魔導基礎:後編
今日はペドラ母さんに頼んだ事が広場の貸切が行われた、ペドラ母さんがよほど警戒しているのか、周囲にこれでもかと警備を配備している
全員、俺達が城内散歩に出かける時に見たことある顔だ
恐らく俺が魔法を使うという事を隠す為だろうな
ペドラ母さんが俺の前に立って「レギオン・・・いい?思う存分やってみたい事を試して・・・それが貴方のやりたい事なら・・・」
あぁ、思う存分やらせてもらいますよ
今回の為に事前勉強したのは火球を形成する魔法・・・それと衝撃波を発生させる魔法
どれも自衛目的で使われる相手を殺さない程度の技だ
術式を書き上げる為には魔力を宿した指で空中に文字を書き、基本呪文と追加という形で派生を色々と組み上げるらしい
俺は素早く指を動かして術式の基本呪文を書き上げ
「ファイアブラスト!!」
ドガァァァァァン!!
大規模な爆発
兵士達が全員駆けつけてくる「だ、大丈夫ですか!?」
ペドラがゲホッゲホッと咳き込み「えぇ、なんとか・・・それよりレギオンは!?」
お、おぉ・・・
俺は言葉を失った・・・砂煙が風で消えて行くと姿を現したのは・・・直径5mほどのクレーター・・・まるで隕石でも落ちたのではないかと思う程の威力
これって・・・自衛魔法だよね?過剰防衛じゃない!?
ペドラが驚愕して「これが・・・魔王の息子・・・」
カツンカツン、と杖の音が聞こえてくる
「ふむ、流石はジェリクの息子というべきかのぅ・・・」
ペドラが振り向いて「シュベルトさん!」
鱗が所々色あせていて、東洋竜のような長い髭を生やし
角も普通の竜人に比べて大きい
いかにも長老のドラゴンという竜人が現れた
「レギオン王子、今、君はこの魔法がとんでも無く小さな威力の物じゃと思ったじゃろう?」
確かにその通りだ
俺はコクコクと頷くと、シュベルトと言われた長老が解説する
「レギオン王子、貴方様の体に流れる血・・・すなわち魔王様の血、それが流れておる、ワシらのうな一般竜人と違って強大でワシらが足元にも及ばん膨大な魔力じゃ・・・じゃから些細な魔法であってもレギオン王子の中に流れる魔力は少しでも発動してしまえば、魔力制御が追いつかず超火力になってしまうのじゃ」
なるほど・・・俺は魔王の息子・・・だから普通の魔法でさえ街さえ滅ぼしかねない強力な魔力を有しているのか・・・
色々と納得した
シュベルトはクレーターの様子を見て「ふむ・・・レギオン王子、杖を使わずして魔法を使う事は誰しもができる事では無い・・・ワシさえ杖が無ければ魔法は上手く使えん」
シュベルトは杖を掲げ「アースクエイク!!」
俺が大穴開けてしまったクレーターが修復されていく
「おぉ・・・」
シュベルトは俺の顔を見て「レギオン王子・・・まずは放出する魔力を抑える特訓をワシとしよう」
ペドラが慌てて「待ってください!!レギオンはちょっと試しに魔法を使っただけで・・・」
シュベルトはペドラを止めて「ペドラよ・・・強大過ぎる力を得ているレギオンはもう既にヘルマンドを滅ぼしかねない大きな存在じゃ、そうなってしまった以上それを制御し、コントロールする事が何より大事じゃ」
ペドラも下を向いて「それは・・・分かっていますが・・・」
シュベルトは俺を見て笑顔で「レギオン、まずはこの腕輪を装着するといい」
渡されたのは銀のブレスレット、良く見ると刻印が施されている
シュベルトが解説してくれる「それは、魔力を制御する特殊な腕輪じゃ、ジェリクがイライラしとる時とかは周囲に強力な魔力をばら撒く時があるんじゃが・・・それと同格の物じゃ、つけて試してごらん」
腕にはめて、指先に魔力を放つと、兵士達が逃げ始める
さっきと同じ術式を書き上げ
「ファイヤブレイブ!!」
小さな火球が放たれて地面に普通に弾着した、大きな爆発も起きず、ただ火がメラメラと燃えるだけ
兵士達が安堵の息を吐いている
シュベルトは笑って「それさえつけていれば、さっきみたいな大参事は防げるじゃろう!己の魔導を探求すると良い」
シュベルトは背を向けてカツンカツンと杖を突いて歩いて去って行く
「あ、あの、ありがとうございました!!」
ペドラがやれやれと呆れて「レギオン、いい?その腕輪は今後絶対はずしちゃ駄目よ」
「は、はい、ペドラ母さん・・・」
いやいや俺自身も怖いから外さないから大丈夫です
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これからは思ったように魔力を発し、書けるようになってきた、頭で想像した通りに魔法が上手く出せて
この銀のブレスレットのおかげだ
しかし使えるようになると案外あっけない物だ
あれだけ必死になって集中していた魔法が教科書に載っている火属性と風属性の魔法は大体習得してしまった
術式で書き加える文字さえ把握してしまえば大した事ない、早く色々と応用できるようになりたいな・・・
あのシュベルトって言っていた老人・・・あの人にもっといろいろ教えてもらえればな・・・