偉く遠くに来たものだ
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
私達3人は固まった。
ガウェイン殿下の眼差しは王を目指す者だった。
「大体ここまで後手に回っているのは兄上、貴方のせいだ。メイドや騎士を手配は誰がしているの?側近のいない貴方はどうしているのかな?考えた事なかったでしょ?とにかく今はまだ妄想対妄想の対決状態だから、実際どうなのか大至急調査する必要がある。兄上が作ったこの監視カメラと盗聴器、これを使って早速調べよう。城の設置じゃなく人に取りつける簡単な物を作ってくれない?」
マイペースに話を進めて行くガウェイン殿下。
どうやら城の害虫駆除は決定事項のようだ。
私はため息をソッとついて、ユリウス殿下とマーベルを見る。
とても悔しそうな、なんともやれ切れない思いでいっぱいだろう。
実際、打ちひしがれた陰鬱な顔をしている。
”ガウェイン殿下の所へ行かなければ、全てが手遅れになるところでしたわ。”
先回りしていると思っていた。
何処か安心して、私達は大丈夫だと思っていたのだ。
ところが実際はどうだ。
気付いてみれば、こんなにも蜘蛛の巣の様に罠を張り巡らさている。
気づいた頃には雁字搦めのエサになるところだったのだろう。
”ホントに嫌になりますわね。どうにかしないとなりませんわ”
イライラする心を表すように、淑女には行儀の悪いが爪をガジガジと噛む仕草をする。
それにユリウス殿下とマーベルもどうにかしないといけませんわ。
二人は未だ現実の世界の戻って来ない。
それはそうだろう。
自分達は上手くやっていると思っていた事が覆すような現実。
乳母に聞いたという話も嘘の可能性が高い。
「ガウェイン殿下、確かに取り付けが簡単なモノございましたわ。ユリウス殿下とマーベルに詳細を話して作って貰いますわね。他にもこんなものがあったらと思う物はございませんの?」
私はとりあえず話を先に進めて行く。
ココで立ち止まって、これ以上後れを取る訳にはいけないのだ。
そんな私を頼もし気に見つめて、ガウェイン殿下は言う。
「そうだね。それじゃあ撮った映像を全世界に流せる様なものが欲しいな。」
そう言ってうっそりと嗤う。
私もそれを聞いてなるほどと思ったので、ニンマリと人の悪い微笑みを浮かべた。
ボクワイの悪事の証拠となる映像を、何としても入手しなければならない。
そんな国ホントにいりませんもの。
ガウェイン殿下が言うように害悪でしかない。
いるだけで国、というか世界の屋台骨を食い荒らすだろう。
ボクワイを世界の敵と位置付けて徹底的に排除しなくては………
”というか、もう食い荒らしているなんて事ないわよね?”
なんとなく思いついた言葉が、どうしようもなく気にかかる。
私は今思いついた事をガウェイン殿下に聞いた。
するとガウェイン殿下は目を瞑り思考の波に漂い始める。
私はその間にユリウス殿下とマーベルを叩き起こすことにした。
「いい加減にして下さらないかしら。いつまで馬鹿面を曝しているおつもりなの!!」
私は睨みつけて二人の頬を思いっきり引っ張てやる。
「痛っ………!」
「イタタ~……?!」
二人は戸惑って私を睨むけど、痛くも痒くもないのですわ。
「ホントに役立たずですわ。何ですのその醜態は!いい加減にして下さらない?そんなんで敵をやっつける事出来ますの?文句はなしですわ。見苦しいもの!とにかく… 必要な魔道具がございますの。至急作ってくれますわよね?」
私は二人に発破をかけて動かす。
憮然とした面持ちで私の説明を聞く二人。
「それにユリウス殿下、乳母の言った話大至急書類に書いてくださいませ。噓なのか誘導なのか不安ですからね?わかりますわよね?」
ユリウス殿下は青ざめて頷いている。
精神的にツラいだろうが慰める時間などない。
前に進まなければなりませんの。
だって乳母が動いたのだ。
先行しているのに、バレると解って動いた。
そう考えるとバレてもいいと思ったんじゃない。
たぶん隣国ボクワイはそれだけ余裕がない。
時間がないのではないか。
”それとももう張り巡らした罠は完成したとでも言うのかしら?”
とにかく動かなければなりませんわ。
動かなければ殺られる。
地獄の八丁目が待っていますわ。
何としても回避しなくてはならない。
悍ましい国などめちゃくちゃして差し上げますわ。
******************
【 チヨちゃんの部屋 】
チヨちゃんはギルバートとボール投げをして遊んでいる。
転がるボールをあっちこっちと投げて、ピカピカ光るのを楽しんでいた。
「なぁ、あれもユリウス殿下が作ったのか?」
騎士団長のアーサーが聞いて来た。
「アレはマーベルの作品ね」
私は笑って答える。
あの子達二人は、私が話した異世界の道具を再現し作ることが趣味になってしまった。
今ではわが国有数の天才魔道具師だ。
”どうしてこうなってしまったのかしら?”
ホントにストーリーと違い過ぎる。
それに隣国ボクワイだってそうよ。
”ポンデリングめ…… 隣国の話なんでしないのよ。”
聞けば聞くほど危険な国。
なのにそんな話一切出てこない。
「そういやさ。俺もこの前リディアーヌ嬢の記憶の話聞いたんだけどさ………」
どこか言いづらそうな困った顔の騎士団長。
「何かしら?何か気になる事でもあったの?」
私は話の先を促す。
図大のデカいおっさんのチラ見は可愛くないのだ。
「ほら、リディアーヌ嬢が管を巻いて馬鹿にしたセリフだけどさ、申し訳ないが俺もそう思ったんだ。いやマジで国として終わってねぇか?」
ああ、あの酒飲みのセリフね。
「そうだから、私もその場で大爆笑したわ。さすがにユリウス殿下もマーベルも申し訳なさそうにしていたわね。」
あの時の二人は、ホントに身を縮こませてプルプルして可愛かったわ。
でもそうよね。国として終わった後の話なのだ。乙女ゲームは………
「はぁ~俺の息子もそんな国の状態で花畑とか……俺は俺で終わってるし、ため息しか出ないよな」
頭を振って何とも言えない様な顔で私を見る。
「それを言ったら私達の息子なんか逆ハーレムからの登場よ。」
こっちだって最悪なのだ。全くなんで逆ハー一択なのよ!!
「それならこっちだって、仲間入りしているからな!逆ハーレムに!!!」
これが世にいう目糞鼻糞な言い合い。
全くなんてことなのかしら!!
互いに深~~いいため息を吐いて
「なあ、ここホントに乙女ゲームの世界か?偉く殺伐としてねぇか??」
訝しげに聞かれたセリフに、私は苦味つぶした顔をした。
だってそれは私も思った事だから………
”おのれポンデリングめ………”
一体どこがキャハハウフフの世界だ?!嘘つきめ!!!
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結構時間が経ってしまいましたわね。
今だ浮上してこないガウェイン殿下。
そんな殿下をそのままに、側近たちは私にお茶やお菓子を出しすすめる。
「リディアーヌ嬢。今のうちに精神を癒しましょう。お腹も空いたでしょう。サンドウィッチなど軽食もすぐ出来ます。まだまだかかると思いますからね。」
ニッコリとほほ笑みでアイスのハーブティーを置いた。
私は一口飲んでホッとする。
「美味しいですわ。サンドウィッチこちらで作られるの?」
気になったので聞いてみると、笑って言われた。
「もう一人の側近が甘い物好きなのです。大人になると食べれないなら、作れば味見として食べれるし、自分好みも食べれる。一石二鳥だといってね。サンドウィッチはガウェイン殿下の要望で作る様になったんです。サンドウィッチも奥深いと楽しんでいます。何か好きなトッピングありますか?」
おお~それなら是非作って貰いたい。
材料は何があるのでしょう?
試しにいろいろ言ってみる。
「なるほど!フルーツに生クリームのサンドですね。美味しそうですね♪」
「ええ、後ホットサンドという物がございまして、サンドウィッチの表面を焼くのですが、触感が変わっ
て美味しいですわ。冬場なんか最高です♪」
「それはそうですね♪冬はどうしても温かい物に惹かれますから」
「そうですわ!ユリウス殿下たちにホットサンドメーカーを作って貰えばいいのですわ」
「それなら、入れるだけで焼いてくれるのですね!」
「そうですわ!私も欲しいですわ!!」
ああ考えると、どうしようもなく食べたくなるのですわ。
コトッとテーブルの上にフルーツサンドが置かれた。
話を聞いて作ってくれたようだ。中には一種類の果物が入っている。
いろんな果物のサンドウィッチ!
食べ比べが出来そうだ♪
「へぇーサンドウィッチのデザートだね」
ガウェイン殿下が側近の方と話している間に浮上したようだ。
「殿下もお一ついかがです?」
私はさっさとイチゴをとる。
私はイチゴのサンドが大好きなのだ。
ハア~久しぶりのイチゴサンド♪
ガウェイン殿下も笑ってブルーベリーのサンドを取った。
「殿下それは生クリーム代わりにクリームチーズにしたそうです」
おおそれも美味しそう。もうアレンジするとはやりよる♪
「その方将来お店を持ってもよさそうですわね」
私はそう言ってハムハムと食べた。
味もこれまた美味し。なかなかやりよる♪
「兄上たちもお腹空きませんか?軽食を用意しましたよ。」
ガウェイン殿下がユリウス殿下とマーベルに声をかけた。
反応がなく二人で紙に向き合っている。
「殿下ほっときましょ。お腹が空いたら来ますわ。無理やり離しても機嫌悪いか、味わず食べるかですもの。勿体ないですわ」
「まあ確かにそうかもしれないね」
ガウェイン殿下そう言ってサンドウィッチを食べる。
「リディアーヌ嬢。先程言っていたことだけど、もしかしたら可能性はあると思う」
私を見つめて言うガウェイン殿下。
頬にクリームがついている。
「殿下ついてますわ」
私は場所を指で示して教える。
「フフフ僕このサンドウィッチ気に入ったよ。」
「それはよかったですわ」
フフフと二人で笑い合う。
「さて、困ったことに先行していると思っていた事が、むしろ危険という事がわかった。」
「そうですわね」
ホントそう思いますわ。
「兄上も所詮王族だから、人の手配を深く考えない。両親も気にかけるけど、どう何だか。最悪アチラ側が手配した可能性さえある。それだけ相手は強かだった。今だ処分にグダグダ言われるのも、兄上の怠慢が原因だ。」
「えっ?何故ですの?」
私は言われた意味がわからない。
「悪役というのはね。その人が演じるんじゃなく、周りがそう仕向けて成り立っているんだ。本人の意思は関係ない。見た目の問題だよ。」
あっ、なんとなく言いたい事がわかる。
「例えば僕なんてどうだい?リディアーヌ嬢はどう思ってた?」
私何も言えませんわ。ええ、ほんとにそうですわね。
「人なんてそんなものだよ。関わらない人がほとんどなんだ。つまりその他大勢の意見に左右される。すると見た目はとても大事だよね。人は簡単に騙されるし、その人の考えなんてどうでもいいのだから。」
そう考えると何というか………
乳母さんは周りをだいぶ自由に行き出来ただろう。
弱弱しい困った顔のおばあちゃん。
お仕えしているのは、横暴な第一王子ユリウス殿下。
だから先日の混入事件も簡単に実行でき、罰を受けても同情される。
”この釣りも意味がないかもしれませんわね”
急がなきゃならないのに、何故か振り出しに戻ったそんな一日だった。
「ところでリディアーヌ嬢は古の地一族の事どれくらい知ってる?」
ガウェイン殿下が探る様に聞いてくる。
しかし私は今回初めて聞いたようなものだ。
「何も知りませんわ」
私は素直に答えた。
「そっか僕もさっきの分しか知らないんだ。それより古い資料は教国にあるから調べて見よう。」
「そうなのですね。どうかよろしくお願いしますわ」
「兄上たちはまだ食べないのかな」
ガウェイン殿下は心配そうにユリウス殿下たちを見ている。
「一食抜いたからって死ぬ訳ではありませんわ。その分早急に作って使ってさっさと調べたいですわ」
早急に実用化したいから、ユリウス殿下マーベル頑張れ。
「ホントだね。マリエ夫人達もいるんだよね?行く時は一緒に行くよ。」
「ええ、判りましたわ」
しかしその間も用心には越したことはない。
「何だか当初の目的と変わり過ぎて、偉く遠くに来たものだなと思いますわね。」
もう精神疲労が酷過ぎて、今は一時休息中だよ。
「そうなのかい?」
「ええ、ホント始めは………」
ガウェイン殿下にユリウス殿下と戦う予定だったことから話す。
ホントなんでこんな事になっているのか………
世の中ままならないのですわ~~………
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)