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“数式の外に出ても、消えないもの”──中間テストと日常の境界線

月曜日・中間テスト1週間前

昼休み、いつもの数学部部室は、ひっそりと静まり返っていた。


高橋:「さすがに今週は、自習メインか。テスト近いしな」


紅葉:「そうだね。数学B、地味に今回範囲広いし……」


凪もまた、プリントを広げて机に向かっていたが、心の中は少しだけ“数学”から離れつつあった。


「勉強って、すごく“正しいこと”をやってるはずなのに、

数学を考えてるときのような“息の通った感覚”がない」


火曜日・日下との“数学じゃない”会話

部室にふらりと日下先輩が現れた。

手には缶コーヒーと、数学と関係なさそうな詩集。


凪:「……先輩、今週、テスト前ですよ?」


日下:「ああ。“考えごと”しに来ただけ。ほら、テストって、思考じゃなくて“訓練”だろ?

でも数学って、そもそも“息をすること”みたいなもんだから」


凪:「“息”……ですか?」


日下:「うん。問題がなくても、証明がなくても、気づいたら考えちゃってる。

それって、好きってことなんだよ。苦しくても、やめられない。

だから、日常のなかに数学はある。中間テストにはなくても、君のなかにはちゃんとあるよ」


水曜日・下校途中のひらめき

凪は学校帰り、線路沿いを歩きながら、ふと気づいた。


「“時間の進み方”って、等速じゃない。

人間の感情や、気づきの瞬間で、加速も減速もする……。

それを関数で表せたら、感情のモデルって作れるのかもしれない……」


まるで誰かが問いかけたように、凪のなかにひとつの式が浮かぶ。


t(感情) = α・exp(−|x−μ|)


凪:「……って、何考えてるの、わたし。

でも、こういう“無意味に見える考え”が、数学に近い気がする」


金曜日・試験前日

周囲の緊張感とは裏腹に、凪の心はすこし穏やかだった。


数学が“問題を解くこと”だけではなく、

“問いが立ち上がる感覚”そのものとともにあると、少しだけ思えたから。


「テストでは測れないこと。

でも、わたしが大事にしてること。

それはきっと、“数式の外”にしか現れない」


数学部ノート(凪)

■高校三年生・第7週

・中間テスト=“測られる数学”と“生きている数学”の差

・“数学=好き=考え続けること”という視点が凪の中で根づき始める

・凪:「試験が終われば数学が戻ってくるんじゃない。

わたしの中には、ずっといた」

→ テスト期間中の空白のような一週間が、

むしろ“見えない数学”の存在を際立たせた

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