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亀の瀬異聞録  作者: こうた
第九章「書き換えられた過去」

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第一話「変わる家系図」

大正四年。



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雨の降る帝都。



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藤富家の屋敷。



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真之介は一枚の紙を見つめていた。



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古い家系図。



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何百年も守られてきたもの。



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藤富家の歴史。



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先祖。



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当主。



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呪いを管理した者。



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全てが記録されている。



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……はずだった。



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「おかしい」



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真之介が呟く。



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綾乃が近づく。



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「どうしたの?」



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真之介は指を止めた。



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そこにある名前。



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『藤富零』



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「昨日まで」



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「この名前はなかった」



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綾乃の顔が変わる。



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「本当に?」



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「ああ」



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「俺は何度も見た」



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しかし。



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家系図だけではない。



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屋敷に残る記録。



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古い写真。



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手紙。



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全てに。



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藤富零が存在している。



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まるで。



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最初から。



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「この人は……」



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咲が写真を見る。



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「知ってる」



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全員が振り向く。



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「え?」



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咲は困惑する。



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「知らないはずなのに」



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「昔から知っている気がする」



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その瞬間。



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屋敷の時計が止まった。



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カチッ。



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カチッ。



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秒針が動かない。



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そして。



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壁に掛けられた古い肖像画。



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文字が浮かび始める。



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黒い墨。



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ゆっくり。



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人物名が変わる。



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『藤富零』



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真之介は息を止める。



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「まただ」



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黒帳は消えた。



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では。



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これは何だ。



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その時。



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書庫から物音。



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ガタン。



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全員が向かう。



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書庫。



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そこには。



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一冊の本。



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床に落ちていた。



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表紙。



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『藤富家記録』



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しかし。



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中身がおかしい。



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ページをめくる。



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最初の記録。



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『1820年』



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『藤富家は呪いを作った』



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真之介の表情が変わる。



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「違う」



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次のページ。



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『1820年』



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『藤富家は呪いから人々を救った』



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同じ年月。



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違う歴史。



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「どっちが本物?」



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誰も答えられない。



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その時。



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本の最後。



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まだ白いページ。



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文字が浮かぶ。



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『過去は書き直せる』



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『正しい歴史へ戻す』



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そして。



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最後の一行。



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『亀の瀬で待つ』



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全員が黙る。



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亀の瀬。



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そこは。



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藤富家が昔から避けてきた場所。



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地滑りが続く土地。



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封印された場所。



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真之介は決める。



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「行く」



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綾乃が止める。



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「危険よ」



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真之介。



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「だから行く」



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「過去を書き換えられたら」



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「未来も変えられる」



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その夜。



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誰も知らない場所。



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亀の瀬。



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地下深く。



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古い部屋。



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一人の男が。



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古い本を閉じる。



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「来るか」



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藤富零。



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「ならば」



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「本当の始まりを見せよう」



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地下。



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さらに奥。



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誰も知らない扉。



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そこには。



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『第一記録庫』



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と書かれていた。



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第九章

第一話


「変わる家系図」




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次は第2話

「存在しない記録」


亀の瀬へ向かう前の調査


改ざんされた歴史


藤富零がなぜ1915年に存在するのか


新キャラ登場



へ進みます。

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