表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/26

第8話 カイナス王子とデート 後編

3/14 第5話の最後から大幅改稿しております。ですので以前の第8話とは全く違う話になっております。

 暫くするとカイナス王子は、馬から降りてこちらにきた。


「とてもかっこよかったです。見ていて楽しかったですよ」


「そっ、そうか」


 カイナス王子は照れて頭を掻いている。


「そっ、そうだ。お腹空かないか?この辺りに美味しいという噂の店があるんだ。行こう‼︎」


「えっ、あの……」


 カイナス王子は私の返事を待たずして、手を引いて歩き出した。

 着いた先はお庭が綺麗なカフェだ。しかし、お店の周りには人集りが出来ている。


「申し訳ございません、只今満席でして。二時間待ちとなっております」


「二時間⁈」


 カイナス王子は驚いた。周りの人を見渡すと並んでいる人たちは貴族ではない。私たちの格好を見てひそひそと話している。

 そうよね。貴族の者がお店に並んで入るとか聞いたことないし、こういったカジュアルなお店に来る場合、このような服装では浮いてしまうわよね。まあ、行く人がいるか分からないけど。くるとしてもお忍びだろうし。


「カイナス王子、一旦ここを離れましょう。私たちがここにいてはお店にご迷惑ですし」


「あっ、ああ……」


 私たちは馬車に側まで戻った。私は芝生に持たされた敷物を敷く。そして座った。


「カイナス王子も早く座ってください」


「ああ……。しかしこれは…?」


 私はバスケットの蓋を開け、カイナス王子に差し出した。


「メイドがお弁当を持たせてくれたんです。一緒に食べましょう」


「そうだったのか⁈それはすまないことをした」


「いえ、気にしなくて大丈夫ですよ」


「しかし……。オレはまた一人で突っ走ってしまったな。アデルリアが昼食を持ってきている旨を伝える隙もなく連れて行き、満席で入れず。しかも皆町の者のような格好をしており、オレたちは浮いていた。アデルリアに恥ずかしい思いまでさせてしまい、すまない。オレは世間の事を全然知らないようだな」


「でも、人気のお店に私を連れて行きたかったんですよね。そのお気持ちだけで嬉しいです」


「優しいな、アデルリアは。美味しそうだな。いただいても良いだろうか?」


「はい♪」


「では、いただきます。……‼︎すごく美味しいな」


「本当ですね。料理長が作ってくださったんですよ。ふふっ、リューン王子はいい料理長を雇用していますね」


「本当だな」


「そういえば、私たちこうやってデートするのは初めてですね」


「そういえば、そうだな。一年婚約者だったのにな」


「そうですね。あの頃の私はカイナス王子にデートに誘われないのが悲しかったです」


「そうなのか⁈」


「そりゃそうですよ。年頃の娘が婚約者にデートに誘われないなんて。皆デートしているのに」


「そうだったのか……。オレはアデルリアとは王宮で時折一緒にお茶が出来て満足していた。デートとかした事がなかったから、その……そういう発想に至らなかった」


「でも、学園に入学してからはリアとデートしてましたよね」


「ごっ、誤解だ‼︎オレは友人として買い物に付き合って欲しいと頼まれてだな……‼︎」


 でも周りはそれをデートと捉えてましたよ、カイナス王子。

 リアとの事は、先日誤解だと打ち明けられたが、やはり色々あったので、ついチクリと言ってしまった。

 あの時の私は婚約者である私とじゃなくて、リアと出かけていたことに腹を立ててた。でも、「私とも出かけて欲しいです」と言う勇気がなかった。断られたら、婚約自体がなくなりそうで怖かったのだ。

 婚約者。その立場が唯一私が優っていた点だからだ。それを失うのが怖かった。


 今思えば、なんでそんなにしがみついていたんだろうと思う。公爵令嬢として未来の王妃の座を失いたくなかったから?それともカイナス王子を取られたくなかったから?


 ……これ以上ここで考えるのはよそう。今はデート中だ。今の私で、今の彼を見よう。



 お昼ご飯を食べ終わり片付けをしていた私は、カイナス王子にお願いをした。


「あの……。一つ行きたい場所があるのですが」


「?」


 私はカイナス王子を連れて先程の動物がいる場所へと行った。今度は馬ではなく小動物のいる方へ。


「きゃーー可愛いーー‼︎」


 私はテンション高くはしゃいだ。可愛い可愛い。もふもふもふもふ。ああ、気持ちいい。

 私は、小動物を抱っこし、思う存分もふもふを堪能した。

 ふとカイナス王子を見ると、こちらをじっと見ている。なっ、何かおかしかったかしら?

 はっ⁈もしかして公爵令嬢はもふらないのかしら⁈


「ふっ」


 カイナス王子は肩を震わせ笑っている。


「あっ、あの……」


「いや……。すまない。普段と違う一面にビックリしてしまい……」


 ああ、やはり公爵令嬢はもふらないのか。確かに記憶ではそんな事した覚えがないが。そもそも記憶では小動物と触れ合う機会がなかった。だから小動物と触れ合えば皆こうなると思い込んでしまったのだ。

 こんなに可愛いのに。もふらないなんて勿体ない‼︎


「だが、とても良い」


「へっ?」


 カイナス王子から意外な言葉が出てきた。


「アデルリアは可愛いな」


「〜〜〜〜〜っ‼︎」


 さらっと言われて私は赤面した。いや、可愛いのはこの小動物たちの方ですよ‼︎私は耳まで真っ赤にしながら心の中で叫んだ。


 小動物を堪能していると、あたりはオレンジ色に染まってきた。


「そろそろ帰らないと行けないな」


「そう……ですね」


 思いの外楽しく、まだ帰りたくないと私は思ってしまった。


「……もう少し、いいか?」


「え?」


 カイナス王子に言われて連れてこられたのは、先程の馬がいるところだった。


「カイナス王子……えっ、ええーー‼︎」


 気がつくと私はカイナス王子に持ち上げられ、馬に乗せられた。そしてヒョイっとその後ろに王子は乗った。


「これならスカートでも、初心者でも乗れるだろう?」


 私は怖くて目を瞑りカイナス王子にしがみついた。


「ゆっくり目を開けてごらん」


 私は言われた通り、ゆっくり目を開けてみた。


「わあっ、凄い」


 どこまでも広がる平原、緑の芝生を染め上げるオレンジ色の夕焼け空。風が吹き抜けて気持ちいい。いつもより目線が高く、見るもの全てが新鮮だ。馬の上からの景色がこんなにも良いとは思ってもみなかった。


「ありがとうございます。とっても素敵な景色です。怖がって乗れなかったのが勿体ないくらいに」


「そうか」


「でも、やっぱり一人では乗れないですね。スカートですし、ちょっと怖いですし」


「落ちないようにオレが支えているから大丈夫だぞ」


「はい。ちゃんと支えていてくださいね」


「ああ」


 こうして私たちは、ゆっくりと少しだけ馬を走らせてから帰路に着いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ