【第四章 交差】Ⅶ 和解と自覚
高梨宅
高梨さんに連れられて、お家まで来た
高梨さんの部屋は整っていて
神崎くんの部屋に少し似ている
流石に神崎くんみたいなパソコンデスクまでは無いけど
勉強机にノートパソコンが畳まれて置かれている
「座って。」
クッションに座る
向かいに高梨さんも座る
ご丁寧にお茶まで用意してくれた
「本当はテキトーにあしらって帰すつもりだったけど、アンタの反応を面白がってたらあんなおっきい声で校則違反を自白するんだもん笑」
「誰も聞いてなくて良かった、、、」
「少しアタシの話をするね。」
「高梨さんの話?」
「そ。颯とバカップルやってた時と、別れた後の話。」
「バカップル、、、笑」
「何笑ってんのよ。」
「言葉で聞くと、なんか滑稽で。」
「それ、失礼。」
「すみませんでした。」
「で、アタシが颯と付き合いだしたのは1年の4月。入学して2週間も経ってなかったなぁ。」
そんなに早かったんだ
「クラスは違ったけど、体験入部で一緒になってさ。他に1年はいなかったから、初日からよく話したわ。それから1週間くらい毎日、体入が無い日も一緒に帰ってさ。そのまますぐにお互いに告白して付き合った。」
「今思えば、颯もアタシも、中学生の時できなかったことを求めてたんだよね。ほら、ウイルスがあったじゃん? あれ。」
パンデミック、あったなぁ
「それからはさ、学校では一緒にいないようにして、学校の無い日は一緒にどっか出かけたり、家行って遊んだりさ。」
智也と付き合いたての時もそうだったな
「2か月目の記念日には初めてエッチもして、その後もたまにね。」
神崎くんも言ってた
心が苦しい
やっぱり私は神崎くんの事、好きなのかな
「ほんっとうに幸せだった。夏休みなんか颯の家にいることの方が多かったくらい。結局お互い部活も入らなかったしね。」
「でもあの日、そんな日常は壊れちゃった。」
「悲しかった。涙止めたくても無理だった。颯とは3日間ずっと泣き合ってた。でも颯はそこで別れたいって言って。駄々はこねたけど無理で。自分の家で泣いた。1か月も学校休んで。あ、休んでたのはアンタも知ってるか。」
知ってる
大きい病気だと思ってた
「1か月経っても颯のことが忘れられなくて。でも、颯には吹っ切れたって嘘までついた。颯に余計な心配かけたくなかった。」
強い子だ
強い子なんだ、高梨さんは
「その後はまぁ、いつも通りにしようと頑張った。時間って残酷だよね。気付いたら颯への気持ちも薄れていった。今はもう、アタシから復縁しようなんて思ってない。颯から頼まれたらするけど。昔の気持ちも思い出すだろうし。」
復縁か
神崎くんの本心はどうなんだろう
「相馬を恨んだのも、颯とアタシの為。恨んでないと、あの時のアタシ達に顔向けができないと思った。本当は分かってたんだけどね、悪いのは颯とアタシって。」
悪いのは自分たち
神崎くんも言ってたなぁ
「恨みはするけど、でも何もする気はなかった。アンタと相馬が学校の外で会ってるのを見るまでは。」
たしか、3月だっけ
「ホントにムカついた。颯をアタシを引き裂いておいて自分は隠れて彼女作って。だから壊そうと思った。そこからは自分でも気持ちは抑えられなかった。相馬の後をつけて、証拠になりそうだったら写真撮って、学祭前なんて毎日、土日も追っかけてた。」
あの日、高梨さんの携帯に入ってた写真には9月のものもあった
全然気付かなかった
多分、智也も気付いてなかった
「学園祭の1週間前には充分集まりきってたから、そこからは大人しくしてた。颯にもアタシの行動はバレてたし。当然止められた。でもアタシは止まらなかった。なんだかんだ颯は喜んでくれるって思い込んでた。冷静じゃなかった。冷静じゃいられなかった。」
きっと、冷静だったら止まってたんだろうな
神崎くんも釘を刺してくれてた
でも止まらなかった
私が高梨さんと同じ立場だったら、やっぱり止まらなかったと思う
だから私は高梨さんを責められない
「生徒会室でのことは、まぁ見た通り。颯も来るだろうって思ってたし、止められて、アタシの目的は果たされないって、やる前からも何となく思ってた。でも、許せなかった。同じ学校にいる間に相馬が彼女と幸せに過ごすなんて。なんで今なのって、卒業まで待てなかったの?って思った。」
それはそう
智也は『卒業まで離れてくれると助かる』とまで言ったんだから
高梨さんはそれも聞いてる
「でもさ、アタシ、颯に止められてよかったって、今は思ってる。昔好きだった人に、同じ涙を流した人に、同じ苦しみを味わった人にさ。もしかしたら、心のどっかで颯に止めてほしいって思ってたのかもね。」
「で、アンタはこの話を聞いてどう思う? アタシを責める? アンタから話したいって言われた時、罵られる覚悟はしてきたよ?」
絶対にそんなことはできない
「責められないよ。そんなことできないよ。1年生の時の2人と同じことをして、下手したら同じことになってたかもしれない。責める資格なんてないよ、、、」
「そっか。」
「そうだよ。」
高梨さんは、あの後のことを話し始めた
「あの後、颯はアタシの家で、ずっと一緒にいてくれた。なんにもせず、ただ泣いてるアタシの傍にいてくれた。ちょっとだけ昔の颯に戻ったみたいだった。」
神崎くんは、あの生徒会室で、高梨さんをやっと守れた。やっと救えたんだ。
涙が出そうになったけど、次の言葉で引っ込んだ。
「で、次。アンタが颯に惚れてるって話だけど。」
出かかった涙を返して欲しい
「惚れてないってば。智也がいるんだから。」
「いーや、アンタは惚れてる。」
「だからどうして。」
「あの時、生徒会室を出る時にちょっと振り返ってアンタらを見たの。」
「相馬は苦しい顔をしてたわ。ちょっとスカっとした。」
そんな顔してたんだ、智也
「で、アンタ。アンタは颯をまっすぐ見つめてた。あんな場面の後なら怯えて彼氏に抱きついてたり、何だったら緊張から解放されて泣き出してたって不思議じゃない。」
「私が、神崎くんを、、、?」
「そう。あの視線と、さっきの会話で確信したわ。」
「そんな、そんなことは、、、」
「ある。自覚してないだけ。」
「そ、そうやってテキトーなこと言って智也と別れさせようとしてるんでしょ? 智也がダメなら今度は私? その賢さはもっと他に使った方が良いんじゃないかな!?」
「じゃあ聞くけど、颯と相馬。どっちといる方が楽しいのよ?」
「それは当然、」
智也
そう言いたかったのに、なぜか言葉が出ない
「言い切れないじゃない、どっちかって。」
そうだ
智也といるときは勿論楽しい
でも神崎くんいるときも楽しいのは間違いなく事実
「神崎くんとは、言われたから家に行って話してただけで、別に好きとかじゃ、」
まただ
言葉が出ない
胸が痛い
「言い切るのが怖いんだ? 颯は好きじゃないって。」
怖い
そう、怖い
言いかけた時、自分を否定するような気持ちに襲われた
「でも、相馬が好きなのもホント。相馬と別れて颯と付き合う所までは想像してない。」
高梨さんは私の心を音読するように言った
「それでいいんじゃない? そうやって悩めばいいんじゃない?」
「悩む、、、」
「どっちも好きなんでしょ、今は。いつか答えは出さないとダメだけど。でも、アタシにはもう答えは分かってるかもね、、、?」
神崎くんのようなことを言ってる
言ってたな、バレた日に。『僕はもう答えを持ってる』なんて
「自覚して、受け入れてみなよ。颯への気持ち。あ、アタシは颯に手を出す気はないから安心して。」
「神崎くんへの気持ち、、、」
神崎くんが、好き
私は、神崎くんが好き
その後は気付いたらガールズトークに花が咲いていた
外が暗くなってきた頃、私は「友達」の家を出た
第四章、これにて終了です。
次章は最終章となります。
更新日は未定ですが、1か月以内に再開したいと考えています。
お待ちいただけますと幸いです。




