アポロとアーテリア。
国王が去ったあと、アポロとアーテリアは何が起きたかわからないような顔でこちらを見ている。
そんな二人に向かって、オスト様が話しかけた。
「お前たちは大人たちの被害者なのかもしれないが、それにしても目に余る行動がたくさんあった。
もう貴族ではなくなったのだ。
早くこの場から立ち去れ。」
アポロは少し考えこんだ後、のっそりと重い腰をあげてこちらを振り向いた。
「メ…メ…メーティア。
君はまだ僕のことが好きなんだろう?
だから助けに来てくれたんだよな…。」
ユラリユラリと近づいてくる姿がすごく怖い。
それになぜ私がまだ好きだと思ったんだろうか。
「それはないです。」
私はその言葉にきっぱりと言い放った。
「そんなに照れなくてもいい。
どうせ貰い手がないんだろう?
君のことは僕がかわいがってあげるから戻っておいで?」
戻っておいでと言われても…。
そもそもこの人はもう貴族でなくなったことに気付いているのだろうか?
それにあなたと一緒になればお先真っ暗である。
無理無理無理…。
考えただけで吐き気がしてくる…。
「いえ、結構です。
ヘリーオスト王太子殿下のことをお慕いしておりますし、婚約者もおりますので。
ですのでこちらからご退場くださいませ。」
早く目の前からいなくなってほしいと感じた私は、騎士団に指示を出してアポロを連れ出してもらおうとしたら…
暴れだしたのである。
「お前!浮気してたのか!?
俺というものがありながら…やはりお前は最低な女だな!!」
えぇぇぇ…。
なぜそうなるんだろうか。
そもそもあなたも婚約者…いるじゃないですか。
本当に何を言っているのか意味が分からない。
「浮気も何も、合意したのはお前じゃないか。
アーテリアの方が好みだと。
だから交換も受け入れると言ったのを俺は忘れないぞ。」
ヘリーオスト王太子殿下は、じたばたとするアポロに近寄り、交換した日の当日のことを話した。
約1年前のことだというのに、アポロは覚えていないのだろうか…。
ヘリーオスト王太子殿下に向かって「お前は誰だ!」と言っているし、きっと覚えられていないのだろう。
そして二人が話しているところに、もう一人面倒な奴がやってきたのである。
「ヘルメント!聞いてちょうだい!
私、王妃じゃなくなるって…」
ヘルメントと言いながら、ヘリーオスト王太子殿下の腕にくっついてくるのはアーテリアだ。
涙目で必死に訴えているが、全く持ってかわいくない。
ヘルお兄様はデメーテルお義姉様のご機嫌取りでいっぱいなのか、聞こえているけど聞こえていないフリをしている。
「そもそも王妃にすらなっていない。
お前が王太子殿下との婚約をなかったことにした時点で、王妃になる道は途絶えている。」
「で、で、でも…」
でもも何もないだろう。
自分からその道を断ったのだから…。
「じゃあヘルメントが私をお嫁さんにして?」
上目づかいでオスト様のことを見ているが、鳥肌ものである。
本当に嫌いになってしまうと気持ちが受け付けないようだ。
「断る。俺には大事な婚約者がいるんでね…」
私の肩を抱き寄せてくるオスト様。
あまりの急な出来事に顔が赤くなってしまう。
アーテリアは私たちをみて、顔を真っ赤にして癇癪を起した子供のようにわめきだした。
「おかしいじゃない!
メーティアの婚約者はあのさえない王太子殿下のはずでしょ?
なんでヘルメントなのよ!
貴方やっぱり浮気していたのね。本当に最低な女ね!」
どうやらここまで来てまだ気づいていなかったらしい…。
しかも浮気って…。
男を王宮に連れ込んでいたのは自分だというのに、どうしてそんなことが言えるのか…。
皆もこの言葉には唖然としている。
本当に顔にしか興味がなかったようだ…。
「まだ気づいていないんですね…。
あなたの目の前にいる方がヘリーオスト王太子殿下。
あなたの元婚約者ですよ。」
ずっと最低女と言われ続けるのも嫌なので、私は目の前の彼こそがアーテリアの婚約者であることを伝えた。
「そ、そうなの!?
まさかこんなにイケメンだったの!?
仕方がないから婚約破棄はなかったことにしてあげるわ!
あなたにアポロを返すから、私に王太子を返して頂戴!」
なんてわがままな娘なのだろうか。
手のひら返しにもほどがある。
「婚約破棄した日のお約束をもう覚えていないのですか?
交換はもうできないと国王様が仰っておりました。
そもそもアーテリア。あなたはもう貴族ではないでしょう。
早くここから出ていきなさい。」
私は再度騎士たちに頼み、外に連れ出してもらった。
静かな部屋の外で、アポロとアーテリアの二人の叫び声だけがこちらまで聞こえてきた。




