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“わたしたちの定理”──最後の文化祭準備室

月曜日・文化祭目前の部室

文化祭まで、あと2週間。

3年生は“引退”状態とはいえ──

なぜか、部室に集まっていた。


高橋:「まさか、俺たちが今年も展示手伝うことになるとはな」


紅葉:「新山たち1年生が“数学を感じる展示”をやりたいって言い出したんだもん。放っておけないよ」


凪は黙って、模造紙に「∞」のマークを描きながら思う。


「わたしたちはもう“主役”じゃない。

でも、“この部”の一部でいたい」


水曜日・“数学を感じる展示”とは?

1年・新山:「テーマは、“定理じゃなく、定理が生まれた時間”です!」


紅葉:「名言っぽいけど、つまりどういう……?」


新山:「例えば、ピタゴラスの定理って、“辺の長さの関係”でしかないけど、

それを“図形の中に秩序を見出した時間”として伝えたいんです!」


高橋:「要するに、“数式の背景にある物語”を見せる展示か……」


凪:「それ、いい。“時間”を展示するって、数学部らしくて、ちょっと変」


木曜日・「わたしたちの定理」とは

準備中、1枚の模造紙に書かれたテーマ案:


“定理じゃなく、わたしたちの定理を展示する”


凪はその紙に、ゆっくりと書き足した。


「定理:わたしたちは、証明し合ってきた。

互いの沈黙も、間違いも、答えられなかった問いも。

わたしたちの数学部は、“論理”よりも先に、“対話”があった。」


紅葉:「……凪、それってもう展示にしよう」


高橋:「3年のコーナー、決定だな。“わたしたちの定理”」


金曜日・静かな解散の予感

作業後、3年だけが残った部室。


高橋:「そろそろ、本当に受験モード、入るか……」


紅葉:「さみしくなるね。でも、ちゃんと渡せた気がする。部の空気とか、時間とか」


凪は静かにドアに背をもたれかけた。


「“何かを教えた”とかじゃない。

ただ、“一緒にいてくれた”ことを、誰かに返せたなら──

それが、わたしの“証明”になる」


数学部ノート(凪)

■高校三年生・第23週

・文化祭準備──“主役でない時間”を共にする喜び

・凪:「わたしたちは、式よりも前に、“つながる”ことを証明してきた」

→ 数学部最後の展示は、“人のあいだ”に生まれた定理

それは黒板ではなく、心の中に残っていく

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