幸せの旅館殺人事件 ヘアピン2
倒れている男女は旅行客の小野龍太郎さんと宮本小雪さんだった。2人とも血だらけだ。僕はそっと近づく。
『お嬢ちゃん危ないよ!?』
『死んでる…!』
『きゃあああっ!?』
『まさか座敷わらしがやったのか!?』
『警察を呼んで下さい!』
扉の前に立っていた第1発見者は森脇正さんという50代の男の人だ。
『俺は何もしていない!』
『落ち着いて。事情は警察から来てから話してください。』
そして見慣れた警察がやってきた。
『まさか扉木くんがここにいるとは…。』
やってきたのは霧雨警部だった。何かと縁がある。たまたま休暇でこの近くにいた所、駆り出された模様。
『休日だったのに…』
『霧雨警部。事件を解決しましょう!』
『そうだな…被害者は2名か。事情聴取に入ります。全員個別で話を伺います。』
全員個別で話を聞いた。
まず森脇正さんから順に、鹿島聖夜さん、志田春馬さん、津田美玖さん、持田爽さん、管理人の山埼さんまで僕と霧雨警部の2人で事情聴取。雪雲ちゃんは死体を見たショックで気絶。工保ちゃんも立ち直れていない。普通の小学生はそうだよね。
事情聴取の内容
森脇さん。
『トイレに行こうと思って部屋を出たら、隣の部屋のドアが空いていたんだ。それで覗いたら2人が死んでいた。本当だ!』
鹿島さん。
『部屋で食事してました。クリスマスケーキです。雪が綺麗ですね!』
志田さん。
『部屋で寝ていた。飛び起きた。なんてことだ。はぁ…座敷わらしがやったのか?そんなわけないか』
津田さん。
『知らない。私は何も…。役者をやっているので、台本の練習をしていました。そういえばシャリシャリって音が聞こえたような…』
持田さん。
『俺は夜の運動をしていたよ。日課なんだ。』
山埼さん。
『大浴場で清掃をしていました。まさか私の旅館で人が死ぬなんて…ああもう終わりだ。』
事情聴取は終わり。一旦、僕と霧雨警部は2人で話をまとめていた。
『うーむ。わからん。扉木くんはどう思う?』
『僕も確信はありません。現場検証しましょう。』
現場に戻る。2人の死体はそのままだ。気になるのは2人とも顔に少量の雪がついているということ。また、近くには小さな白い紙がまばらに落ちていた。
『もう遅いし、寝よう。深夜に小学生が寝ないのは不健康だ。扉木くんは友達と来ているのだろう。安心させよう。』
『わかりました。おやすみなさい。』
僕は部屋に戻り、みんなと寝た。翌朝、全員容疑者含めて、1つの部屋に集まった。その時だった。
『ひぃっ!!』
志田さんが急に叫び出し、走り外へ出ていった。僕と霧雨警部が追う。志田さんは木の近くで、トイレットペーパーで首を吊って死亡していた。
『なっ!?』
『トイレットペーパーで…!?』
残された人たちも走って向かってきた。
『ひどい…!』
『こんな死に方は嫌だろ…』
『ひぃっ』
『雪雲ちゃん!』
雪雲ちゃんはまた気絶。工保ちゃんはどうにか耐えた。
再び集まり、現場検証をする。
トイレットペーパーで首を吊った死体
周りは雪で覆われている
木々に囲まれた森の中
『これは自殺だな!木で首を吊っている。昨日他の人が殺されて怖くなって追い詰められたのか?もしや犯人…?』
『答えを出すには早計過ぎます。これを見てください』
『これは…壊れた懐中電灯?』
『はい。こんなもの走って出るなんておかしすぎます。懐中電灯をもってトイレットペーパーで首を吊って自殺なんてしますか?』
周囲は沈黙した。女子小学生の確かな推理力に。