“展示という証明”──文化祭前夜、数学部の挑戦
月曜日・展示制作、仕上げ段階へ
文化祭本番まであと5日。
数学部の教室展示の準備がいよいよ最終段階に差しかかる。
テーマは──「見えないものを見ようとする数学」。
紅葉:「ここは“体積のない立体”のゾーン!ステレオグラムと模型も置こうよ!」
高橋:「数式アートは3点展示にして、途中計算も“作品”にしようぜ」
そして、教室の片隅には特設コーナー「数学とわたし」が設置される予定だった。
三年生が“数学との関係”を語る小さな言葉の展示。
凪は、まだそこに書く言葉を決めかねていた。
水曜日・迷いと沈黙
放課後、凪は黒板の前で、何度もチョークを持っては置いた。
「“数学とわたし”。
わたしは、なにを“証明”してきたんだろう」
問いが自分に跳ね返ってくる。
何度も思考の迷宮に迷い込んできた3年間。
でも、答えではなく、問いを持ち続けてきたことだけは確かだった。
金曜日・前夜、教室にひとり
展示の準備がひと段落し、誰もいなくなった夜の教室で、
凪は静かにチョークを走らせる。
「証明できなかったから、
わたしは考え続けた。
考え続けたから、
わたしは生きていた。」
黒板の隅に、そのまま小さく署名だけが残された。
数学部ノート(凪)
■高校三年生・第11週
・文化祭準備クライマックス
・展示は「問いを提示する構成」へシフト
・凪:「数学は、いつも“答え”より“問い”が先にあった。
それを忘れないことが、わたしの証明」
→ 数学とわたし、というテーマに“証明できないものを愛する勇気”を見出した週