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彷徨う孤独

 窓の外に月が浮かんでいた。俺はカーテンを閉めた。また同じ一日だ。別に今起きた訳ではない。だが、今日という日をただ思い出していた。無駄なことは何もない、か。そんなこと言えたら良かったのにな。一人で生きている訳ではないが、俺に何か大切にできるものがあっただろうか? そんなものはない。

 机に向かっていた。勉強しないといけない。焦りに動かされているつもりはないが、何か物語を始めなければいけない気がしていた。俺の人生はつまらない。そういう命題が証明されようとしていた。俺の人生とはなんだったのか。まだ始まったばかりじゃないか。

 だがそんなものは既に終わっていた。次にしなければいけないことは寝ることだろうか。まあ良い、今日は歴史について考える。宇宙はいつ始まったというのだろう。神様が六日間で創造したのか、ビッグバンの大爆発で今の今まで続いているのか、不動の動者と言ったのはアリストテレスだったかな。

 そうやって見上げていた。天井である。日本の一日は平和でした。でもどこかで事件は起こっているし、それほどでもないのが現状だった。俺は何か偉くなりたい訳ではないが、生まれてきた以上一矢報いたい思いがあった。誰かと誰かの繋がりが全てを変えていく、そんなドラマにでも憧れているような。

 それはそうと、もう何もすることなんてないんだった。この世界はイエス・キリストの物語で、ヒストリーはhis storyから来ているんだとか、ミニストリーはその弟子の小さな物語か。まあそんなことはどうでも良い。俺は別に何かを信じるとか信じないとかそういう次元じゃない。ただあるというのを見ているだけなのだ。

 俺がこの世界にどんな圧力をかけていけばいいのかを考えていた。学校やそれ以外のところで出会う人々との関係か、まあ別に俺はこの世界の人間が全て滅びれば良いと思っている。俺の呪いに打ち勝てる者だけが生き残れば良い。それだけのことだった。

 ああ、辛いです。神様、俺のことを忘れないでください。それが俺なりの叫びだったと言えるだろうか。俺は異世界転生せずに日本にいながら何か誰かを感動させる物語を作りたくて止まなかった。だが、そんなことができるほど才能がある訳でも、努力できる訳でも、運に恵まれている訳でもない。だから何かの虚構の中に生きていたかっただけだ。

 アニメはまあまあ面白いことがある。だがそんなものを見ていても、所詮空しくなるだけだった。まあ多少気はまぎれるからいいのだが、本当にやりたいことは、俺と世界の交わりだった。それは俺と人間の衝突だったのかもしれないが、劇場版のように二時間で終われるほどこの世界は構造に満ちていない。

 そうなのだ。ただ言えることといえば、この世界はつまらないのだ。つまらない中で面白いことを探しているのだ。だがそれも永遠には続かない。永遠なんてあるのかも分からない。ただ俺が変わりゆく物語の中で、生きるか死ぬかの戦いを極めたいだけだった。だから俺は妄想の世界を生き抜いていく。

 それは明らかに冗談だった。まあ良いのだ。俺は異世界に行きたい。異世界で人生をやり直したい。いや、そう言い得るのは三十四歳の無職童貞くらい魔法使いになったらだろうか。まあなれるがね、もっと楽観的かもしれない。俺はまだやれるっていつまでも思い続けてやるよ。勉強しなきゃな。

 俺の本能が叫び続けていた。このままではあまり良くならないと、だが物語を進めなければならないと、だから外を出歩くことにした。階段を降りて、リビングに行く、冷蔵庫を開く。そこにあった牛乳を摂る。美味い。それだけだ。だからどうした。それが人生というものだろう。そう自分に言い聞かせた。

 生きているのがやっとなこの人生、歌でも作って変えてやるか、という気分にもなるのだが、どうもそうはいかない模様だった。だから歩き出すことにする。人間不可能を可能にできるはずだった。それは神の成せる業だったか。俺も神を信じたいんだけどな。神は唯一だとは思うが、この世界を見捨てているかもしれない。

 ニートになれるほど幸福でも不幸でもなかったはずだが、同時に働けという内的な動機づけに押されていくのを感じる。大概この世界の物語とはなんなのか。生きることなのか、死ぬことなのか、イエス・キリストはあなたの罪のために死んだというぞ。だからなんだとも言いたいのだが、俺は何から贖われるべきだったか。

 世界に出ていく旅に自分の身を委ねたかった。だったら職業は冒険者かな。小説家になろうで読み切ったのは何年か前に総合ランキング1位のやつだったよ。面白かったがね、だが同時に虚しくもなる。俺とは何も関係ない。ただ俺はそれを見ているだけ、そこに投影するのは万能感に浸りたかったからかね。

 俺は廊下を歩いて、外に出た。道路を歩く。街灯を右手に、左手にとにかく進んでいく。物語になれば良いのだがね、何らかの底に落ちてしまわないか。何も起こらないと知りながら、ただ夜が更けていくのを待っていた。その都度新しい響きがやってきては消えるだけかもしれんね。とにかく生きるだけで精一杯なんだ。俺の叫びを聞いてくれ。これだけの言葉が湧いてくるんだ、誰かの心に引っかかっても良いだろう。

 だから虚構なんてことにはしたくないのさ。真実の中に揺れる何か大切な煌めきを永遠に閉じ込めていたくて、俺は永遠なんて知らなかった。この瞬間に止まるのも苦痛だった。一切皆苦ですか。釈迦の主張はどれほど正しいものかね。そもそも奴が悟ったかどうかの信頼性にも挑戦したいのだが。

 ある動画で言っていたよ。あらゆる色眼鏡が外れたのが釈迦だった。ボールペンと母親の大切さを選べないんだって。俺はそういう人間には絶対なりたくないね。母親の方が大切に決まっている。せめてお母さんには生きてほしい、幸せであってほしいと心の片隅にも思えないような人間にはなりたくないね。

 だが聖書とお母さんだったら聖書を選ぶ人間もいるかもしれないなと思ったりもする。俺はどっちだ。まあ、聖書はそんなに好きではない。面白くないから。事実だと思えることも多いが、同時に本当である必要もないと思えることも出てくる。まあ対立しようという訳ではない。ただ本当のことは知らされていないかもしれない。

 目の前に空が広がっていた。いや、正確にいうと、ビルが両サイドに並んでいて、俺は歩道橋の上にいたのだ。そこから飛び降りてしまえよとも思うが、死ねないし、死んだところで何にもならない。自分を傷つけて喜んでいられるほどマゾヒストでもないし、ヒステリーを引き起こしているつもりもない。

 命からがら抜け出してきた先で誰と出会うというのか、誰にも出会えないだろう。まあ良い。俺は歩くのだ。歩いて何かを見つけ出すのだ。そういう気分に陥っていた。生きているということはどれほど素晴らしいのだろう。矛盾を抱えているだけではないか、そう思って、コンビニの中に入っていく。中に店員がいた。トイレは使えないみたい。

 ここでこいつを殺してやれば何か進むかな。いやそんなことは起こらない。ただ膠着状態に陥るのだ。懲役でいえば10年は降らないかな。そうやって自分を抑圧することに嫌気が差すことを学ぶのだろう。とにかく働けばどうにかなる世界なのだとは知っているが、いやそうなのか? まあランクはあるかもしれないが、働かなければ幸せには中々なれないのかもしれない。

 俺だって幸せになりたかったよ。勉強なんてしたくなかったよ。本音が出ちまったな。おにぎりを取る。それを盗む訳でもなく、レジに持っていって、お金を払う。袋に入れるかどうかも聞かれずに、お釣りを渡された。数十円、俺の価値もこんなものかな。いやプライスレスだと信じろと誰かが言った。

 そういうことに騙されるような人間ではないのだが、まあ生きているだけでも楽しいと言える人になりたかったな。何かをしているのに報われないという思いに駆られて逃げ出すだけの人生。なんと情けないのだろう。俺は変わりたいのか変わりたくないのか、ありのままでも良いと言ってほしかったに違いない。

 夜は更けていく。会話がしたいような、孤独のままでいいような。俺は永遠孤独スキームの中に閉じ込められているのかもしれない。南米から宣教に来る若い女の子と友達になりたかったよ。まあいいさ、そういう冗談も出てくるし、あわよくば付き合えるかもしれない。だがそうもうまくはいかんのだ。残念。

 俺は魔法を使いたかった。一般攻撃魔法という概念が好きだった。それで誰かを殺し、誰かを守る。救うということが何か考えたかった。神の怒りからの解放だというのがキリスト教なのだが、悪を滅ぼしたいと願うのも悪くはないだろう。善悪の判断を手前にさせてくれという感じだ。

 地獄という概念は仏教にもあるしイスラム教にもある。だからなんだと言われれば、それほど深刻な問題なのかということだった。信じなければ救われない世界に生きているのだとして、信じることが何かということを突き詰めて考えたい。俺はどうすれば救われるというのか、そもそも救いを必要としているのか。

 そんなことは全然分からない。おにぎりを齧る。美味い。救われた。そんなものか、腹を神としているだけではないか、情けない。自分の肉体に捧げ物ですか。情けない。命のありがたみなど全く分からなかった。だが生きているだけで良いと言われたいに違いない。働かなくてもいい、誰からも見捨てられてもいい、ただ私がいる。

 そういう都合の良いことを言ってくれる人が俺の強みも弱みも知っていてくれるのなら、共感してくれるというのなら、それに越したことはなかったのだが、この世界に提供されているものは大概パッケージ化されていて、俺の深みに入り込むようなものではなかった。推しとある生活的な響きだろうか?

 いや俺は何一つ分かっていない。とにかく学校に行かなくてはならないのだ。俺は学生の身分だった。本当にそうかはわからないが、しなければいけないことは自立のための準備だったのかもしれない。だとして、吐き出された社会で吐き捨てられたのだとして、俺はどこへ行けばいいのだろう。

 幸せになるためには何かスキルがなければならないのか。嫌だな。俺には何もない。働きたくもないし、そんなことをして、自分を慰めたくもない。だがそうしなければ人生というものに暗く影を落とし、永遠の先で後悔し続けるというのであれば、その時々の平安を獲得するだけで十分ではなかっただろうか。

 俺はいつまでも続けるつもりである。死ぬまで祈り続けるようなものである。生きているだけで良かったのだと言ってもらうためには自分に圧力をかけずに自然に出てくる言葉と行いに任せるに他ならなかった。右も左もわからなかったが、文学的なことは言いたかったのだ。交差するカイアズム的なね。

 本当にできることなど、限られている。俺ほど価値ある命などないのに、俺より生きるべき人間もいないのに、心の奥で死にたいという炎が消えずにいる。死んでどうにもならないのだが、存在を続けるというのはそれだけ苦痛なのだった。諸行無常、諸法無我、涅槃寂静。本当か? 俺は信じない。

 仏に頼んでもキリストに頼んでも、俺は自分の能力の一つも高めることはできないと知っていた。なら走り出せよ、って思った。どこにも行けないと知っていながら、新しい土地を目指して歩み出す。思うに一つのことができたら十のことができる。一つのことができなかったら百のことができない。

 それほどの絶望を抱えて生きている訳ではなかったが、俺という命の片隅に何か大切な言葉を握りしめていたくて、いつでも人々の心を癒せるような存在であれば、俺も何かの役に立ったという気持ちになれたかもしれない。言葉の渦の中に閉じ込められているだけだよ。長々とした詠唱、誰も起き上がらない魔術。

 今日という日が始まるのを阻害しようとしていた。物語の始め方分からないな。まあそんな言い訳はいい。実際現実は面白いものではない。ただ日々繰り返されていくだけなのだ。鋭意制作中だ。新しいアニメのシーズンみたいな感覚で、絶対に終わることのないというか、果てしないところでエターナルを経験しているだけなのだ。

 恥ずかしくてもいいから、人に声をかけることをやめないことかな。俺は朝を迎えるところだった。道端にいて、花が咲いているのを見て、美しくもないと思う最低な人間なのだが、この世界はそんなにいいものでも悪いものでもない。ただあるだけで、具体的な解が与えられているだけなのだった。

 この世の本質は自己矛盾なのだとして、それを解決してくれる救世主を待ち望んでいた。絶対イエス・キリストが再び来られるさ! 的なね。まあキリスト教内でも対立があるので、そこをまずどうにかしてくれと言わんばかりの日常茶飯事でした。呆れるほどに宗教というのは何も生まないのかもね。

 でもこれは言えるはずだというのは、信じるということの力は凄いというか、実際何でもできるようになるのかもしれない。だが良くも悪くもなのだが、人を殺すように仕向けられたカルト集団もいるものだから、侮ってはいけない。俺も死んでいたかもしれない。生まれてきた以上、何かしらの役目はあるはずだ。

 そんなものはない。全ては偶然の産物だ。そう言い切ってしまえれば正直楽だったかもしれないな。俺は何か素晴らしい光景を目の当たりにした。他の誰もそれに到達しなかった。満足して消えるだろう。俺にとっては無神論と進化論の組み合わせが居心地が良いのかもしれないが、創造主の存在を否定しきれない感情もある。

 何のために生きているのかなど知ったことではなかった。だが物語を作りたかった。俺は全てを根底から覆すような、全ての価値を高め、更にその上に乗る宝石のような存在になりたかったのかもしれない。都合良く若い時のあの働きのために永遠を確定させたかったようなものである。

 だが時というものは過ぎていく。残酷だなと思った。世界を作ることにも情熱を捧げたかったが、俺の理解というのは人には一ミリも伝わらないかもしれない。ただ誤解を生み出すだけ、なら自分の殻に閉じこもっていたほうがいいい。だが誰かの人生に何の影響も与えないのだとして、俺は生まれてきてよかったのか。

 もっと大切なものが他にあっただろう。そんなものはなかったのかもしれないが、ただ動き続けるだけである。家に帰りたくないし、学校にも行きたくない。俺の孤独の行き先を案内してくれる死神にでも命を委ねてみようかと、だが地獄に落ちたところで、世界が滅びてくれるのならそれで構わないが、天国に行ける人が現代に一人でもいるということは何かあまり嬉しくなかった。

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