367.処分と案件
本日1話更新です。
明日も1話更新できる、ハズ( *'ω'*)و グッ!
なんだかいろいろ考えこんじゃって、お昼ごはんをよく味わえなかった。
やっぱダメだわ、ごはんはちゃんと味わわねば。せっかくマルゴが美味しいお料理を作ってくれているのに。
午後の授業も、もちろんテアちゃんガン君と一緒に受けた。
そして今日も最後の授業は算術選抜クラス。
いやもう、この安心感。なりゆきで選択したクラスだったはずなのに、いまじゃ私にとっていちばん安心できる授業になってるわ。
教室へ行くと3年生のお2人、ペッテ先輩とアル先輩がいた。
その、お2人だけじゃなく、ファーレンドルフ先生も……それにオードウェル先生も。
さすがにちょっと面食らった私たちに、オードウェル先生はにこやかに言ってこられた。
「ゲルトルード嬢、ドロテア嬢、昨日のことで貴女たちにお話があります。ファーレンドルフ先生にお願いしてお時間をいただいたので、できればドラガン君も一緒に少しお付き合いいただけるかしら?」
私たちは思わず顔を見合わせちゃったけど、もちろん否やはない。
ガン君もうなずいてくれて、私たちはオードウェル先生に続いて教室のとなりにある資料室へと移動した。
ファーレンドルフ先生も、あとを3年生のお2人にまかせて、私たちと一緒に資料室へと移動してこられた。
資料室というのは、まあ言ってみれば物置みたいな感じ。古い書籍や、卒業した学生の研究論文をまとめたものなんかが、結構乱雑に保管されている。
折り畳みの椅子は用意してあったけど、小さな部屋なので先生2人に生徒の私たち3人が入るとすっかりぎゅうぎゅう詰め状態になっちゃった。
そのぎゅうぎゅう詰め状態で、遮音の魔道具が発動された。
オードウェル先生のお話は当然、昨日の乗馬の補習授業中に起きた事件について。
スヴェイがその場で実行犯を確保してくれたおかげで、すぐに犯人特定にいたったわけだけど、その犯人である例の3バカ3年生を追及したところ、余罪も白状したらしい。
「じゃあ、あの夏休み前の事件も……私と姉の乗馬中に蜂の群れが現れたのも、あの3人によるものだったのですか」
ガン君が心底呆れてる。
オードウェル先生も思いっきり渋面だ。
「本当に嘆かわしいことに、本人たちはほんの悪戯だと……彼らの言葉を借りると、少しばかり成績がいいからといい気になっている子爵家風情の下級生をこらしめてやるつもりだったと……事情聴取を行ったわたくしは、その場で3人とも張り倒してやろうかと、いえ、失礼」
本音が漏れてます、オードウェル先生。実は結構体育会系?
ファーレンドルフ先生も一瞬だけ苦笑して、すぐに真面目な顔で言ってこられた。
「しかも彼らは、きみたちが落馬して怪我でもすればいいと思っていたと、はっきりと口にしました。つまり、そういう危険性があることを認識した上で行った犯罪行為であるのに、それでもなお言い逃れをしようとしていた。さらに、ほかにも何件か気に食わない下級生に対して問題を起こしていたことがわかり、著しく悪質であると、陛下もご判断されました」
うわ、本当に国王陛下案件なんだ。
うーん、そりゃまあそうか……実際、デズデモーナさまは命の危険だってあったわけだし。それも完全にとばっちりの、巻き込まれ事故で。
そして陛下の呼びかけで緊急学院理事会が招集され、その場であの3人の処分が決まったんだそうな。
その結果、昨日のうちに3人の保護者、つまり各伯爵家の当主が呼び出され、直接その処分も伝えられたそう。
さすが陛下、仕事がお早いです。
とか思ってたら、オードウェル先生がぶっちゃけたことを口にしてくださった。
「本当に陛下の即断で、ほかの貴族家から横槍が入る前に決定していただけて助かりました」
あー……やっぱり横槍が入る可能性もあったんですね……。
ファーレンドルフ先生もうなずいてらっしゃいます。
「緊急理事会も、決議できるぎりぎりの人数が集まった時点で入室を締め切り、すぐに採決をとってくださいましたし」
「緊急招集にすぐ応じられるほど真面目に務めていただいている理事であれば、今回の陛下のご判断に反対されるようなかたはいらっしゃいませんから、そこも上手くいきましたね」
オードウェル先生、さらにぶっちゃけてくださってます。
こんなに素早く、昨日のうちに一気に処分が決まったのは、そういう理由もあったんですね……長引かせると、いちゃもんつけてくる連中がいるってことで。
「今回の彼らの処分については、公示はしません」
オードウェル先生が、私たちに向かって言ってくださる。
「公示しなければ、被害者である貴方がたのことも公にはなりませんから」
「ありがとうございます、オードウェル先生」
私は即座にお礼を言った。
オードウェル先生は、昨日私が、事件について学院から我が家に伝えてもらいたくないと言ったことを、尊重してくださったんだと思う。もちろん、デズデモーナさまの抱えている事情も考慮されたんだろうし。
うなずかれたオードウェル先生は、それでも表情を引き締めてさらに言われる。
「加害者である3人の生徒とその保護者である当主には、罪状を公示しないのは陛下の恩情であると伝えてあります。けれど、実際に彼らが卒業せず来年度も在学することになれば、その理由を詮索する者が出てくるでしょう。そのさいに、彼らが貴方がたの悪評を並べ立て、まるで自分たちこそが被害者であるような言い訳を並べるであろうことは、簡単に想像できますね」
あー……それはもう、確実にやらかしそうです。
ちょっと遠い目をしながら私がうなずくと、テアちゃんとガン君も同じような反応をした。
オードウェル先生はそんな私たちに、その対策についても教えてくださる。
「陛下は、今回の事件は一方的に彼ら3人に責があること、そしてもし今後貴方がたになんらかそういった悪評が立つようなことがあれば、学院として正式に彼らの罪状を公示し、なおかつ3人とも即刻学院から除籍すると、はっきりと本人および保護者にお伝えになりました」
そう言ってオードウェル先生は、大きく息を吐かれた。
「それによって、彼らが自粛してくれればいいのですが……問題は、彼らがそういった言い訳をする場すら与えられない可能性があることですね」
そこでオードウェル先生と顔を見合わせたファーレンドルフ先生が、私たちに向き直って告げられた。
「当該の伯爵家は、三家とも廃嫡の方向で動いているようなのですよ」
廃嫡って……本当に?
いや、確かにその可能性はスヴェイも口にしてたけど。
私は思わずテアちゃんガン君と顔を見合わせちゃった。
だって、確か3人とも伯爵家の嫡男なんだよね? それが今回のことでそろって廃嫡なんてことになったら……そりゃもう自棄になって私たちを襲撃してくる可能性ありまくりじゃない?
「とにかく危険なのはゲルトルード嬢ですね」
オードウェル先生が眉間にしわを寄せまくって、私に言ってこられた。
「たとえ廃嫡されても、ゲルトルード嬢を手籠めにすれば伯爵位が手に入りますから」
超ストレートの剛速球で言ってくださって、むしろありがとうございます。めちゃくちゃわかりやすいです、オードウェル先生。
「学院内では、できる限りきみたち3人で行動してください」
ファーレンドルフ先生の言葉に私がうなずくと、一緒にうなずいてくれたテアちゃんがぎゅっと私の手をにぎってくれた。もちろん、ガン君もしっかりうなずいてくれている。
「ドラガン君が同席できない男女別の授業は、当面すべてわたくしがゲルトルード嬢とドロテア嬢を担当します」
「ありがとうございます、オードウェル先生」
いや、それは本気でありがたいです。めちゃくちゃ心強いです。
私とテアちゃんは顔を見合わせて、お互いちょっと口元をほころばせちゃった。
「そしてドラガン君」
オードウェル先生の顔がガン君に向いて、ガン君がうなずく。
「緊急の場合は、貴方の固有魔力を使用しても構わないと、陛下がご許可くださいました。追ってその旨、書面の通知もされるとのことです」
「いいのですか?」
ガン君の目が丸くなってる。
いや、テアちゃんもそうとう驚いた顔をしてる。
オードウェル先生は、再度はっきりと言われた。
「ええ、人目のあるところで使用しても構わないとのことです。それに、ドロテア嬢が暮らす女子寮の夜間警護のためにも、ドラガン君の固有魔力を使用しても構わないとのことです」
ガン君とテアちゃんは顔を見合わせ、小声で話してる。
「マルセルをわたくしの部屋に待機させてもいいってことかしら?」
「そういうことだろうな」
「マルセルが一晩中見張ってくれているのなら、とっても安心だわ」
「日中も、マリアンをすぐ呼べるようにしておくよ」
マルセル……それにマリアン?
誰だろう? 女子寮なんだから、従者を部屋に待機させることはできないよね? 侍女なら可能かもしれないけど……。
私は頭の上にクエスチョンマークを跳び散らかしちゃったんだけど、ガン君の固有魔力を使ってテアちゃんの身を護る方法があるらしい。
しかし、国王陛下から使用許可が、それも書面で通知されちゃう固有魔力って……ガン君ってばいったいどんなすごい固有魔力を持ってるんだろう。
「わかりました」
ガン君が頭を下げる。「陛下のご配慮に感謝します。私の固有魔力を使って、姉を護るよう対策させていただきます」
「ありがとうございます」
テアちゃんも頭を下げてる。
うなずいたオードウェル先生は、今度は私に顔を向けてこられた。
「ゲルトルード嬢の登下校については、スヴェイ君がついているので大丈夫だと思いますが、それでも十分に注意を」
「はい、スヴェイにも伝えます」
「それに、クルゼライヒ伯爵家のタウンハウスといえば、強固な防御の魔法陣で有名ですから、そちらに押し入るようなことはまずないと思いますが……お引越しの予定がお有りでしたね?」
「はい。けれど、すぐに、というわけではありませんので、引越しまでに対策を立てます」
オードウェル先生の問いかけに私は答えながら、これはちょっと精霊ちゃんにお願いして防犯システムを早めに作ってもらう必要があるかも、と思ってしまった。
あとは、私自身の護身術だよね……これはもう本気で、そういうものを身につけないとダメな感じだわ。公爵さまに相談すれば、そういう指導をしてくれる人を紹介してもらえるかな?
あ、そう言えばアーティバルトさんのお兄さんが【筋力強化】だって言ってたっけ。相談にのってもらえるかも!
などと私が考えていると、今度はファーレンドルフ先生が口を開かれた。
「今回のことなのですが……この算術選抜クラスの3年生2人と情報共有したいと考えています」
私たちがそろって顔を向けると、ファーレンドルフ先生は続ける。
「3年生の2人はすでに卒業に必要な単位を取り終えているため、常時算術選抜クラスの教室にいてくれます。最低でもどちらか1人はいるようにしてくれていますので……相手が強硬手段に出たときはともかく、身分を振りかざして絡んできたときなどは、きみたちがこの教室まで逃げてくればあの2人が対応してくれます」
「それは……そのようなご負担を、お2人にお願いしてもいいのでしょうか?」
ガン君の問いかけに、ファーレンドルフ先生はうなずいてくれる。
「彼らも、後輩であるきみたちの力になりたいと思ってくれているようでね」
ファーレンドルフ先生は、私を見てくすりと笑った。
「特にゲルトルード嬢に対しては、あの計算表と計算方法を教えてもらえたことに、あの2人は本当に感謝しているようで」
ガン君とテアちゃんの顔が私に向いて、しかも思いっきり納得の表情を浮かべちゃってる。
えーと、本当にそれほど恩を感じてくださっているんですかね、私が九九の表と筆算を教えてあげたことに、ペッテ先輩とアル先輩は。
「2年生の3人については……私も迷ったのですが、彼らは下級生であるだけでなく子爵家と男爵家の子息であるため、対応が難しいだろうという判断をしました。2年生の3人には、情報は伝えません」
なるほど、3年生のお2人はどちらも伯爵家のご令息だから……それに学年でずっと首席争いをしてたような生徒だもんね、あの加害者3人組が少々絡んできても撃退できるはず。
でも、2年生の先輩3人は爵位も下になっちゃうし、いろいろ難しいんだろうなというのは私も想像がつく。
しかしホンットに、面倒なことになっちゃったなあ。
そもそも、こっちはまったくなんにもしてないのよ? 一方的にあっちがいちゃもんつけて絡んできて、それをあしらったら逆恨みされて。それで、下手をしたら大事故になってたような犯罪をしでかしてくれちゃって。冗談抜きで、死傷者が出なくて本当によかったってレベルなんだから。
さらに、それについて正式に処罰が下ったっていうのに、あくまで自分は悪くないとさらなる逆恨み拡大になる可能性大。
しかも、もし本当にまかり間違って私が手籠めにされちゃったりなんかしたら、我が家が乗っ取られちゃうんだよ。それも合法的に。
ホンットにあり得ないわ。
と、私はすっかりげんなりしちゃって……見る限り、テアちゃんとガン君もかなりげんなりした感じだったんだけどね。
そこで先生お2人が横目で視線を交わし、ファーレンドルフ先生がこほんと咳ばらいして口を開かれた。
「実は、今回のこの件について、王太子殿下がご協力を申し出てくださっています」
はい?
いや、待って!
もしかして、またもや王太子殿下案件なの?
8巻書店購入特典について活動報告をUPしました。ページ上部の作者名リンクからどうぞ。
今回の特約書店特典SSは、ゲオルグさんのお話です。





