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第六十八話 神の望み

 神たちと話を始めて、どんどんと断れない空気になってきていたので、オレはここぞとばかりに自分の要求も言っていくことにする。


「一つ目。まず、ここに居るみんなとオレを引き離すならあんたたちでも殺す」

「んなっ──」


「二つ目。オレはケモミミ様のためになら力を使うって決めているんだ。それが大陸の人間だと?脆弱な人族なんかに使う力なんてオレは持っていない」

「そ、そんなことはない!お主は──」


「三つ目。もしもこの世界でケモミミ様を迫害や差別するようなことがあってみろ?オレは人類を滅ぼすよ」

「き、聞いてくれっ──」


「四つ目。オレはケモミミ様とここにいる女性たちと生活するって決めたんだ。世界を見て回るなんてそんな暇はないよ」

「ゆ、ゆっくりでも──」


「五つ目。これが最後、そもそもオレたちがこのまま旅を続けていたら、ケモミミ様とみんなが疲れてしまうだろう?そんなの嫌なんだけど」

「…どうすれば…」


「分かる?そもそもオレたちが相容れることなんてないんだよね」

「なんとかならないものか…」


「創造神、我からも」

「ああ。大陸神!よろしく頼む!」


「信希殿、もしもあなたが神になることを選べば寿命が無くなり無限の時を生きることができるようになる」

「そんなものいらないよ。ケモミミ様やみんなと一緒に居られないなら意味ないじゃん」


「そのケモミミ様たちと一生一緒に居ることもできるぞ」

「え…」


「神の力の一つに『眷属にする力』がある」

「それは吸血鬼とかのとは違うの?」


「もちろんだ。神の眷属は主人と共に無限の時を生きる」

「ぐっ…なんて魅力的な…」


 もしかしなくても…それは、オレがイレーナや他のみんなと無限に一緒に居ることが出来るっていうことか…?

 や、やばい…。オレの決心が音を立てて崩れている…。


「どうだろうか?それなりに魅力的ではないだろうか?」

「でも、こればかりはオレだけで決めるわけにいかない。それに、人族のために力を使うことはないんだぞ?それでも本当にいいのか?」


「そうだな…。この世界を見てもらったうえで、信希殿が我ら同様に神になって『そう決めたのであれば』我らも納得しよう」

「なるほど…。大切なことが一つ抜けているな。オレたちは定住地を探しているんだ。とてもじゃないけど世界を見て回ることなんてできないよ」


「それに関しては、信希殿と一緒に考えたいと思っていた」

「考える?何を?」


「見てもらうのは決定なのだ。この世界は広いからな…それを何とか解決するために信希の知恵を借りたい」


 ここだ!ここで最大級の爆弾を投下してやる!絶対に断られる内容にすればいいだけだ!本気を出すんだ信希よ!


「そうだな…。じゃあこういうのはどうだ?オレが魔法具で転移の水晶を国や見てほしいところの数だけ用意しよう。それをアンタたちがその場所まで持っていって、転移の準備が出来たらオレたちがそこに行く。それだったらケモミミ様や彼女たちが疲れることもないな」


 どうだ。完璧だろう!あんたたちは忙しい。そのうえでオレのパシリなんて、プライドの高そうなあんたらには到底納得できないだろう!?さぁ、断るがいい。そもそもオレも神になんてなりたくないんだからな!


「なるほど…。創造神。どうだろうか?」


 あ、あれ…?


「なるほどな…信希殿、仮に我らが他国へ案内するとして、その間お主は何をしているつもりだ?」

「そんなの決まっているだろう!ケモミミ様やここにいるみんなとラヴラヴな異世界のんびり生活を送るに決まっている!」


「なるほど…」


 さぁさぁ!お前らはこんなふざけたやつを神にするつもりか!?さっさと断るんだ!必ず後悔することになるぞ!


「全世界を見るとなると、我らでもそれなりに時間が必要になるかもしれないが分かった。それで納得しよう。魔法具の方は信希殿に任せるぞ」

「え…」


「どうした?」


 あれ?この人たち認めちゃったんだけど…。オレのパシリするとか本気で言ってるの…?


「こ、断られると思ってた…」

「信希殿の頼みだ。ちゃんと聞くに決まっている」


「どうしてそこまで…」

「そんなのは決まっている。信希殿は既に、魔法神よりも強い力を持っているからな。彼にも使えない魔法を容易に想像してしまうお主を放っておくはずもない」


「そんなの先に言ってよ…」

「信希殿は案外、交渉が苦手なのかもしれないな?大事な手札を見せるわけがないじゃないか」


「え、えらいこっちゃあああああああ!!」


 なんかうまく騙されてしまった…。


「お、お断りを…」

「おや?これだけの女性を前にして、男に二言があるとでも?」


「わ、分かったよ。その代わり転移の魔法具なんて、まだ作ってすらいないんだ。少し時間をもらうよ?」

「もちろんだとも。我らがこの世界に来るために必要なのは、彼女たちの魔力や舞だったが信希殿なら何とかできないか?」


「そうだな…イレーナたちが消耗してしまうのは避けたいな」

「必要とあれば我らも力を貸せるのでな」


 なんだかとんでもないことになってしまっているが、これから先も神たちとの接触は必要になりそうなので、簡単に召喚する方法をどうにか考えておきたいところだ。


「少し確認したいんだけど、転移の魔法って使えりするの?」

「ああ。使える神もいるが、今日はここには来ていないな。なんせ多忙な神故、それに何度も何度も使える程の力を持っているわけではないのだ」


「そんなものをオレは作ろうとしているのか…」

「少し不安ではあるな」


 なるほど…でも、異空間収納よりも難しいのだろうか?実際にあるものとあるものを繋ぐだけだよな?

 両方への行き来よりも、片道にしてしまえば簡単なんじゃないか?


「あなたたちがこの世界にとどまっていられるのはどうして?」

「そうだな。彼女たちが使ってくれた魔力や体力が続く限り、こちらの世界に居ることが出来る。体は想像体に近いな、これを依り代にして我らの意識を刻んでいる」


「なるほどな」


 彼らの本体は、自分たちがいつも居るところにあるということだな。

 でも転移となると、今まで使ってきた魔法や魔法具とは全く別物な気もする。

 もしも、そんなものを作れるのであればとんでもない事ではないのか。そもそも神たちにも使えない魔法がある時点で、彼らも万能な存在ではなく管理者と呼んだ方がふさわしいのではないだろうか。


 ひとまず試すものとして、このオレが作った馬車の中の空間に転移できるか試してみよう。

 この空間であれば、全てを自分で想像して作っている分、他の所よりも試すのにも向いているはずだ。


「少し試してみるよ、一旦外に出てここに戻ってこれるか試す」

「あ、ああ…」


 オレは外に出る。

 彼女たちを残してきているのが少し不安だが、ここまで話した感じで敵意のようなものは感じていない。それにもし彼女たちに何かしてみろ、あいつらの所まで直接行って必ず始末する。


「空間への移動か、これまで考えもしなかったからな。でも知識はアニメやゲームでも良く使われていたからな。上手くいきそうな気もしている」


 馬車の空間のイメージを鮮明にしていく。

 自分がその空間に居るようにイメージを膨らませていく。

 まだ魔力を使わないように気を付ける。こちらの自分とあちらの自分を紐づけるようにする。意識のなくなったこちらの体をあちらの体に同期させて移動させる。


「こんな感じでどうだろうか」


 かなりイメージが鮮明になったので魔力を注いでいく。

 次の瞬間、先ほどまで座っていた椅子に移動することが出来た。


「うん。成功だね」


「す、すさまじいな…」

「なんということだ…」


「まだ少し不安な要素が多いな。あなたたちはこの世界にどのくらいとどまっておくことが出来そうなんだ?」


「もう残されている時間も少ないかもしれない…」


「そうか、だったらすぐに魔法具を作るよ。ここの空間と、あなたたちが決める空間を接続するようにしよう。こちらに来ることは出来るけど戻ることが難しいと思うからな。設置にはそちらの情報を水晶に刻み込ませることで可能にする。今の転移で使った魔力を考えたら一発勝負になりそうだ」


「可能なのか…?」

「正直分からない。でもイレーナやミィズにロンドゥナが、また危険を冒すのをオレは黙ってみていることが出来ない。ただそれだけのために全力を尽くすよ」


「わかった」

「少し集中させてくれ──」


 ──。


いつもありがとうございます。


今日も何話か投稿します!

よろしくお願いします!

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