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ゲームの裏仕様を知る者 ~凡人だった俺が“隠しステータス”で最強になる~  作者: 妙原奇天


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第3話 白百合のギルド

 翌日、ログイン直後。

 中央広場の石畳に降り立った僕の前に、純白のエフェクトが咲いた。

 そこに現れたのは、昨日フレンド申請をくれた人物――《白百合の剣姫》。


「来てくれたんだね。蓮」


 彼女は穏やかな微笑を浮かべていた。けれど背中の大剣は、ただそこに在るだけで周囲のプレイヤーを威圧する。

 広場を行き交う者たちがひそひそと囁く。「あれが剣姫のパーティか」「新入り?」。

 視線が突き刺さる。僕の胸は緊張で高鳴った。


「昨日の話、考えてくれた?」

「……ギルドに入れ、ってやつ?」

「ええ。《白百合騎士団》。私が率いる小規模ギルドよ。正直に言うと、上位ギルドに比べればまだ力は弱い。でも――君が必要」


 必要。その言葉に、胸が熱くなる。

 ギルド《スターバイト》では、僕は不要とされていた。見学、足手まとい、凡人。

 けれど、彼女の瞳は違う。まっすぐに、僕を選んでいた。


「……どうして、僕なんだ? 剣姫なら、もっと強いプレイヤーを勧誘できるはずだ」

「“違う強さ”を持っている人を探していたの。君は、昨日見せたでしょ?」


 昨日。〈Hidden Parameter Pane〉を操作したときの動き。

 剣姫は“何か”に気づいていた。だが追及はしない。ただ、その存在を前提に僕を必要としている。

 それが、逆に怖かった。


「……わかった。入る」

「ありがとう。歓迎するわ」


 通知が表示される。

 《ギルド加入:白百合騎士団》



 ギルドハウスは、街の北端にある石造りの館だった。

 重厚な扉を抜けると、そこには十数人のプレイヤーが集まっていた。剣士、魔導士、弓手、そして支援職。いずれも、一定以上の実力者だ。

 その視線が一斉に僕へと注がれる。居心地の悪さに、思わず肩をすくめた。


「剣姫、新入りは誰だ?」

「補助士か……大丈夫か?」

「前のギルドを追放されたって聞いたが?」


 ざわめき。疑念。

 だが白百合は堂々と告げた。


「彼は蓮。凡人じゃない。私が保証する」


 短い言葉に、場が静まった。

 誰も剣姫の言葉を否定できない。それほどまでに、彼女は絶対的な信頼を得ていた。

 その背に守られる感覚に、胸の奥が震える。


「……よろしくお願いします」


 頭を下げる。

 その瞬間、視界の片隅に〈Hidden Parameter Pane〉が点滅した。


 Favorability(白百合騎士団・全体):+0.0 → +0.1


 ギルド全体からの“信頼値”が、微かに上がったのだ。

 つまりこのPaneは、個人だけでなく集団単位にも作用している。

 僕は、知らぬ間に“関係性”そのものを数値で測られていた。



 夜、ギルド会議。

 剣姫がテーブルの前に立ち、地図を広げる。


「次の標的は〈赤牙ギルド〉。彼らはランキング上位を独占するために、不正に近い方法で初心者狩りをしている。放置すれば、ゲーム全体が腐る。私たちが止める」


 〈赤牙ギルド〉――聞いたことのある名前だ。

 黒い噂ばかり流れているが、誰も正面から敵対できずにいる巨大組織。

 その名を聞いた瞬間、視界の端に、あの赤い楔形がちらついた。


 〈System Whisper〉:対象“赤牙”に接触を検出。


 背筋が凍る。

 Paneの奥から、誰かの視線が這い寄ってくるようだった。

 ――“管理者権限の影”。

 それは、僕が選んだ道の先に、確実に待っている。



「蓮」

 会議の後、剣姫がそっと近づいた。

「あなたの力は秘密にしておいた方がいい。味方にも」

「……信じてるんじゃないのか?」

「信じてる。でも、誰にでも明かすべきじゃない。力は狙われる。特に、赤牙に」


 彼女の瞳が真剣だった。

 その言葉が、逆に確信をくれる。

 僕の力は、本当に存在している。凡人ではない、と。


「……わかった。気をつける」

「ありがとう。君の未来は、凡人のままじゃ終わらない」


 剣姫は笑った。

 その背後で、PaneのLuckがわずかに震えた。

 僕の“運命”が、静かに方向を変えていく。

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