エピローグ 私たちの在り方
エピローグ 私たちの在り方
庚と法人は、店の中の片づけに追われていた。
商品は大丈夫だった――付喪神たちのおかげで。商品は傷一つつかず、健在。
だが、陳列棚には付喪神はついていない。
陳列棚のガラス戸は割れ、棚はひしゃげていた。
「派手にやってくれて……」
「派手にやらなきゃ、倒せない相手だったろーが」
「損失分、貴方に請求してもいい?」
「不可抗力だ」
二人は箒と塵取りを持って、わいわい言いながら、手と足を動かしていた。
「これじゃ、しばらく店開きできないわね」
庚がそうぼやいた。
「いっつも開店休業だろ? そう深刻になることないって」
庚はこの言葉を聞いて、思いっきり法人の足を踏んづけた。
「いてー!」
この様子を見て、骨董品達は思い切り溜息を吐いた。
「法人様は、戦いの最中、あんなかっこいいこと言っていたのに」
「あんな素晴らしい姿を見せていたのに」
「今では『へたれ』ですわ」
「まったく」
茶器たちは呆れていた。
「マスターは全くの鈍感だし」
「気付いていませんものね」
ティーポットが言う。
「『へたれ』と『鈍感』、これでは全く話が進みませんわ」
「本当に」
これには骨董品一同、溜息を吐くしかなかった。
「おっとそうだ、鏡の具合はどうだ?」
法人が庚に尋ねた。
庚は無言で鏡を差し出す。
そこには法人のほか、骨董品達も正常に映し出されていた。
「おお! これよこれ! 直ったか」
「そうみたいね」
曇りも傷一つない鏡体がそこにはあった。
「これ、依頼者に返すのか?」
「もう返しても、平気でしょ?」
鏡体に憑いていた妖は只今蓋つきごみ箱で処理中であり、本体の貴姫は天に召した。
もう、この鏡に害するものはない。
封印等も必要なくなったわけだ。
庚は近々、依頼者の近藤氏に連絡を取ると言う。
「そうだな」
今回の騒動は終息した。
これでよいのだろう。
「そうだ!」
思い出したように法人が言い出した。
「庚、忘れてないよな、水炊き。今日の夕飯、水炊き鍋だろ?」
「……はいはい、覚えてますよ」
こうして響谷骨董具店は続いてゆく。
『いわくありげな商品』を取り扱う店として、続いてゆく……。
これはそのほんのひと場面。
――いらっしゃいませ、響谷骨董具店へようこそ。




