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最終話 永遠に恋してる

 聖君が、ステージに立った。Yシャツのボタンを2個くらい外し、軽く襟を立てている。演出なのか、ネクタイを外した時に立っちゃったのか、そのへんはわからないけど、その無造作加減のYシャツがかっこいい。


 そして、マイクスタンドのマイクを軽く手で押さえ、うつむいた。

 は~~~~~~~~~~。それだけで、めちゃくちゃ絵になる。ライブハウスにいる女性たちが、一斉に聖君を見て、もうすでに熱い視線を投げかけている。


 私もだ。一気に胸のドキドキが増す。


 ギターの音。ドラムの音。そして、聖君は視線を前に向けて歌いだした。

「きゃ~~~」

 もう、声にならない声が会場から聞こえてきた。でも、誰がそんな声を上げたのかなんて、どうでもいい。私の目にはもう、聖君しか映らない。


 聖君って、絶対に謎。女性が苦手だとか言いながら、ステージからは平気で女性に熱い視線を投げたり、見つめたり出来ちゃうんだもん。

 ああ、今、誰を見てるの?誰?誰?


 と、聖君にドキドキしながらも、やきもきした気持ちで見ていると、ふっと聖君の視線がこっちに飛んできて、目がばちっと合った。


 ドキ!!!

 なんか、すんご~~く熱い視線で見つめられた…。っていうか、まだ見てる。そのうえ、間奏の部分で私にウィンクまでしてきた。


 うわ。やられた~~~。クラ~~~~~ッ!!

「きゃ~~~!」

 え?周りから黄色い声が。でも、今のウィンクは、私に向かってしたものなの。


 でも、気になって周りを見ると、目がハートになっている女性が何人も。

 あれ?私にじゃなかった?あ、あれ?


 間奏が終わり、また聖君は歌いだした。

 ドキドキ。ドキドキ。ドキドキ。

 こっちを見てくれないかな。って、なんかこれって、あれだよね?好きなアイドルがステージで歌ってて、こっちを見てくれないかしら!なんて、そんなことを思っているファンみたいだよね?


 聖君は真正面から、徐々に視線をこっちに向けてきた。そしてまた、私と目が合った。

 私だよね?私を見てくれてるんだよね?!


 そんなことを思いつつ、私はしっかりと両手を胸の前に組んで、うっとりと聖君を見ていた。きっと、目はハート。すると聖君は、くすっと目を細めて笑い、軽く私に手を振った。

 きゃ~~~~~!!心の中の雄叫び。声にはさすがにできない。


 と思っていると、また周りで、

「きゃ~~~~!」

 違う。違うの。今のも、私に…。


「桃子ちゃんが羨ましい~~~!」

 え?

「こっちにも手を振って、聖君!」

 あれ?


 すると、聖君はその歓声を聞いて、またかすかに笑ってから、クルッと後ろを向いて、籐也君のそばにマイクスタンドを持ったまま行ってしまい、籐也君にもマイクを向けて、二人で歌いだした。


「あ~~~、こっちには手、振ってくれないんだ」

「ウィンクもして欲しかったよ~~」

 そう言っていたのは、なんと、果歩ちゃんや椿ちゃんだ。わあ、びっくりした。


 それに、真ん中のほうでは、絵梨さんがしきりに聖君の名前を呼んでいるし。なんだか、聖君がウイステリアのバンドのメンバーで、聖君率いるウイステリアのライブにでも来ているような気になってきちゃった。

 だけど、それだけかっこいいんだよね。魅了されちゃうんだよね。


 聖君は籐也君から離れ、また真正面を向いた。そして色っぽい眼差しで客席のほうに視線を投げる。

「きゃ~~~~」

 黄色い歓声。歓声をあげていない女の子は、ただ目をハートにしてみている。中には、

「聖~~~」

という男性の野太い声まであって、その声にはさすがの私もびっくりしたが、聖君はびくともしない。


 そして、曲の最後、また視線を正面からこっちに聖君は向けると、私のことを見て、色っぽい目でウィンクをする。

 うわ。やられた。


 悩殺だ。そんな色っぽい目でウィンクなんてしないで。ちょっとYシャツからは、聖君の色っぽい鎖骨まで見えちゃってるし、時々髪をかき上げる仕草も、額の汗まで、全部が色っぽいんだから、それだけでもまいっているんだから。


「かっこい~~~」

 そんな声が、また周りから聞こえてきた。

 そして、曲が終わると、

「ありがとうございました」

と聖君はぺこりとお辞儀をして、ステージを降りようとした。


「聖!もう1曲!」

「アンコール!」

 そんな声がライブハウスにこだました。

「聖さん、あの曲、やっぱりやりましょう!」

 籐也君が聖君の背中に向かってそう叫んだ。


 あの曲?

 聖君は、1曲だけならって言って、歌うのを引き受けたんだよね。練習に行った時にも、この曲だけを歌っていたよ?


「え。まじで?籐也」

 聖君が振り返って、籐也君を見た。

「もう1曲歌って~~」

 また、そんな声が響いた。


 聖君はステージの中央に戻り、籐也君とこそこそと話をしている。それから、ちらっと私の方を見た。

 な、何かな?

 聖君は頭をぼりぼりって掻くと、

「じゃ、もう1曲」

と、マイクでそう言って、またステージの前に戻ってきた。


「きゃ~~~~」

 すでに黄色い歓声があがった。

 今日って、私の結婚式の2次会をしているんだよね。聖君のライブじゃないよね。

 いや、いいの。聖君の歌う姿、私が見たかったんだもん。

 でも、今日の聖君を見て、またたくさんの女性が聖君に夢中になったりしないよね?この私みたいに。


「えっと、じゃあ、本当は歌う予定なかったんだけど」

 聖君がそう話し出すと、ライブハウスが静まり返った。

「籐也に、この歌も歌ったらって言われて、ノリで練習中に歌ったことが一回だけ。でも、まじで歌う気なかったから、上手く歌えるかもわかんないんだけど…」


 聖君はそう言うと、頭をまたぼりって掻いて、しばらくマイクに手を置いたまま、下を向いて黙ってしまった。

「…なんだか、小っ恥ずかしい」

 そうつぶやくと、聖君はまた顔を上げた。

 そして、私を見た。でも、またすぐに視線を前に向けた。


「え、えっと。ウイステリアって、ほとんどロック調でノリノリの曲ばかりなんだけど、数少ないバラードってのがあって」

「数少なくて悪かったですね」

 籐也君がツッコミを入れた。


「なんだよ。お前だって、こういう歌が苦手なんだろ?だから、少ないんだろ?でも、歌詞書いてるのお前だろ?それも、一人の子のこと思って書いてるんだろ?」

「聖さん!ばらさないでください、こんなところで!!!」


 聖君にそう言われ、ステージ上にいてもわかるくらい、籐也君の顔が赤くなった。

 私は、はっと気がつき、隣を見た。隣の花ちゃんも真っ赤になっていた。

 きゃ~~~。籐也君ってば、花ちゃんのことを思いながら書いてるんだ。人ごとながら、ドキドキしちゃう。


「え~~~。嫌だ~~。籐也、彼女いるの?」

 そう言ったのは、もちろん、花ちゃんの存在を知らない人。ああ、やっぱり、絵梨さんだ。絵梨さん、聖君が好きなんだよねえ?籐也君は関係ないじゃない。


 でも、他にも、

「うそ。彼女いるんだ~」

と言いながら、隣の子と話をしている人がいた。カッキーさんと東海林さんだ。


「いいじゃん。だって、ここって花ちゃんの友達ばっかりだよ?お前とのことなんか、みんな知ってるって」

 うわ!聖君が思い切りばらした。知らない人もいるってば!

「ひ、聖さん!」

「いいじゃん。ね?桃子ちゃん」


 私に振られても。ああ、隣でもっと花ちゃんが真っ赤になった。

「花ちゃんってどの子?」

 絵梨さんの声が聞こえた。でも、もっとでかい声で、

「花ちゃん、籐也君と付き合ってるの~~~!?」

と叫んだのは、ヒガちゃんだった。

 え?知らなかったの?


「ヒュ~~~~。花、ラブラブ~~!」

 蘭がそう言って花ちゃんをからかった。ああ、蘭ってば。人のこととなるとああやって、平気でからかえるんだよねえ。


「聖さん!聖さんの結婚式の2次会ですよね?メインは聖さんと桃子ちゃんでしょ?」

 籐也君が真っ赤な顔でそう言った。

「そうだった。ごめん。で、その数少ないバラードの1曲が、俺の結構気に入ってるナンバーで…。それを、まじで恥ずかしいから歌う気なかったんだけど」


 聖君はまたそう言って黙った。それから私を見て、

「き、聞きたい?」

と私に聞いてきた。

 え?私?よくわかんないけど、まだまだ、聖君が歌っているのは聞きたい。私は思い切りうなづいた。

「あ、そう…」

 聖君は照れ隠しなのか、半分頭を下げながらそう答えた。


「聖さん。ぜひ、桃子ちゃんのことを思いながら、心こめて歌ってください」

 籐也君がそう言った。聖君はクルッと籐也君の方を向いて、

「そういうことを言うな。ますます恥ずかしくなるだろ」

と怒った。


 でもすぐに、

「ああ、そうだな。お前が花ちゃんのためを思って書いた曲だけど、今日は桃子ちゃんのためにお前も演奏してくれよな」

と、開き直ったのかそう言った。すると、籐也君のほうが真っ赤になってしまった。ああ、聖君ったら、意地悪だ。


 花ちゃんまでがまた、赤くなっている。って、待って。私のために歌うとか、私のことを思ってとか、言ってなかった?今…。

 え、どういうこと?聖君がまさか、私のために歌ってくれるってこと?


 ば、バラードを?うそ。

 きゃあ~~~~~~~~~~~~~~! 

 やっと事態を飲み込めた私は、ドキドキのあまり、息をすることも一瞬忘れたくらいで…。


 静かに演奏が始まった。そして聖君はマイクを持つと、静かに歌いだした。

 はあ。上手く歌えるかわからないだなんて、めちゃくちゃ上手。綺麗な透る聖君の声は、バラードを歌うともっと、透き通って聞こえる。


 目をハートにして見つめていた。でも、何気に歌詞を聞き入っていると、なんだかすごい歌詞だっていうことがわかってきた。

 こんな歌詞を花ちゃんのために、籐也君は書いたんだ。うわ~~。すごい。


 なんて初めは人ごとに思っていた。でも、それを聖君は今、私のために歌っているんだと思ったら、じわ~~~と目頭が熱くなってきた。


 歌詞は…、君がいたら、きっとずっと俺は歩いていける。君の隣なら、きっとずっと勇気を持って歩いていける。そんな歌詞。

 そして、最後のサビの部分は、

「永遠に愛を誓うよ。この想いは永遠に続くから。ずっと君を愛していくよ」

という、すごい歌詞で…。


 ボロ。ダメだ。聖君がそんなことを歌って、そして私を見つめて、私はあまりの感動に涙が溢れて止まらなくなった。

 聖君がそんな私を見て、目を細めた。いつもの、愛しいっていうそんな眼差しだ。


 歌が終わると、静まり返っていたライブハウスが一気に拍手と歓声で湧き上がり、みんな興奮冷めやらぬって感じで、しばらくその歓声も拍手もおさまらなかった。


「あ、ありがとうございました」

 聖君は照れながらそう言ってお辞儀をすると、

「あ~~~~~。照れる~~~」

と、真っ赤になりながら、ステージを降りて私の方に向かってきた。


 その間も、

「聖君、かっこよかった」

「聖、よかったぞ!」

「聖君、素敵~~~」


 そんな声がいっぱい聞こえていた。

 聖君はその声に、ぺこっとお辞儀をしたり、照れたりしながらも、私の隣に座った。


「お幸せに~~~!」

 そんな声がしたかと思うと、次々に、

「お幸せに!」

「桃子ちゃん、おめでとう!」

「聖、おめでとう」

という声がした。


「サンキュ~!」

 聖君が立ち上がってそう言うと、いきなり私の手をとって私も椅子から立たせて、

「まじ!俺、今最高に幸せっす!桃子ちゃんのことも、凪のことも、すげ~~~大事で、結婚して良かったって、まじ!思ってる!」

と叫んだ。


「お~~~!」

 男の野太い歓声が聞こえた。基樹君や、桐太が歓声をあげたようだった。

「ぜ~~~ったいに、ず~~っと幸せでいるし、家族を大事にしていくから!今日みんなに祝ってもらったことも、一生忘れないから!」

 聖君はそう言って、思い切り嬉しそうな笑顔を見せた。


 そして私を見ると、

「桃子ちゃん、俺と結婚してくれてありがとうね!」

と可愛い笑顔でそう言った。


 う、うわ~~~~~~~ん。

 泣いてしまった。思い切り聖君に抱きついて。


「きゃ~~~!桃子、おめでとう~~~!」

「兄貴、おめでとう~~~~!」

 蘭と菜摘の雄叫びが聞こえた。他にもいっぱい、みんなの、

「おめでとう~~~~」

という声が聞こえた。


 ライブハウスはしばらく、また拍手と歓声が鳴り止まなかった。

 

 二人で手をつないだまま、椅子に腰掛け、ウイステリアのライブをまた楽しんだ。そのあと、基樹君と蘭が司会をして、ゲームが始まった。


 みんな思い切り、楽しんでいる。聖君もノリノリで楽しんでいる。

 

 そうして、最後にはまた、聖君と私がステージに立ち、みんなにお礼を言って、2次会は終わった。


 聖君はまた上着を羽織ると、私の手をとって、

「みんなを見送ろう」

と可愛い笑顔でそう言った。


「うん」

 2次会の司会も進行してくれた蘭と基樹君が、小さなブーケとお菓子を手にライブハウスの出口に立っていたが、私と聖君もそこに行って、来てくれた人、ひとりひとりに、挨拶をした。


「今日はありがとう」

 聖君は最上級の笑顔で、みんなにブーケを渡した。その横で私はお菓子を渡す。

 でも、女性のみんなは、ほとんど聖君を見てうっとりとしていて、なかなか私の前には来ない。


「聖君、かっこよかったよ」

「聖君、また歌って~~。ライブで歌ってよ」

 そんなことを言っている。


「ごめん。今夜が最後のショーでした」

 聖君はそんなお茶目なことを言って、にっこりと微笑んだりしている。ああ、その笑顔が、罪なんだってば。ほら、また聖君の前にいる子が、顔を真っ赤にさせている。


 でもね、聖君は、私の旦那様なんだからね。と心の中でやきもきしていると、私の前に来てから、みんな、

「桃子ちゃん、幸せものだよね。こんなかっこいい人が旦那さんだもの。それも、思い切り大事に思われてて。本当におめでとうね」

と言ってくれる。


「は、はい。ありがとうございます」

 私はじわっと感動しながら、お菓子を渡した。


「桃ちゃん、おめでとう」

 目を真っ赤にさせて、花ちゃんがそう言ってくれた。

「花ちゃんも、籐也君に大事に思われてるんだね」

 つい、そんなことを言うと、花ちゃんは真っ赤になった。それに、花ちゃんの隣にはしっかりと籐也君がいるし。


「次はお前の番?籐也」

「え?ま、まだですってば」

「そうなの?」

「……まあ、いつかは、花と結婚するとは思うけど。そんときは、聖さん、また歌ってくださいね」

「やだよ、お前が花ちゃんのために歌ったらいいじゃん」

 聖君はそう言って笑った。花ちゃんはそれを聞いていて、耳まで真っ赤になっていた。


「聖~~、おめでとう~~」

 桐太が来て、突然聖君に抱きついた。その横から麦さんが来て、

「おめでとう、桃子ちゃん」

と私に抱きついた。


「桐太もそろそろなんじゃないの?」

 聖君が、ひやかしのつもりでそう言った。でも、

「うん。麦が大学卒業したら結婚するよ。結婚式には呼ぶからさ」

と、真面目な顔をして桐太は答えた。


「え?決まったの?」

「うん。麦の親にも会ったし」

「そうなんだ。よかったな、桐太」

「麦さん、おめでとうございます」

 私も嬉しくなってそう言うと、麦さんは真っ赤になって、

「ま、まだ先のことだから。でも、式には来てね?」

とそう恥ずかしそうに言った。


 最後に、菜摘と葉君が来た。

「おめでとう、兄貴」

「サンキュ。菜摘。いろいろとお前にも、心配かけたよね」

 聖君がそう言うと、菜摘は聖君に抱きついてから、

「桃子を絶対に泣かせないでね」

と念を押した。


「わかってるって」

 聖君はそう言って、菜摘の背中をぽんぽんと優しく叩いた。

 菜摘は私にも抱きついて、

「おめでとう~~~。私もすっごく嬉しいよ」

と、半分泣きながらそう言った。私もまた、涙が出てきてしまった。


「葉一と菜摘の結婚の予定は?」

 聖君は葉君にそう聞いた。

「そろそろ、かな?」

 葉君がそう答えた。


「え?まじで?」

「お父さんにはもう、了解得てるしね。あとは菜摘のお母さんの了解を得たらかな?」

「あはは。苦労しそうだね。そりゃ」

 聖君が笑うと、葉君は苦笑いをした。


「聖君、桃子、おめでとう」

 蘭がそう言って私たちの前に立った。その横には基樹君も立った。

「今日は蘭ちゃんも基樹もありがとうな」

 聖君はそう言って、二人にぺこっとお辞儀をした。私も慌てて一緒にお辞儀をした。


「聖、お前のこと本当に俺は、すごいって思ってるよ」

「え?なんで?」

「なんでって、そりゃもう、完璧だからさ」

「俺が?」


「で、お前らのことを見てて、俺も頑張らにゃあいかんと思ってね」

「……何を?」

 聖君が何か含んだ聞き方をした。


「将来のこと。しっかりと考えて蘭とのことも真面目に考える」

「…基樹」

 それを横で聞いていた蘭が、目を丸くした。


「蘭には会った頃から俺、まいってるし。もう絶対に離したくないって思ってるし」

「…も、基樹~~~。それは、私だって!もう基樹から離れたくないよ~~」

 うわ。蘭が泣き出した~~!

「お幸せにね?お二人さん」

 そんな二人に聖君がそう言った。


「うん。ありがとう…。って逆!立場が逆だってば」

 蘭がそう言うと、聖君は大笑いをした。そして私も、蘭も、基樹君も、菜摘と葉君までが笑った。


「いろいろとあったよね、海で会ってから」

 突然、遠い目をしながら蘭がそう言った。

「あったね~~~。私なんてさあ、血の繋がった兄貴を好きになったりして、もう、波乱万丈の人生?」

「あはは、何それ。でもそのおかげで今、葉一とラブラブなんじゃん。だから、いいじゃん?」

 聖君がそう笑いながら菜摘に言った。


「うん!最高の彼氏と最高の兄貴ができたから、私の人生、最高だよ?」

 菜摘はそう言うと、葉君と腕を組んだ。葉君が珍しく真っ赤になって照れた。


「いろいろとあったけど、私も、基樹のもとに戻って来れたし」

 蘭がそう言って、基樹君と腕を組んだ。基樹君は嬉しそうに蘭を見た。


「俺も!あの夏に桃子ちゃんと出会って、最高の人生になりました!」

 聖君は可愛い笑顔でそう言った。

「兄貴、デレデレ~~」

「く~~~!この幸せ者!」

 菜摘と蘭がそう言って、聖君をひやかした。


「デへ。そう。俺、めちゃ幸せものなの。ね?奥さん!」

 聖君は思い切りにやつきながら、私の腰に腕を回してそう言ってきた。

「う、うん。私も」

 私はドキドキしながらそう言った。


 ああ、聖君、あのね。今日またいっぱいいっぱい、めいっぱい、聖君に恋しちゃったの。今日だけで、何度聖君に惚れちゃったかわからない。

 だから、またしばらく私は、聖君を見てドキドキしちゃうと思う。


 ライブハウスを出て、みんなと別れた。そして花束やプレゼントを持って、聖君と帰り道を歩き出した。

「聖君」

「ん?」

 聖君が優しく微笑みながら私を見る。うわ。ドキドキだ。


「あのね。私、その…」

「何?」

 まだ、聖君は優しい目で私を見ている。

「ごめんなさい」


「……な、何が?」

 あ、いきなり聖君の顔が引きつった。

「今日とか、聖君に抱きしめられたら、心臓が持たないかも」

「……………は?」


「ドキドキがおさまらないの。今も!」

「…………へ?」

「紋付袴の聖君も、タキシード姿の聖君も、ステージでの聖君も、今の聖君にも、ずっとずっとずっとときめいてるの!」


「…………で?」

 聖君の顔、やっぱり、呆れ顔。

「だから、心臓が壊れちゃうかも」

「そう。うん、わかった」

 あれ?やけにあっさりと承諾しちゃった?


「でもね、桃子ちゃんって…」

「え?」

「俺がキスすると、ふにゃふにゃになって、それに色っぽくなっちゃって、すぐにその気になっちゃうから」

「え?え?」


「心臓持たないなんて言っておいて、桃子ちゃんの方が、積極的になっちゃうくせにさ。ほんと、よく言うよなあって、最近俺は思ってますよ」

「ええ?!」

「大丈夫。そんな積極的な桃子ちゃんも、愛してますから、俺」


「ちょ、ちょっと待って。私がいつそんな…」

「あ、自覚なし?そうか。わかった。じゃ、今日それを証明しようね?」

「ええ?!」

「今日の夜は、じっくりゆっくり」


「ひ、聖君」

「ん?」

「スケベおやじ!」

「はいはい。スケベですよ」


「ああ、もう~~~。今日、めちゃキリリとしてかっこよかったのに」

「はいはい」

「歌ってる時はセクシーで」

「はいはい」


「なのにやっぱり聖君は…」

「こんなスケベ親父の俺は嫌い?」

「……」

 聖君が顔を近づけて聞いてきた。うわわ。ドキドキドキ!


「え、えっと。やっぱり、大好き」

 そうつぶやくと、聖君はにやって笑って、

「デへ。そうでしょ?」

と思い切りにやついた。


 ああ、そうなの。どんな聖君にも夢中なの。困ったよね。

 だけど、ずっとずっときっと、私は聖君にときめいているんだよね。


 永遠に恋をしていると思うよ。


                ~永遠のラブストーリー 完結~


長い間、永遠のラブストーリーを応援していただき、ありがとうございました。

桃子と聖の恋の物語は、完結します。

本当に、ありがとうございました。

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