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無機物(小物に限る)が小人のように見える人
潜木忠敬の視界は、つねにごちゃごちゃしている。
平凡な日常をこよなく愛していた彼は、いつからか無機物(小物に限る)が小人のように見える現象に悩まされていた。
だから、忠敬の朝はいつもこのように始まる。
時刻は7:00。時間になり、主人を起こさんと真っ白な目覚まし時計が鳴る。
pipipi…pipipi…pipipi
しかし忠敬の目と耳は
真っ白の髪にこれまた真っ白なシフォンワンピースを着た小人がメガホンを持って
「あさですよー!おきてー。ごしゅじんさまー!!!」
と叫んでいるように見える。
だから、朝登校する道すがらも
「なぁ、4つ隣のおばさんがさぁ、くれるごはんまじウマいらしいぜ」
「えぇ?俺はみどり公園のじいさんのパンのがウマいって言ってたの聞いたけど」
「「まぁ俺らは食べられないけどな~」」
なんていう会話が聞こえるが、実際には隣のOLのお姉さんのカバンに付けられたスズメのストラップが揺れてるだけなのである。