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“教えることは、愛すること”──後輩指導と数学の贈り物

月曜日・後輩・夏木の質問

文化祭準備が佳境に入る中、1年生の夏木が凪に声をかけてきた。


夏木:「あの、先輩。

この確率の問題、どうしても“考え方”がわからなくて……」


凪:「……うん。ちょっと見せて」


その問題は、見かけは単純なコインの確率問題。

けれど、“どうしてそう考えるのか”を説明するのは、案外難しい。


凪はしばらく沈黙したあと、言った。


凪:「……ごめん。ちょっと時間、もらってもいい?」


夏木:「はい!」


火曜日・“うまく教えられない”という葛藤

凪(心の声):「言葉にしようとすると、いつも“わかってたこと”が崩れていく……

わたし、ほんとうに“理解”してたのかな……?」


その夜、凪はノートに「教える用」のメモを書き始めた。

ただ答えを伝えるのではなく、“思考のプロセス”を図にして可視化する練習をする。


水曜日・対話の中で見えてくる“教える力”

翌日の昼休み、ふたりは部室のすみで再び向かい合った。


凪:「たとえばこの問題、全体の空間を“こう”見るとわかりやすいかもしれない。

1回目に表が出るか出ないかで場合分けして──」


夏木:「……あっ、なるほど。

最初に分けると、後の確率が独立っぽく見える!」


凪:「そう。“見え方”を作ってあげるってことなんだと思う」


その瞬間、凪の胸の奥に、少しだけ光が灯った。


「“教える”って、“その人がその数学を好きになれるように祈ること”なんだ……」


金曜日・文化祭のポスター作成中

高橋:「ポスターに使う言葉、何がいいと思う?」


紅葉:「“美しい式は人を黙らせる”とかどう?」


凪:「それも素敵だけど……

“考え方は、贈り物になる”って言葉、どうかな」


みんなが一瞬沈黙し、そして頷く。


数学部ノート(凪)

■高校三年生・第10週

・夏木とのやり取り=“教える”とは“自分が理解する”ことでもある

・凪:「教えるって、思考のしかたを贈ること。

それって、たぶん“数学を愛してる”からできること」

→ 数学は“解くもの”から“伝えるもの”へ

思考のバトンが、確かに渡り始めている

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