表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

103/124

“未来のわたしへ”──文化祭企画と、数学部の最後の秋

月曜日・文化祭準備会議

秋晴れの午後、数学部の部室には少しだけ緊張感が漂っていた。

三年生として最後の文化祭。

テーマは――「見せる数学」。


紅葉:「今年こそ、“数学って楽しい”ってちゃんと伝える展示にしたいなって思ってて!」


高橋:「OK!ビジュアル重視な展示構成にして、“数的美”のアート化とかやってみる?」


日下(顧問):「三年生は、講演会形式でもいいんじゃない?

『数学と私』みたいな。最後に言葉を残していくって、ありだと思うよ」


みんなの視線が自然と、凪に向いた。


凪:「……わたし?」


火曜日・ひとりきりの校舎で

放課後、人気のない廊下を歩きながら、凪は思う。


「“数学と私”って、まだ言葉にならない。

わたしにとって数学は、“表現するもの”じゃなくて、“沈黙のなかで考えるもの”だった」


でも、そんな“私の数学”が、誰かに何かを残せるのなら――


水曜日・紅葉との対話

紅葉:「凪は、“数学を人に伝えたい”って思う?」


凪:「……少しは、思うようになってきた。

でもそれって、“人にわかってもらうための言葉”ってことでしょう?

わたしには、まだ難しくて……」


紅葉:「わたしはね、“誰かの未来のための数学”って信じたいんだ。

いま伝わらなくても、五年後、十年後に“あのときの言葉が残ってた”って思ってもらえたら、

それで、すごく素敵だと思う」


凪:「未来の……わたし自身にも、届くかな」


金曜日・黒板に残した一行

放課後、部室の黒板に、凪はそっとチョークを走らせる。


「問いが残っていれば、考える人は生きている。」


その言葉の下に、静かに“凪”の署名。


数学部ノート(凪)

■高校三年生・第9週

・文化祭テーマ「見せる数学」に向き合う週

・“数学=沈黙の中での思索”だった凪にとって、“語ること”は新しい挑戦

・凪:「問いを残すことが、“伝える”ことかもしれない」

→ 数学が“個人的な営み”から、“未来へ残る灯”になる

「わたしと数学」の関係が、他者との関係へと拡がりはじめる



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ