エピローグ
「今日の冒険は、此処で終わり」
少年はそう言いながら、ぱたんと本を閉じた。女の子は不満そう唇を突き出し、眉を八の字に曲げた。
「えー…もうおしまい?」
「おしまいだよ」
「もっとよみたいのに!」
女の子は髪をぴょこぴょこと跳ねさせながら飛び上がる。少年はその女の子の頭を撫でて微笑んだ。
「まだ、続きがあるから読めるんだよ?早く読んでしまったら、すぐに続きが無くなっちゃうよ」
「うー…それはヤだなぁ…」
それでも女の子は、名残惜しそうに本を見つめていた。その様子を見ていると、もっとたくさん読んであげたくなってくる。
「他の本も読もうか?」
「うん…でも、わたし、これがいいの」
「君は本当にこの本が好きだねぇ」
言いながら少年は、少女の手から本を取って、表紙を擦った。
「シャルロットの冒険」
表題を読み上げると、それだけで女の子はにこっと花のような笑顔を咲かせた。
「でもね、続きはまた今度にしよう。彼女の冒険はまだ続くのだから」
少年が女の子の頭を撫でると、女の子は、うん!と元気よく答えた。女の子はきっと、心の何処かで理解しているのだろう。
また、この本を開くと、いつでも彼女達に会える事を。




