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“残す数式”──三者面談と、志望校の意味

月曜日・面談日程発表

「高校生活最後の三者面談」

そう聞くだけで、教室にはどこか張りつめた空気が漂っていた。


凪の面談は、木曜日の5限。


担任は理系進学コースを指導してきた数学教員。

でも凪にとっては、“問題を解け”としか言わなかった大人だ。


凪(心の声):

「私の“数学”って、そんなんじゃない。

“数式に言葉を与えるような、思索のかたまり”なんだ」


火曜日・高橋との昼休み

高橋:「第一志望って、結局どこにしたの?」


凪:「東京数理文化大学。数学科の、表現・教育系の研究室があるところ」


高橋:「あそこ、“純粋数学”の連中が厳しいって聞いたけど……大丈夫?」


凪:「……たぶん、“純粋”って、“孤独”じゃなくて、“自由”のことだと思いたい」


その言葉に、高橋は少し目を見開いて、


高橋:「……らしいな。凪っぽい」


と笑った。


木曜日・三者面談

担任:「東京数理文化大学。……ずいぶん攻めたところを狙ってるな」


凪:「はい。でも、理由はあります」


そう言って凪がカバンから出したのは、1冊のノート。

そこには文化祭で展示した未完の証明と、その余白に書かれた一行。


「f(x) = 未知なるわたし」


担任は、しばらく黙ったままページをめくっていた。


担任:「なるほど。

“問題を解く”ことじゃなく、“問題と生きる”ことを、大学でも続けたいってことか」


凪:「はい。数学と一緒に考え続けられる場所に行きたいんです。

それが、わたしの志望動機です」


金曜日・提出された進路希望調査票

進路希望欄には、凛とした筆跡でこう記されていた。


第1志望:東京数理文化大学・数学科(表現領域)

志望理由:「問いを考え続けることが、生きることだと知ったから」


数学部ノート(凪)

■高校三年生・第14週

・三者面談=数学との“これから”を語る週

・凪:「問題を解けるかじゃなく、問いを持ち続けられるかが、わたしの軸」

→ 数学を“道具”としてではなく、“生き方”として選ぶ

一行の数式に、自分の進路が込められていく

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