふつうに同意したうえに、シホはさらに失礼な台詞をつけたした。

「おまけに特別かわいいってわけでもない」

 とんでもない毒を吐きながら、まじまじ顔を見つめてくる。横にならんで歩きながらシホがいう。

「うーん。昔の恋人に似てるっていうほど、うちらも年くってないし。まったくわからんね、男心は」

 つらつらと内容のない会話をしていると、シホがとつぜんなにかに気づいた。

「あっ……」

 ならんで歩くあたしのずっと奥を指さしていう。

「ヤンキーモンキー」

「ほえ?」

 あたしは、あっち向いてほいの要領で、指さす方を向いてしまう。ああ、かなしき条件反射。

 あたしが振り向いた先にはゲームセンターがあった。店の外にはクレーンゲームの機械がならぶ。ガラスのなかでにっこり笑う、ハローキティのぬいぐるみ。ピンク色の四角い機械が、景品よりもたのしげに音楽を流している。

 そして。

 そのクレーンゲームの機械のまえにいるのは。

 同じクラスのヤンキーモンキー・ミツオだった。

 ミツオはほかの学校の男子生徒数名と一緒にいた。紺色のブレザーをだらしなく着くずしている、派手な連中三人組。立っているだけでもだらだらしていて、頭なんて鳥の巣みたい。色調違いのクリアな茶髪は、没個性のなかでのわずかな個性の象徴だろうか。

 クレーンゲームとは対照的に、ぜんぜんたのしげじゃない。ミツオも鳥男三人衆も。

 ヤンキーたちは一対三のかたちになってにらみあっている。

 これはもう、どれだけゆずって見てみても、お友達って雰囲気じゃない。

 ミツオ。

 からまれてるのか?

 ……もしかしたら、からんでいるのかもしれないが。

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