第7話 カイナス王子とデート 前編
3/14 第5話の最後から大幅改稿しました。ですので以前の第7話とは全く違う話になります。
翌日、今日はカイナス王子とデートの日だ。私は朝から忙しかった。
「アデルリア様、次はお顔のお手入れですよ」
私はこのメイドのサーニャさんにデート用に全身のお手入れをされていた。先程は沐浴するよう言われて入ってきた。
私付きのメイドは自国からは連れてこなかった。あんな事があり、正直自国の者は誰も信用できない。なのでリューン王子に私付きのメイドを用意してもらった。
このサーニャさんは明瞭快活でずばずばモノを言う。少しお節介なところもあるが。
だが、そういう人は嫌いではない。
昨日サーニャさんに、カイナス王子とリューン王子とデートする事になった話をしたら、朝から大忙しになってしまった。少しでも綺麗に思われるために、時間がある時は女の人はデートの前に色々準備が必要だと。そう力説された。
「個人的にはリューン王子と結ばれると嬉しいですが、それよりアデルリア様の気持ちを応援致します。なので、カイナス王子とのデートもちゃんと綺麗にしていかないとですね♪」
「あの、皆こんなことやってるんですか?」
私は今までデートをした事がないので、よく分からない。女の子と恋愛トークとかした事がない。今世も、前世も。
「んー。やっている内容は個人差はありますが、皆、デートの前に気合を入れて身なりを整えますよ」
そう言われて私は顔のフェイシャルマッサージを受けた。ああ、なんか気持ちよくて眠ってしまいそう……。
「……………様。アデルリア様」
「えっ⁈」
「お眠りになっていたんですね。もうお顔のお支度は終わりましたよ。次は髪ですね」
―どうやら気持ち良すぎて寝てしまったようだ。鏡を見ると綺麗に化粧されている。私は起き上がり髪を梳いてもらった。
自分で言うのもなんだが、綺麗な顔がますます綺麗になった。聖女の時は薬草取りに行ってモンスターと戦ったりとか色々してたから、見た目に無頓着でお手入れなんてしていなかった。肌は傷が絶えなかったし、髪もボサボサだったりした。
大聖女様によくもう少し身なりをと注意されたりもしたな。
こんな女子力の低い私が蝶よ花よと育てられた侯爵令嬢になった。まあ、学園での評判で途中で家族にも呆れられしまうけど。
公爵令嬢は泥まみれにならないし、傷だらけにもならない。日焼けもしない。手入れが行き届いていてすべすべの肌だ。
正直普段のままでも十分綺麗だと思ってしまう。
髪を梳いてもらって綺麗にまとめられていく。そういえば昔も誰かによく髪を梳いてもらったような気がするな。
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「ったく、こんなにボサボサにして。一応女なんだから髪くらいちゃんと梳けよ」
「だって、モンスターと連日戦っていたんだもん。しょうがないじゃない」
「そう言っていつも風呂入って適当に乾かすだけじゃなんじゃないか?折角綺麗な髪なんだから手入れしないと痛むぞ」
「うぐっ……」
「……しょうがないな。オレが毎日おまえの髪を梳いてやるよ。本当は風呂上がりと朝梳くのがいいんだが、一日一回は梳けばマシにはなるだろ」
「ふふっ、ありがとう。ーーー」
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今のは一体……。銀色の髪に水色と黄色のオッドアイ。あれはまさしく前世の私だ。でも、今の出来事は覚えていない。相手も誰だか分からない。というか相手は今の映像後ろ姿しか出てこなかったから余計に分からない。
私より幼い感じで、濃紺の髪……。記憶の中にはいないわそんな人。私は前世の記憶を全て思い出したわけではないのかもしれないわね。
「アデルリア様。用意が整いましたよ」
「ありがとう」
私は立ち上がり、姿鏡の前へ行く。スカートの裾をもち、左右にくるくる動いてみる。可愛い。全身のコーディネートが凄い。容姿と服装、そして髪型が上手くマッチしている。
清楚で落ち着いている首元の詰まった焦げ茶のドレスからはフリルの付いた襟と袖をのぞかせている。髪は片方にお団子を作り髪の先は少し巻いている。お団子に巻かれたリボンはフリルとお揃いの生成色だ。
服も髪飾りもピンクの髪ととても合う。
「ミーニャ、凄いわね。すごく素敵よ」
「喜んでいただけて何よりです。ではこれをお持ちください」
「これは?」
私は差し出されたバスケットを手に取った。
「昼食用のサンドイッチが入っています。料理長に先程作っていただきました。よかったらお召し上がりください」
「ありがとう」
私はバスケットを持って玄関まで行った。階段を降り、玄関に行くとカイナス王子が待っていた。
「ごめんなさい。お待たせしてしまいまして」
「いや、ちょうど来たところだよ」
私はホッとした。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
私たちは馬車に乗り、目的地へと出発した。因みに私はどこに行くのか知らない。先程聞いたら、着いてからのお楽しみと言われた。
カイナス王子を見ると、なんだかそわそわしている。どうしたのだろうか?
「カイナス王子。どうかなさいましたか?」
「えっ、あっ……いや。その……」
なんとも歯切れの悪い物言いだ。どうしたというのだ。
「凄く……凄く綺麗だよ。あっ、勿論いつも綺麗だが、今日は一段と綺麗だ」
「あっ、ありがとうございます」
私たちは気恥ずかしくなりお互い俯いている。早速オシャレの効果があるとは。こういうことなのね。皆、相手にそう思ってもらいたくてオシャレするのね。確かに準備は重要だわ。流石ミーニャさん。勉強になります。
恥ずかしがっていると、馬車が止まった。どうやら目的地に着いたようだ。大分長い間乗っていた気がするが、どこまで来たのだろう。
カイナス王子は馬車を降り、私に手を差し出す。私はその手を取り、馬車を降りた。
「わあっ‼︎」
目の前には広大な平原が広がっている。一部には柵があり、その中に動物たちが沢山いる。馬など大きな動物もいれば、うさぎなど小さな動物がいるエリアもある。
「ここでは乗馬も出来るんだ。オレは乗馬が趣味なんだ。良かったら一緒に乗馬をしてみないか?並んで一緒に走るのは気持ち良いぞ」
「えっ?」
乗馬って……、あの大きな馬に乗るんですか⁈いやいやいや。乗ったことないのに無理ですよ。それに私、スカート……。
私が困惑しているとカイナス王子は、私の手を取り乗馬コーナーへと連れて行った。
うううっ……。大きい。私は馬を目の前にしてビビっていた。こんなのに乗れるわけがない‼︎
カイナス王子を見ると既に違う馬に乗っていた。
「アデルリアも、早く乗ってみるといい」
私は意を決してカイナス王子に言った。
「カイナス王子‼︎あの、私馬に乗ったことがなくて……怖いんです。それにスタートですし……」
するとカイナス王子の顔は青ざめた。
「すまない、アデルリア。オレが乗馬が好きだからつい、押し付けてしまった。本当にすまない。よく考えれば女性で馬に乗る人は稀だな。失念していたよ。オレはデートをした事がなくてどこに連れて行けば良いか全然分からなかった。だから、自分の好きなことを共有出来たらなと思って……。女性と男は違うのに、そこまで考えが及ばなかった」
カイナス王子は必死で謝った。カイナス王子はデートしたことがないのか。知らなかった。でも、一生懸命考えて、自分の好きなものを見せようとしてくれたことはとても嬉しかった。
「いえ。そんなに謝らなくて大丈夫ですよ。私、カイナス王子が乗馬しているところを見てみたいです。あちらで見てても良いでしょうか?」
「勿論オレは構わないが…。アデルリアはそれで良いのか?」
「はい、見たいんです」
私はそう言い、柵の外でカイナス王子の乗馬を見た。乗馬が好きだと言っていたカイナス王子は優雅に馬を乗りこなしていた。その顔は本当に楽しそうで、好きなのがひしひしと伝わってくる。
私は見ていて楽しかった。ちょっと乗ってみたいかもと思った。……ちょっとだけね。




