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第四十七話 御使いⅡ

 炎の魔法や水生成の魔法に比べると、鑑定の魔法を水晶に刻み込むのは大変だった。だが、異空間収納よりも簡単だと感じた。

 疲労感こそ感じるものの、それ以外は問題なさそうに鑑定の水晶ができあがる。


「一度試してみるね」

「はい、どうぞ」


 今度はちゃんとイレーナに許可を取ってから、水晶に魔力を注いでいく。


「うん。問題ないね、ちゃんと作れたみたい」


 これで五つ目の魔法具を作ることに成功した。

 今出来上がったばかりの水晶をイレーナに渡す。


「勝手に見ちゃったから、オレのことはイレーナが調べて?」

「わかりました。では失礼します…」


 イレーナはそう言うと水晶を両手で包み、オレへ視線を向ける。

 なんだか変な感じだなと思いつつも、イレーナの真剣な表情と少し緊張しているのか、綺麗なケモミミをこちらに向けているのがいつもと違っていて新鮮な感じだ。


「…どう?」


 少し時間が経ってもイレーナが何も言わないので、思わずイレーナに聞いてしまう。


「はい…。ちゃんと鑑定することが出来ました…」

「どうだった?御使い様や勇者だと分かったか?」


「所々分からない単語や知らない言葉がありますが、『神から転移を与えられる者』というのは御使い様なのでしょうか…?」

「なるほど…。我々の知識をもってしても聞いたことのない言葉じゃな。だが、信希が御使い様や勇者と同じ環境にあるのは間違いないようだな」


「やっぱりそうなんですか…」

「え、なになに?オレは御使い様や勇者認定されちゃってる?」


 ロンドゥナとイレーナの会話を聞く限りでは、オレが御使い様や勇者だということになってしまう。


「うむ、私は信希が御使い様であると確信している。こうなれば、呼び方も改める必要がある。これまでは失礼いたしました。信希様、何卒お許しをいただきたく」

「いや、ロンドゥナ待ってくれ!もし仮にオレが御使い様とやらでも、今まで通りに接してくれよ。なんか急に距離が出来るみたいで悲しいよ」


「…そう言ってくれると助かる。ありがとう」


 申し訳なさそうな表情でオレを見つめていたロンドゥナは、オレの言葉を信じてくれたのか、これまでに見たことのない笑顔で感謝を伝えてきた。

 彼女の整った顔立ちで、とても可愛らしい笑顔を不意に向けられてしまいオレはドキリとしてしまう。


「そ、それで…これからはどうなるの?御使い様だと何かしないといけないとか…?」

「それは私にも分からない…。そもそも言い伝えでは、御使い様にはそれぞれの役目が与えられているものだ。私も御使い様に会うのは初めてだが、信希のような境遇の話は聞いたことがないな…」


「なるほど…。他に御使い様だと何かあるの?特別なことがあったり?」

「…そう言われると何もないのかもしれない…。我々は、御使い様の役目のために力をお貸しすることを目的としている種族でもあるからな。信希に役目が与えられてない以上、これまで通りに生活していて良いのではないか」


「そうか…」


 みんなの言っている御使い様をすんなりと受け入れてしまってはいるが、そもそも御使い様ってなんだよ…。神からの役目とか言ってたけど…。そんなの困らないか?だってケモミミ様と一緒に居る時間が減っちゃうじゃないか。もしもそんなことになったなら、オレにとっては拷問にも等しい仕打ちだ…。ケモミミ様と一緒に居たい。

 もしもロンドゥナの言う通りに神からの役目が与えられるのだったら、オレはこの世界に来てそこまで時間が経過していないからまだ神に会っていない可能性があるんだろうか…?


「なぁ、ロンドゥナ。オレがこの世界に来てから、まだ一カ月もたっていないんだ。もしかしてこれから神に会う可能性があるなんてことがあったり?」

「十分に考えられる…。そして私の本題はこれからだ─」


 彼女の言葉にオレはドキリとしてしまう。

 オレが御使い様であることを、彼女が予め知っていたかのような感覚を覚えたからだ。


「信希にはこの世界の神に会ってもらいたい」


「…は?」


 ロンドゥナから出た言葉に思わず呆然としてしまう。


「だから、信希には神に会ってもらいたい」

「ど、どうやって…?」


「少し説明は難しいが、私とイレーナとミィズの持っている力を使えば、神を顕現させることが出来る」

「へ…?」


 なんだかスゴイ事になってきた。

 力?神の顕現?なんだそりゃ。それにイレーナ、ミィズ、ロンドゥナは特別な存在だったりするのか?そもそもどうしてオレが神に会うことになるんだ…。


「会わなきゃダメ?」

「ぜひ会ってもらいたい」


「どうしても?」

「信希の望みをなんでも叶えるくらいにはお願いしたい」


「断ったら?」

「こ、困る…。私の存在意義が否定されてしまう…」


「…嫌なんだけど…」

「ダメだろうか…?」


 オレの言葉でどんどんと悲しい表情を浮かべていくロンドゥナを見ていると、とても断れる状況じゃないようになってしまう。

 くっ…どうすれば…。


「みんなはどう思う…?」

「ワタシは…ロンドゥナさんの意見に賛成です…」


 イレーナも神に会うことを勧めている。


「ボクは信希のしたいようにするのがいいと思う!」

「レストも信希と一緒に居れれば何でもいいのぉ」

「わたしは信希のことが心配です…」


 シアン、レスト、ポミナはオレの考えを優先させてくれるような感じだ。


「まぁ…しょうがないかの…。ロンドゥナのいう御使い様が本当だった場合、この世界の常識では大きな災害や事件が起きることの予兆とされているからな」


 ミィズはこれまでに見せたことのない、どこか不安そうで困っているような、そんな表情を浮かべながら優しく伝えてくる。


「余は何があっても信希さまのお傍にいるのじゃ。安心して選ぶのがよいのじゃ」


 ユリアは本当に気が利く。

 こういった特殊であろう状況でも、オレのことを気遣ってくれているのが分かる。


「この世界の知識で言えば、神様の降臨はとても特殊なことですの。おいそれとできることではありませんし、信希様が御使い様の可能性が濃厚であるのなら一度会っておくのが良いかと考えますの」


 メキオンは自分のためというよりも、世界のためを意識しているのだろうか。色々なことを天秤にかけて考えているような回答だった。


「みんな、ありがとう」


 でも、どうしたもんか…。

 オレ自身は正直断りたいと思っている。

 でも気になることが浮かんでくる。先ほどのミィズの言葉だ『災害や事件』と言っていた。もしもそれが本当で、この世界が壊れたり多くの死者が出てしまった場合には、オレの大切な『ケモミミ様』が被害に遭ってしまうじゃないか…?


 今ここで間違った選択をしてしまったのならケモミミ様が…。


 そう思ったときには返事をしていた─


「分かった会おう。だが勘違いしないでくれ、オレの力は全てケモミミ様のために使われる。さっきのミィズの言葉で、もしも『ケモミミ様に被害』があったらオレが後悔するから、こっちを選択しただけだ」


「ああ。もちろんだとも。私にもこの先どうなるかは全く分からないんだ。信希がよければ何も問題ない」


 そうしてオレは神に会うことを選択した。


 ──。






いつも読んでくれてありがとうございます!


私情と言っていたことも少し解消できて、まだ万全ではありませんが執筆は出来ているのでそのまま更新していけそうです!


それもこれも、皆さんが読んでくれるおかげです。

本当にありがとうございます。

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