断罪。
国王を筆頭に、ゾロゾロとたくさんの貴族たちが会場の中に入る。
「さて、皆集まったようだな。
それではこれより建国祭最終日の夜会を開催する。
アレウスよ。お前は団を指揮し、ここから逃げたヤツらを探し出せ。
そしてこの中の者は逃がすな。」
「はっ。ウラヌス・アーノルド国王陛下のお心のままに。」
国王陛下の前で片膝をつき、右手を固く結び左胸に軽く置く。
そして軽く下を向いた。
その後、マントを大きく翻し、騎士団員に指示を出していく。
その後ろを同じように敬礼していたニケお兄様とアテナお義姉様がついて行った。
騎士団員の数名が扉の外に出て、先程の混乱に乗じて逃げていった人たちを探しに行く。
***
「さて、皆に話しておきたいことがある。
今回、建国祭開幕宣言の後、ウラヌス・アーノルド国王陛下が撃たれた。
まぁ、大体目星はついておるがな…。」
オリオンお祖父様が国王陛下に代わり話し始める。
そして、ダルデンヌ公爵を睨んだ。
初めはアポロだと思っていたが、どうやら違ったらしい。
子供なアポロは、「俺すごいんだぜ!」「俺強いんだから言うことくらい聞けよ!」をやりたかっただけのようだ…。
「プロメティオス・ダルデンヌよ。
お前が国王陛下を撃ったんだな。」
ダルデンヌ公爵は、泣いているのか分からないが肩を震わせながら口を開いた。
「そんな出鱈目…。
誰が信じるというのだ?
私がやったという証拠なんてないじゃないか…」
「証拠なぁ…。
それがな…あるんじゃよ。」
「え…まさか…。」
国王陛下が「入れ…」というと、ゆっくりと扉が開いた。
「お久しぶりですね。ダルデンヌ公爵。
アポロ殿とアーテリアの婚約以来でしょうか。」
恋仲の相手がまさかの目撃者。
ダルデンヌ公爵だけでなく、その隣に立っていたエリスの顔もみるみる青ざめていく。
「な、な、なぜお前がここに。
確かお前は他国へ行っていたのでは…」
「あぁ、あれはね、嘘ですよ。
どうでした?嘘をつかなさそうな人に騙されるのは。」
普段は柔らかい笑みを浮かべているジュアン侯爵が、目をカッと見開いた。
「う、嘘だ…だってお前のことを隣国で見たという人がいたぞ…」
「あれくらい誰でも見分けられるじゃないですか?
もしかして見分けられなかったんですか?
身代わりをお願いしていたんですよ。
まさかそんなことも考えつかないなんて、よっぽど家の妻とお楽しみだったようですね。ダルデンヌ公爵。」
「だ、旦那様。それはその…」
ジュアン侯爵が話していると、慌てた様子でエリスが割って入る。
「あぁ、もう離縁したよ。
だから君は私の妻じゃない。
ちなみに先ほど、ウラヌス・アーノルド国王陛下から許しを得て書類ももらっている。」
ひらひらと王家の紋章が押された書状を見せる。
エリスはそれを手に取り、その場に崩れ落ちた。
「アーテリアも私の娘ではないのだろう?
ずっと気づいていたよ。
あの時の私は目が節穴だったんだ。
君が色々な女性から婚約者を奪っていた話も聞いていたのに…。
目鼻立ちも似ていないし、髪の色も違う。
初めはエリスに似ているだけかと思ったが、髪の色すら一致しない。
それでもエリスを愛していたから一緒にいたが…
まさか娘の婚約者の父とこんな関係になっているとはな。」
「パパ!ど、どういうこと…?」
「アーテリア。
君にもうパパと呼ばれる筋合いはない。」
そして、もう一枚の書類を突きつける。
娘ではないという証明を。
アーテリアは叫びながら取り乱したが、ジュアン侯爵は振り返らなかった。
「あぁ、それと今まで使った金はすべて記録してある。
後ほど請求しよう。
もちろん慰謝料もな。」
それだけ言うと、国王陛下に一礼し、後ろに下がった。
「ダルデンヌ公爵、エリス、そしてヘシオネリア。
この三名には国家反逆の罪がかかっておる。
謀反を企て、アポロを国王に据えようとしていたのだろう。」
オリオンお祖父様の言葉に、場の空気がさらに冷え込む。
「無法人を国に入れようとしていた件も、ジュアン侯爵が調べてくれていた。
そのおかげで騎士団が事前に動けた。
王都に火を放とうとしていたそうだな?」
「そ、それはヘシオネリアが…」
責任を押し付けるダルデンヌ公爵。
だが、もはや逃げ場などどこにもない。
「そういえばヘシオネリアはどこに行った…」
「こちらにおります。」
低い声とともに現れたのは――
ヘシオネリアの髪を掴み、ずるずると引きずってくるヘルメントだった。
「遅くなって申し訳ございません。国王陛下。」
「ロキ、痛いわ!やめなさい!」
「本当に滑稽だな。
まだ気づかないのか?
僕はロキではない。
ヘルメント・コルベール。
アレウスと、お前の嫌いなアフロディーナの息子だ。」
そう言ってヘシオネリアを放り投げると、ヘルメントはデメーテルの元へ向かった。
「ヘシオネリアよ。
お前もエリスと共に謀反を企てていたな。
妹だからと甘やかしてきたが、もう限界だ。」
国王の声が静かに響く。
「ダルデンヌ公爵家は爵位を剥奪する。」
場が凍る。
「殺して終わりも考えたが…まだ返してもらえていないものがある。」
「金だ。」
一言で空気がさらに重くなる。
「金を返し終わってから処刑する。
何年かかろうと、すべて返してもらう。
金貨二千枚はくだらんだろうな。
せいぜい働くことだ。」
それだけ言い残し、国王陛下はその場を去った。
ヘシオネリアが何か叫んでいたが――
それに耳を貸す者は、誰一人としていなかった。




