第12話 パーティー
夕刻となり、パーティー開始の時間となった。
私はと言うと、二人ともどちらがエスコートするかなかなか決着がつかずにいた。
決まらないまま会場近くに行くと、リューン王子に女性達が群がり近づけなくなったので、私はカイナス王子にエスコートしてもらう事になった。
「いや〜、リューン王子の人気があそこまでとは。驚いたな」
「そうですね。女性の人だかりがあっと言う間に出来ましたからね」
「アデルリア。その……オレで良かったか?」
「えっ?」
「最近リューン王子との仲が深まっている気がしたから、オレで良かったのかなって……」
「カイナス王子……。大丈夫ですよ。私にとってカイナス王子も大切な方ですから、エスコートしていただけて嬉しいです」
「そっ、そうか。なら良かったよ」
私はカイナス王子の手を取り、会場へと入っていった。
「わあっ、流石王都に次いで栄えている都なだけあって、パーティーも盛況ですね」
「そうだな。ここは色んな国との窓口になる場所だからな」
フロアでは曲に合わせて踊っている人たちがいる。
カイナス王子は私と向かい合い一礼する。
「アデルリア嬢、私と一曲踊っていただけませんでしょうか」
「はい」
カイナス王子が改まった物言いをするので、なんだかくすぐったかったが、私はその手を取り、一緒に踊った。
よく考えれば、前世の私は踊った記憶がない。だがこの体が、アデルリア=ウェルメール公爵令嬢として生きてきたこの体が覚えている。
頭で考えようとせず、曲に耳を傾けて体を預ける。そうすれば踊れた。
良かった。公爵令嬢が踊れないなんて恥だものね。
「なあ、アデルリア」
「はい?……っ‼︎」
私は話しかけられ頭が一瞬パニックになった。ヤバイ、意識すればするほど分からなくなる。考えちゃダメだと分かっているのに、頭は考えてしまう。次はどっちの足を動かすの⁈
ギュム
ダンスには似つかわしくない音が鳴った。
私は、カイナス王子の足を踏んでしまったのだ。
「ごっ、ごめんなさい。カイナス王子‼︎」
「だっ、大丈夫だよ。しかし珍しいこともあるんだな。アデルリアがダンスで足を踏むなんて」
それは私は踊ったことがないからなんですよ。私たちは仕切り直して踊り直した。
考えない考えない。そうだ目を瞑ろう。体のなすままに動こう。
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「痛っ‼︎……お前今、おもいっきり踏んだな」
「ごっ、ごめんなさい。……そんなに痛かった?」
まただ。私の頭の中に前世の記憶が流れ込む。
前世の私は、誰かとダンスをしている。踊っている相手は、前にも出てきた濃紺の長い髪の男性だ。顔は朧気でよく分からない。
濃紺の髪の男は足を踏まれて痛がっている。
「聖女様がダンスも踊れないとは」
「むっ、聖女は貴族じゃないのよ。そんな踊る機会ないわよ」
「そうか?あの大聖女様は踊れるらしいじゃないか」
「……よく知ってるわね」
「昔、勇者が魔王を討伐した凱旋パーティーで、踊ったって噂を聞いたことがあってな」
「そうみたいね。確かに大聖女様は国のお偉い方とお会いする機会も多いしね。そういう機会があるからダンスは必要かもしれないけど、私には必要ないわよ」
「そおか?あの大聖女様はお前を気に入っているからな。その内そういった機会も……」
「もう、そんな機会はないわよ。私はここにいるんだから」
私は彼の手を取り、目を見つめた。
「……そうだな。なあ、後悔しているか?ここに連れてこられたこと」
彼は私の銀色の髪を撫でながら問うてくる。
「ううん、してないよ。私はあなたと一緒にいたいだけだから。だから、場所はどこでも構わないわ」
彼は私をギュッと抱きしめた。
「ーーーーー」
「?なに?」
「じゃあ、オレの為に練習するのはどうだ?オレがお前と踊りたいんだ」
彼は少し体を離して私の顎に手を添える。その目はどこか熱を帯びている。
「……そんな顔するなんてずるい。断れないじゃない。……なら、この先何回も足踏まれるのは覚悟してよね」
「ああ。好きなだけ踏めばいい。お前の下手くそな踊りも、これから成長するかもしれない踊りも、全てオレだけのものだ」
彼は私にそっと口づけをした。
そして二人は何度も何度も踊った。何回足を踏まれたか分からないくらい踊り続けた。
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