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ファンタジー世界のゲスい主人公  色んな人(徐々に愛され?)→主人公

ゲスい主人公:キール。愛称はキル。26歳の魔法職員。ドライな性格。とにかく(自分が不利になりそうな)面倒事が嫌い。だけ考えて書いてみたブツ。

 真昼でもどこか薄暗く不気味な裏路地。そこは罪人、窃盗、横領、詐欺、盗人、殺人者、暗殺者…皆が思いつく限りの悪事を犯した、後ろ暗い者が好む店が多いことで有名だ。まともな親なら「一歩でも踏み込んだら二度と家に帰れない」と子に寝物語で言い聞かせる。

その一角に店を構える『Louis』に、今日は珍しいお客が紛れ込んでいた。

客――その小さな子供は、薄汚れた服装に深めにかぶった帽子で顔を隠していた。しかし、帽子の隙間からこぼれるまばゆい金髪のことにまで気付かず、一生懸命情報収集に勤しんでいた。


「あの…、この人…知りませんか」


駒鳥のようにテーブルとテーブルを渡り歩く、服装と雰囲気がちぐはぐな子供。それを視界の端に捉えながらも薬草を見分していたキールは、ざわめきに混じってわずかに聞こえた声にかすかに動きを止めた。頑張って崩してはいるのだろうが、丁寧で発音に歪みもよどみも一切ない綺麗なクイーンキッシュ語。それは間違いなくその子供が上流階級に属することを表していた。

キールが気づいたことを、この辺りの屑共が気づかないはずがなく。

今や、伺い見た店内のどいつもこいつもギラギラとした目で子どもを見ていた。


――ああ、可哀相に。


キールは数時間後に間違いなく消息不明になるであろう子供に同情した。






「――86瓶、確かに」


無愛想な店主に依頼の品を渡し、確認も済んだ。

次回の依頼も受け付けたキールは、効果の確認の為に店主が差し出した納品の中の1瓶の中身を自身に振りかけた。

並のものが手掛けると必ず残るはずのほのかな香りも残さず、次の瞬間には彼の姿はどこにもなかった。相変わらずの凄腕と効能に店主は少し笑うと店の奥に消えていった。







裏路地から瞬時に自宅(という名の隠れ家の1つ)に帰ったキールは、勝手にベッドの上でくつろぎ、優雅に紅茶を嗜む少年にため息をついた。彼…セイルはキールと身内限定で甘えたになる。わざわざ甘えやすい自分の幼少時に時間を巻き戻し、たびたびキールの家に侵入しては体に合わせて逆行し幼くなった精神で昔のように全力で懐いてくるものだから、今更無人のはずの家に誰かいても驚かない。基本ドライな性格なキールもつい初孫に浮かれるじいさんばあさんのような対応になってしまう。

―――まあ、何かしらあれば即見捨てられるほどの情しか傾けてはいないが。




「セル…てめぇまた護衛まいただろ。ここまで魔素痕跡残すようなヘマしてねぇだろうな」


指先でセイルの近くのポットを呼び寄せ空中から取り出したマグになみなみと注ぐと、キールは空気に座った。乱雑に積み上げた本の一部が部屋の主の帰りに嬉しそうに浮き上がった。

それにむっとしたセイルは主に向かう本の軌道をそらしゴミ箱に突っ込ませた。



「嫌だなぁ、キル兄。この僕がそんなヘマするわけないでしょ。そんなことよりいい加減、本の塔ばかりで足の踏み場もないこの部屋をどうにかして僕に構いなよ。ベッド以外座れないなんてどうなのそれ。あ、あと最近生意気な本買ったでしょー。生意気にも僕に威嚇してくる、力量も測れないバカ本だったからついバラしちゃった。帰りに直すから怒んないでー」


壁一面の本棚に入りきれず床に積まれ、本の塔を何棟も作っているキールの部屋。

絶妙なバランスで聳え立っているいるソレが雪崩をおこして生き埋めになることはしょっちゅうで、またも崩れた本で舞った埃にセイルは柳眉をしかめると、至る所に清浄魔法と整頓魔法をかけながら懐から封筒を取り出しキールに近寄る。封筒はまるで脈打つかのように鈍い深紅の光を放ち、今か今かと開かれるのを待っているかようにみえる。


「…お前、その手のモノ何だか分かって持ってきたんだろうな」



封筒を視界に入れた瞬間心底恐ろしそうに、まるで目を離したら爆発でもするかのように凝視したしたまま後ずさるキール。

全身から封筒を受け取ることに拒絶を示している。


「アー…、うん。僕も最初は協力したくなかったんだけど…奴が憐れでさ…つい。1回くらい会ってあげなよ、キル兄。【夜のとばり】のコネが手に入るって考えればいいじゃん。でも、うん。行き過ぎた行為は止めるからさ、キル兄、頑張って」


セルがキールの方向へ封筒の封を切ると、途端に部屋を埋め尽くす赤い光。逃げる間もなく封筒から伸びた無数の黒い腕に捕らえられたキールは、てめぇ覚えてろと動く唇を最後に封筒の中へと消えた。


「帰ってきたら、怒るかなー。ヤだなー」


セイルは役目を果たし普通の封筒になった紙をつまみ、最後にゴミ箱の中でバラバラになった本を修復する。





「ああ、まだ躾が足りなかったのですか」


本来の姿になり、帰ろうとしたセイルはまた威嚇し始めた本ににこりと笑った。






封筒から吐き出されるように捨てられたキールは床に激突する前に優雅に体制を整え足から着地した、はずだった。いきなり胴体に蹴りが入るまでは。壁に激突し、痛みに呻きながらも、体勢を整える暇もなくそのまま頭を鷲掴みされ、男と目線が合うまで持ち上げられる。


「やあっと、つっかまえたー」


にやにやとした表情と無精ひげが、綺麗な筋肉がのった体躯と整った顔を現在見事に台無しにしていた。


「…触るな変態…」


キールの心底嫌そうなじと目もなんのその。獲物をようやく捕らえたからか、語尾に音符が付きそうなほど男はご機嫌だ。


「ベスターって呼べよぅ。ああ、【夜のとばり】もダメだぜー」



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