ジェラート
―――翌日
「んっ、おいひぃ~」
「あぁ、いろんな味があるのもいいな」
アーサーさんご夫婦と晩餐をとり、温泉を楽しんだ私たちはその翌日、アーサーさんの奥方であるエレナさんおススメのジェラート店を訪れていた。
私はストロベリー味、アリシアがレモーネ味を選んでいた。
「たまにはいいかもしれないな」
ザカリィはカフェオレ味を味わいながら頷く。お父さまはごま味、シーザーさんはバニラ、アレンはオレンジを注文した。
「ザカリィ、ストロベリー味も食べてみる?」
「むっ」
おもむろに私のジェラートを差し出してみれば。
「では、あ~んをしてくれ」
なぬっ!?
「貴様」
お父さまの視線が恐いのだが。
「ふんっ、自分がしてもらえないからと言って嫉妬とは戦神め、堕ちたな」
「はぁっ!?」
「こら、どっちにもあ~んするからケンカしないの」
『えっ』
何だその“えっ”は。
ひょいっひょいっとザカリィとお父さまにストロベリー味を食べさせる。
「ふたりとも、おいしい?」
「あぁ」
「うん、まぁ」
「あの、お父さまのごま味も味見したいです」
「あぁ、もちろんだ」
お父さまがジェラートの皿を近づけてくれたので、スプーンによそってぱくりとひとくち。
「あふっ、ごまもおいひぃれす」
「りゅ、リューリ」
ん?どうしたのかな、ザカリィ。
「何故俺のではなく戦神からなんだ!いや、むしろ俺の以外でそれをっ!!」
「ふんっ、貴様がリューリの好みを予測しえなかった時点で負けだ」
いや、確かにお父さまの注文したごま味も気になってはいたのだけど。
「うぐぅっ!」
並々ならぬ闘志を燃やすザカリィ。
「あの、ザカリィ。私カフェオレ味も興味あるけど」
「本当かっ!?」
ぱあぁっと顔を輝かせるザカリィをお父さまはやれやれと言う目で見やる。
「では、あ~んしろ」
そう言ってザカリィがスプーンにジェラートをよそってくれる。
「では、いただきます」
差し出されたスプーンだもの。何の疑問も持たずにぱくり。
「あ、こっちもおいしい」
「そうか!」
ザカリィが妙に笑顔だったのが気になるけれど。
「リューリ」
「ん?」
「俺以外からあ~んされるのはや、やめろ」
「へ?」
ザカリィがあ~んをねだってきたからここそう言うのOKな流かなぁと思ったのだが。
「あ、でも女子同士はOKだ、団長。はい、リューリさま」
「はむっ」
アリシアからレモーネ味のジェラートをよそったスプーンを口に突っ込まれる。
「んんっ、おいひぃ。私のストロベリー味も食べる?」
「うん、あ~んして」
「はい、あ~ん」
「がくっ」
ザカリィったら、女同士なのに何をそんなに?
「そうだ、シーザーさま。ジェラートを本格的に観光客向けに売りにしてみます?リューリさまとアリシアがあんなに喜んでいますし」
「いや、ジェラートだけ目当てに来るか?女性が半日もかけて」
「温泉もあるじゃないですか」
「あ、私もそれはいいかと」
「でも、そこら辺は女性のエレナさんに任せるべきだと思う。副団長は休暇を楽しむべきだと思う」
「うぐっ」
アリシアにぴしゃりと言われ、この件は帰宅後エレナさんに任されることになった。
「そうだ、この後はアリシアとも話したんだが、神殿に行ってみないか?」
と、シーザーさん。
「神殿ですか?そう言えば私、一度も行ったことがなくって」
そう言えば、主人公以上に忘れていた。
「王都の神殿だと目立つだろう?リューリ嬢はまだ神殿での成人の儀を終えていないだろう。こっちでぱぱっとやってしまってはどうだろうか」
「あぁ、神官長も言っていたな」
シーザーさんに加えてお父さままで。神官長さまといつの間にそんな話を?
「でも、そんなに簡単にできるものなんですか?」
「王都が格式張りすぎるんだ。地方は水晶玉に手をかざして各神殿の神官長が言葉を与えて終わりだな。南部はたまに聖女や聖者が現れるから違うかもしれないが、北部はあまりそう言う縁はないんだ。雪深くなれば神殿まで来られない場合も多いから、成人前の本格的な冬が来る前にさっさとやってしまうことも多いよ」
うおぉ。フリーダム!
「それでしたら」
もうとっくに成人も過ぎているし。さっさとやって終わりならば私としても気持ちが楽だ。
「では、この後は神殿だな」
「はい」
神殿はどんなところなのか。建物だけは新居の隣にあるのでわかる。
何故か神殿が王城の土地の横にあるのである。まぁ、移動は楽だし何かあった時に神官長さまが王城に馳せ参じるのも早くて便利なのだけど。
我が家は隣に討伐団の宿舎と演習場、そしてその逆隣に神殿がある。何かあっても安心安全で、何だか過保護なザカリィのお兄さまたちからの心配性を盛りだくさんに感じるのであった。




