ガイア王妃からの課題。
「秋のお茶会のお菓子ね……」
ガイア王妃から貰ったリストを見ながら、お茶会のお菓子を考える。
出来れば、ガイア王妃の考えたお菓子とは被らないもので考えたいところだけれど……。
「見たところ、ほとんどの種類のお菓子が載っているのよね……」
この国では、砂糖をふんだんに使用したお菓子が多い。
人によっては甘すぎて、あまり口に出来ない人もいるくらいだ。
かく言う私も、ケーキなどはほとんど食べられない……。
まだプリンであれば食べられなくもないけれど……。
出来れば甘すぎない、むしろ塩気のあるものもいいかもしれない。
「ん~……何かないかしら」
「メーティアお嬢様がそんなに悩んでいるの、珍しいですね。どうかなさったのですか?」
一人で煮詰まっていると、ちょうどいいタイミングで紅茶を持ってバネッサが部屋に入ってきた。
紅茶を乗せたトレーをテーブルに置き、ちょっとしたお菓子と紅茶を目の前に準備していく。
「申し訳ございません。先程何回かお声がけしたんですけど、反応が無かったので勝手に入ってきてしまいました」
「大丈夫よ。考えてもいい案が思い浮かばなかったから……」
バネッサが用意してくれた紅茶に口をつける。
なんだか、いつもより香りが強い気がする。
でも、嫌な香りではない。
「今、巷で流行っているハーブティーを用意してみました。
香りも楽しめますし、少しリラックス効果もあるそうですよ」
「そうなのね。たしかに少し心が落ち着いた気がするわ……」
時間の無い中で、あれもしないとこれもしないとと焦っているのは自分でも分かっていた。
けれど、その焦燥感がすっと和らいだような気がする。
「でしたら良かったです。昨日ガイア王妃とのお茶会以降、様子が少し変でしたから……」
まさかバネッサに気づかれていたなんて思わなかった。
私が少し吃驚していると、クスリと笑っている。
「何年お仕えしていると思っているのですか?
コルベール家の皆さんは全く表情が動かない訳じゃないですし、ずっと見ていると表情の変化が分かるものですよ」
「そ、そうなの!?なんだか上手く取り繕えていると思っていたから、少し恥ずかしいわ……」
「安心してください。気づいているのは、長年仕えている者たちですから。
もし良かったら、バネッサにお話ししてみませんか?
一人で考えるより、いい案が思い浮かぶかもしれませんし」
確かに、一人で悩むにも限界がある。
だからと言って、お母様に相談するのも違う気がするし……。
私は意を決して、バネッサに昨日のお茶会であったことを話した。
「なるほど……あまり時間が無い中で準備をするのですから、拘りすぎるのも良くないかもしれませんね……」
確かに、拘れば拘るほど時間もなくなってしまう。
バネッサの言う通りかもしれない。
ある程度数を絞って、お茶会に相応しいものを考えよう。
「あとは季節物とかどうですか?
この時期ですと……栗やさつまいもなども美味しいですよ?
あまり王都では見かけないですが、領地では食べている方が結構いましたし……」
栗やさつまいも……。
木の実や普段の夕食に出てくることが多いからこそ、それをお菓子に、とは全く考えていなかった。
確か栗であれば、マロングラッセというお菓子があった気がする。
あとはモンブランというのもありかもしれない。
モンブランはこの辺で食べる人があまりいないし、見慣れないお菓子だろうから、逆にありな気がする。
さつまいもなら、スイートポテトやさつまいも蒸しパンなんていうのもある。
モンブランやさつまいも蒸しパンは、コルベール領では普段からよく家庭に並ぶ料理のため、うちの料理人が作れるはずだ。
「バネッサ!ありがとう。とても助かったわ。
明日のために料理長に頼んで、モンブランとさつまいも蒸しパン、スイートポテトを作ってみてもらうわ!」
「お役に立てたようでよかったです。転ばないように気をつけてくださいね!」
私が調理場に行くと分かったのか、立ち上がると同時に、バネッサは私の飲んでいた紅茶のカップなどを片付けながら見送ってくれた。
***
「メーティアお嬢様じゃないですか。調理場に何か用ですか?」
調理場に着くと、朝ごはんが終わった直後ということもあり、皆一休みしているところだったようだ。
「ちょうど良かったわ!料理長にお願いがあるのだけれど、秋のお茶会が五日後にあるの。
そのお茶会でモンブランとさつまいも蒸しパンを出したいのだけれど、作れるかしら」
あまり日数がないため、準備出来ればいいけど……。
ここからコルベール領まではそこまで距離があるわけでもないし、上手くいけばなんとかなる気がする。
「そうですね。栗もさつま芋も丁度今が季節ですし、取り寄せることは可能かと思いますが……急ぎで確認してみます。
モンブランに合う紅茶もあった方がいいですかね?」
「ありがとう。とても助かるわ。
可能だったらアッサム紅茶がいいわね……。
あと、出来れば明日試作でいくつかモンブランを作って欲しいの。
ガイア王妃に持っていく約束をしていて……」
料理長は顎に手を置いて少し考えると、笑顔でこちらを向いた。
「わっかりやした。なんてったってお嬢様の頼みですからね。
数人分なら準備できると思いますので、やってみましょう」
私は調理場にいる皆に一言伝えてから、その場を離れた。
調理場の外で、バネッサは待っていてくれたようだ。
そして――
翌日。
私はモンブランとさつまいも蒸しパン、そしてアッサム紅茶の茶葉を持って登城した。




