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婚約者を交換ですか?いいですよ。ただし返品はできませんので悪しからず……  作者: ゆずこしょう
建国祭。

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アテナ・カニャール。

メルティが謁見の間に入ってから一時間が経った。


一緒に入りたかったが、男は禁止と言われ仕方なく扉の外で待っている。


「ニケ。お前何でここにいるんだ?」


「アテナか…お前こそなぜここにいる。」


まさか、自分の婚約者がここに来ると思っておらず吃驚した。


大体アテナと会うときは鎧を着ていて手合わせをしていることが多いため、今日のドレス姿はなんだか新鮮だ。


「いや、急に国王に呼ばれてな。なんでも25歳以下の女性だけ来るようにとのお達しがあったんだ。」


そう言ってその手紙を俺に見せてくるアテナ…。


見てみると国王の直筆で王家の紋章で印鑑が押されていた。


しかし、国王がそんなこと言うだろうか…


「おかしいと思ったんだがな…やっぱり何か起きているんだろう?」


アテナは俺と違って頭がよく回る。


俺の顔を見て何かを察したのか、それ以上は聞いてこようとしなかった。


「ニケがここに立っているということは、中に私が知っている奴でもいるのか?」


「あぁ、メーティアがいる。」


俺はアテナの耳元でそれだけ伝えると、少し渋い顔をしながら「わかった」とだけ返してくる。


すべて見透かしたような目でこちらを見て、手をひらひらさせながら扉の前へ向かう。


「アテナ…」


「なんだ?そんなに心配しなくてもそこいらの男には負けんよ。」


そんなのは俺が一番よく知っている。


今まで何度手合わせをしてきたことか…。


見た目は強そうには見えないのに、戦ってみると弾丸のように素早い動きで敵をいなしていく。


そして芯が通った、男でも惚れ惚れとするかっこいい性格。


戦では背中を合わせて戦える良き相棒であり、私生活ではともに家族を支えあうことができる唯一だ。


「わかっている。メーティアのことを頼む。」


それだけ言うと、謁見の間の中に入っていった。


メーティアのことをヘスティアと呼んでほしいというのを言い忘れてしまったが…


ま、まぁ何とかなるだろう…。


そう思っていると、アルマンがこちらにやってきた。


「いいのですか?行かせてしまって。」


「アルマンだって知っているだろう?アテナの強さを…」


アルマン・フォルニャール。


実はカニャール公爵家の分家筋で、フォルニャール子爵の息子だ。


アテナとアルマンは親が従兄妹同士のため、小さいころから一緒に鍛錬などをしていた。


アテナには年の離れた兄弟が多いため、もしかしたらアルマンが一番兄と言える存在だったかもしれない。


「知っていますが…でも何でしょう。かわいいかわいい妹を死地に追いやった気分ですね…」


冷たい目で見てくるアルマンは本当に兄そのものだ。


今は男が中に入ることが許されていない分、歯がゆい気持ちもあるが、ここで待つしか方法はなかった…。


***


扉は開いているが、中の様子がおかしいことに気付く。


特に中央に行けば行くほど焦点が合っていないような…そんな状態だ。


「これは…薬か…」


中央から出ているピンクの煙…。


明らかにおかしい色をしている。


「おい、お前も僕の妻になりに来たのか!」


そう言って近づいてくるのは、アポロ・ダルデンヌだ。


25歳以下の女性限定で手紙が届いた時点で何か裏があるのだろうとは思っていたが、まさかこういうことだったのか…。


「いや、国王陛下からの命で馳せ参じたのだが、どうやら国王の姿が見えぬ。


間違いだったようだ。すまないが帰らせていただこう。」


踵を返し、周りをちらりと見る。


どうやら中央にいるのは貴族の女性ではないようだ。


この中にはメーティアもいない。


そして外側に目を向けると、デメーテルと一緒にそばかすの地味な女性が立っていた。


二人とも立っているのがやっとなのか、相当顔色が悪い。


一度全体を見渡す。


だが、メーティアの姿が見えない。


ニケの妹だし、アフロディーナ母上にそっくりな顔をしているから見分けるわけがない…。


もう一度ゆっくり見渡すと、デメーテルが隣の少女を扇子で指した。


ものの見事に地味な令嬢に徹しているメーティアを見て、思わず感心する。


その様子を見ていたのか、アポロが大きな声で呼び止めた。


「どうやら気づいていないようだから教えてやるが、国王陛下は死んだ。


そして僕がこの国の国王になったんだ。だからお前も言うことを聞け!」


「なるほど、お前が謀反を働いたということはよくわかった。


だがな、私には心に決めたやつがいるのだ。


お前なんかに娶られるくらいなら、この場でお前を地獄に突き落としてやる…」


肩を無理やり掴まれる。


ギロリと睨むと、アポロは一瞬ひるみ、力を緩めた。


その隙に腕をひねる。


「痛い痛い痛い痛いじゃないか!母上にもこんなことをされたことがないのに…」


そんな言葉は無視して、その場を離れようとする。


「お、おまえら!国王からの命令だ!あいつを殺せ!!」


しかし、誰も動かない。


当然だ。


誰も、自分の命を捨ててまで従う価値を感じていない。


「すみません!私にはできません!」


そう言って兵士たちは次々に扉を開けて外へ逃げ出していく。


その混乱に乗じて、メーティアとデメーテルと共に外へ出た。


扉を閉める瞬間、振り返る。


「我が名はアテナ・カニャール。


三大貴族序列二位、カニャールの名を持つ者だ。


そして私の名を知らぬ者など騎士団にはおらぬ。


何故なら私はアレウス騎士団長の右腕だからな。」


そのまま扉を閉めた。

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