敵が現れた
自動探査人形な兎が戻ってきたのでその兎を捕まえて、右耳を軽く引っ張る。
すると兎の目がきらりと光って、光が放たれ空間に映像が浮かび上がる。
現れたのは小さな部屋だった。
何もない空間に一つ、小さなテーブルのような台があって、そこに水色の本が掲げられている。
このいかにも怪しげな場所を見ながら私は、どうしようかと迷う。
ここまで何も罠のようなものはなさそうだ。
だがそれはこの兎の玩具だったからかもしれない。
私達人間がそこに向かったら……というのも考えられるけれど、
「とりあえずは、見に行ってみるしか無いか。それでミル」
「何でしょうか」
「ここの本を取りに行くのに、罠はあったりする?」
「さあ、そのあたりは詳しくは知らないですし」
「あの辺りでなにかやっているのは知らないの?」
「いや、だから私は“剣の精霊”でそこまでは詳しく知らないのです」
「ここに元々いた人なら、知っているかもしれない?」
「そうですね~……はっ!」
そこでミルは気づいたようだった。
食事中に移動するのはあまりお行儀がよくないし、本を見るのもよろしくないだろう。
けれど出来る限り時間はあまりかけたくない。
なのでトコトコと歩いて行き、本棚からある本を取ってくる。
ミルがああああ、と呻いているが気にしてはダメだ。
そして私が取り出したのはここの管理人の日記帳である。
読んでいないページに“点と点を繋ぐ、線となる”、という水色の本が存在している可能性があるから。
なのでぺーじをめくっていくと、
「“現地の人間の練習用、もしくは試練用にこの本を設置することに。
えっと、この地域の言語の音に調整して……こちらの文字の意味を理解できる人が来ないとダメだなぁ~。
でもここの人達以外に俺達の言語くわしいからな。
音も分かるだろう。
どうせ、サブクエストというか余分というかついでな戦いだから、まあ、来ても来なくてもいいし。
罠も何もないし。
だったらなくてもいいじゃないか。余計な手間をかけさせるなよ……”
うわ、愚痴だらけ」
「……あの人、結構愚痴っぽい人でしたから」
どうやら以前の管理人さんは、そういう感じではあったらしい。
さて、それを読み上げたので大体の事情は他の人と共有したと思われる。
だから、とりあえずはサンドイッチに一口かぶりついて咀嚼してから、
「よし、これをためてから早速見に行きましょう。兎ちゃんで調べてくる意味があまりなかったわね。でも罠がなさそうなのは確認できたから、意味はあるか。相手の言うことをそのまま鵜呑みにしても、危険だしね」
私はそう呟いて、別のサンドイッチに手を伸ばしたのだった。
昼食を食べた私達は、先ほどの場所に向かう。
「よし、まずは私から……」
「俺が先に行く。フィーネは後からにしろ」
「えー、大丈夫よ」
「……何やらかすか心配なんだ」
切実そうに私は言われて、カイが普段私に対してどう思っているのかは分かった。
許せんと思いつつも、カイはさっさと中にはいってしまう。と、
「うん、階段になっているみたいだ。あ、周りが明るくなったな。明かりは必要なさそうだ」
「そうなの? ……本当だ。でも突然明かりが消えるのも怖いから、“魔導式ランプ”を一つ持って入るわね。というか皆でぞろぞろ行かなくてもいいか。本を取ってくるだけだし。シオリとミトはここで待っている?」
私の問いかけにシオリがどうしようかと戸惑っているようだった。
「えっと私は……」
「ぜひ、ここに留まろう、うん」
ミトがそちらをご所望なので、そうなった。
何だかなと私が思いつつも、とりあえずは私とカイで進むことに。
壁の下側から入りこんだその通路は、人が二人歩けるかどうかの通路であったが、とても明るい。
天井や地面が薄く光っていて段差も全部見える。
だがそれらはのっぺりとした、飾りげのない壁が続いている。
特に魔物は出てこないようだ。
「罠はないみたいだね」
「そうみたいだ。でも油断するな、フィーネ」
「分かっているわよ」
そう言いながら私はムッとする。
そんな風に子供扱いしなくたっていいのに。
そう思いつつも進んでいくとやがて広い場所に出る。
と言っても小部屋程度のものだ。
先ほど兎で見てきてもらった場所だ。
小さなテーブルに、水色の本が置かれている。
「これを持って帰ればいいのね。とりあえず周りを散策と」
私はそのテーブルや園周辺を見てみるが、特に異常はなさそうだった。
なので水色の本を持ち上げる。
けれど特に何も起こらなかった。
「本当に唯これを置いておいただけみたいね。戻りましょう、カイ」
「そだな。本当に何もなくてよかった」
そう、カイが笑う。
私も同じ気持だった。
そしてその水色の本を持って私たちは戻ると、何故かシオリとミトが、透明な太いガラスを編みこんだような檻にとらわれていた。
シオリは涙目になっていて、ミトは余裕そうに手を振っている。
この程度自分でなんとかしろと私がミトに言いたかった。そして、
「探しものを見つけてくれてありがとう。そこにいる仲間を殺されたくなければ、本をよこすのだな」
そこにいたのは、リドルと名乗った彼らと同じような服装の人物だった。




