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ビッグマウス

本日4話投稿の予定

1/4

 制定結界により魔法が封じられている。

 なるほど、確かに本当ならそれは強力な事なのかもしれない。

 

 だが、タカマガハラで魔法が使えないというのは嘘だろう。現に俺は使えていたし、なんならここへ赴く前にも、タカマガハラでは湯を沸かすために使った。ハッタリにしては雑味が多い。つくなら、もっとマシな嘘をつくべきだな。


「〈尖れ(シャーポ)〉」

「………………は?」


 試しに俺は拾っていた木の棒に魔法を使ってみる。

 俺の詠唱後、木の棒は少しだけ光ると先が剣先のように尖った。


「……〈研磨せよ(ポリシン)〉〈伸びよ(エクステン)〉〈重くなれ(ヘビーウェイ)〉〈硬くなれ(ハーデニン)〉〈薄くなれ(ジナーン)〉〈変じろ(チェンジン)〉」

「は?」

「――――〈斬れよ(スラッシン)〉」


 木の棒を魔法で片手剣に模した何かへと変形させれば、そのままパタスに振り下ろし魔法をかける。

 

 すると案の定、木の棒だったものから斬撃が飛んだ。

 魔力の奔流が中心へと刃先へと圧縮され、瞬発的に膨張しパタスへ飛んだのだ。

 光でもあり、熱でもあり、斬撃でもあるその衝撃は、瞬時にパタスの身体に傷を負わせる。

 

 うん。隙だらけで助かります。

 

「ぐ、はっ……! は、ぁ? なんで、オメー魔法が……!?」

「なんでって言われても……なんで?」


 思った以上にパタスはどうやら魔法が効いているらしい。パラパラとなぜか皮膚とか、服とかが崩壊している。


 いやー、予想以上に効いてらっしゃる。そこまで威力が大きいとは思わなかったんだけどな。ジャイアンと模擬戦している時なんて、さっきの魔法だといつもノーダメだったし。

 実はパタスって、ジャイアンより弱い?


「貴、様……貴様貴様貴様っ! まさか、〈真魔法〉を使えるのか!!!?」

「いや、なんだよそれ」


 真魔法?

 知りません、そんなものは。

 俺の魔法は別に他の一般人と変わらない代物です。

 詠唱はちょっと変わってるらしいけど、まぁ許容範囲内だし?

 体内にある魔力をリソースに発動させている()()だし?

 ハナみたいに意味わからん威力とか出ないし、意味わからん回復なんかもさせられない。


 俺の魔法がそんな特別なのであれば、他の人間も特別ということになってしまう。つまり、俺の魔法は普通だ。

 

「ぶち殺して、やる……ウキケ!」


 さっきまでとは別格の雰囲気を纏い始めたパタスが、完全に牙を剥き出しにした。

 あまりの怒り心頭に、語尾までおかしくなってる。


「っ、〈加速せよ(アクセルン)〉」

「ウキィャー!!」


 強者の余裕など投げ捨ててしまったらしい。頭につけていた意味不明な輪っかを砕き、筋骨を肥大化させ俺に吶喊してくる。


 つまり、なぜか分からないけど一回りくらい、躯体を巨大化させてしまったのだ。


 ……終わったかもしれません。

 ええ、ええ。誰がどう見ても、踏んではいけない地雷を踏み抜いた可能性が大いにあります。


 俺は喧嘩をしに来たんだけど。

 これ大真面目に殺し合いに発展してない?

 さっきの第1形態だけでも俺は手足が出なかったというのに、今からは本当に本当の一方的蹂躙が始まりそうである。


「いや、待てよ」


 俺は追いかけてくる肥大化したパタスを見る。

 

 大きくなったパタス。

 普通に逃げれてる俺。

 

 筋肉が盛り上がり、さっきの何倍よりも体が重くなったであろうパタス。

 対して魔法で素早くなった俺。

 

 そして、なぜか予想以上に効果があるらしい俺の攻撃魔法。


「………………倒せるくね、これ」


 うん。今なら最大攻撃を当てて倒せる気がする。

 

 ただの人型であったさっきのパタスには、ちょっと当てる自信がなかったのだが、今ならなんだか当たりそうな気がしてきた。

 うん、当たると思い込もう。思い込めば大抵はなんとかなるって、隣に住んでいたおじちゃんが言っていた気がするし。


「よかったよ、お前がバカで」

「グギギ、貴様……真魔法を使いし……薄汚い魂めが…………滅びろ! あいつのために、滅びろ!!」


 意味不明な狂言を宣うパタスは、そうして4体に分身した。


 うん、的が増えただけである。

 アホか、こいつは。いやアホなのか。アホだってツッコミをいれて欲しいのか。


 途端に俺の頭が冷えていく。今ならこんなアホに負けるとは思えないくらい、俺は冷静さを取り戻してきた。

 なんで最初は、こんな奴に負けると思ったのだろう。いや多分、あの第1形態のまま戦われていたら負けたのかもしれないけど、冷静さを失い体を巨大化させ、さらに力を分散させたコイツには負けるビジョンを湧かせられない。


「おい、パタス。もうこれ以上、娼婦を苦しめる貴族に加担しないって言うなら俺帰るけど、どうする?」

「「「「ぬ、ぬかせ。真魔法の使い手は、滅ぼす……これは、殺し合いだァァ!!」」」」

「会話までできなくなってるよ」


 俺は呆れ半分に致し方ないと悟る。


 なんだか4体のパタスがそれぞれの拳に魔力らしきものを集中させていってるし。あれを喰らうわけにもいかないな。

 肉弾戦なら負けていただろうに。単純な魔法の撃ち合いなんざ、悪いけどあの幼馴染以外に負ける気がしない。

 

 俺は木の棒を自身の腹部あたりに向け、溜めモーションに入る。


「〈光よ〉〈風よ〉〈熱よ〉〈音波よ〉〈重力よ〉――――あとなんかあったけ? まぁいいや、〈収縮せよ〉」


 多分、こんな感じだったと思う。

 昔、ハナと一緒にやった魔王ごっこで俺が悪ふざけでやった魔法。

 威力は……うーん。覚えてない。多分、押し負けることはないだろう。


 もうすでにパタスも魔法を形成してるみたいだし。

 

「「「「滅び、滅べ、消え失せろおおおおおおおお! 〈閻魔光来四天玉〉!!!!」」」」


 何やら物凄そうな魔法名を唱え、4体のパタスがそれぞれの魔力で形成した玉を俺に放り投げる。巨体から撃ち放たれるそれは恐ろしいことに、この空間全てを飲み込むような大きさで形成されていた。

 瓦礫を捲り、風を呑み、光を裂いて俺へと前進する四つの球。

 やがてそれらは一つに混ざり合い、形容し難い色や形へと変貌を遂げ、さらに膨れ上がる。


 だが、まぁそんなものだ。

 ハナのいかれた魔法を見てきた俺からすれば、うん。そんなもんだという感想が出てきた。


 俺は立ち止まり、両手で握っていた木の棒を腹部から頭上へと振り上げる。

 冷徹に。冷酷に。最後までパタスの恐怖で歪められた顔を見ながら。




 

 





  

「〈撥ね飛ばせ(スシュータ)〉」




 




 

 ――俺が小さくそう唱え終わった瞬間。

 視界はやけにクリアなものへと切り替わっていた。

お久しぶりです。

よければブクマや評価してください、喜びます


また新しい短編書きました。連載するか悩み中

よければどうぞ


【お前、令嬢とヤっただろ】冤罪で追放された元最強は、世界で2人目の魔女に拾われるそうで

https://ncode.syosetu.com/n0251il/

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