ー第8話リプレイPart2
ー第8話リプレイPart2
カウント3ー3。
「ジュース。」がコールされた。ここからは、2ポイント先取になる。
宮内は立てたラケットの角度を左に向けた。高宮は、サービスと同時にネット際にダッシュする。ボールは斜めに高く舞い上がった。ネット際を、外に向かって落ちバウンドした。
高宮はコートの外に出てゆくボールを、ラケットに当てた。ボールは、審判台の下を抜けて、サイドラインに乗った。相田は背走したが、返しようがない。ボールは2バウンドした。
「アドバンテージ サーバー。」
とコールされる。
そして、ラケットを立てている相田に、高宮がサービスを放った(はなった)。
…?フォームが違う!!。…
相田は、とっさにフォアハンドストロークに持ってゆこうとした。
その手からグリップが抜けた。ラケットは後ろに勢いよく飛んで、コーチの顔の前のフェンスに激突する。その相田の目の前を、山なりのボールがポコンと落ちてバウンドした。相田はそのボールを右手のひらを開いて打ち返す。ボールは篠原の正面に飛び、ボレーで相田の左側を抜いた。
「ゲームセット。セットカウント3ー0。勝者、篠原高宮組。」
審判のコールが聞こえた。
篠原は目を潤ませて(うるませて)振り返った。高宮は両手を突き上げて、走ってきた。フラッシュがたかれ、三崎コーチがカメラを構えて、笑うのが見えた。
「やりました。先輩。」
篠原は、涙で高宮が見えない。そして、ネットの前で言った
「すいません。負けて下さって。ありがとうございます。一生忘れません。」
深々と、高宮は頭を下げた。
茫然とする相田宮内の後ろで、さっきまで怒っていたコーチが帽子を取った。そして、同じように深々と頭を下げた。
このコーチは以後、怒らなくなったと、相田が振り返っている。
そして、篠原高宮組の3回戦。見事にサービスが入らなくなり、ストレート負けする。篠原は、アイスシュークリームを、高宮とその仲間、阿部能登島と食べに行ったと言う。
大会は終了し、高宮は好意を寄せ始めた阿部を避けるために、テニス部を退部する。
こうして。
高宮のパラダイスの日々は、終わりを告げた。
ー次話!
ー第9話再会
につづく!