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歪んだ三角関係〜勝利の女神の行方〜3


その後、小ノ道が剛力に変わって皆に説明をした。


「みんなも見ていたと思うけど、どうやら神風君が脚を痛めた様なので、試合は中止にしました。サークル全体の活動は終了にしますが、今日はコートに予約が入っていないので、動き足りない人はこのまま残って体動かして行っても大丈夫です。後は各々の判断で過ごして下さい。では、お疲れさまでした!」


「「「お疲れ様でした!」」」


(……神風さん!)


神風が心配で仕方ない夢姫は、解散と同時に休憩棟に向かって駆け出した。



ーーーーーーーーーー



「はぁ、はぁ……。あ、いた!」


神風と剛力の姿を見つけた夢姫は一目散に駆け寄った。


「神風さん!!大丈夫ですか!?」


ソファに座り左脚を冷やしていた神風が、夢姫の声に驚いた様子で顔を上げた。


「……ゆめちゃん。」


「神風さん、怪我は!?」


「あぁ……大丈夫です。歩けますし、問題ありません。」


神風の会話を側で聞いていた剛力が声を荒げた。


「何が、問題ありません、だ!!お前はバカか!!再度同じ怪我をしたらまともに歩けなくなることだってあるんだぞ!さっきも言ったが、痛みが完全に引くまではサークルとコーチの活動はするなよ。……今回は無茶な動きで脚を痛めただけの様だが、くれぐれも無理はするなよ。じゃあ俺はグラウンドに戻るからな。」


剛力はそう言い残して去って行った。


「「……………。」」


しばらくの沈黙の後、夢姫は徐に口を開いた。


「神風さん、どうして脚を痛めた事を剛力さんに言わなかったんですか?」


「それを告げたら試合が中止になります。そうしたら、大河との賭けも先延ばしになるでしょう。……僕は、早く決着を付けたかった。」


「……そんな事で。神風さん、もしあのまま試合を続けて大事に至ったら大変じゃないですか。」


「……そんな事?」


神風はソファの肘掛けに手を付いて立ち上がった。


「あ、急に立ち上がったらダメですよ!」


夢姫は神風を嗜めるように肩に手を置いて座らせようとした。だが、その手は神風の大きい手に絡め取られる。


「あっ」


夢姫は驚いて一瞬手を引こうとしたが、神風に強く引き寄せられた。

前のめりになった夢姫を受け止める引き締まった厚い胸板。

あれだけ汗をかいていたのに、不思議と汗臭さはしない。

かわりに、お日様のような優しい匂いにほんのりセクシーさが混じった香りがフワッと鼻孔を掠めた。


(あ、この匂い……やっぱり、好き。…って!イヤイヤ、何考えてるの私!)


「ち、ちょっと!神風さん!」


我に帰った夢姫は神風から離れようと片手で突っぱねたが、神風はそのまま夢姫を力強く抱き締めた。


「君にはそんな事かも知れない。けど、僕にとっては違う!……僕は、ずっと君を探していた。あの時の約束を果たすために。」


(……え?やくそく?)


「ゆめちゃ……」


ガチャ!

神風が続けて何か話そうとしたところで休憩棟の扉が開く音がした。

夢姫は慌てて握られた手を振り払うと神風をグイグイ両手で押し返し、その腕から脱出した。


「おい〜、神風!普通に立ち上がってるけど、お前怪我は大丈夫なのかよ?」


休憩棟の扉を開けてやってきたのは大河だった。

神風は一瞬大河を睨み付けた。


「お前が心配する必要はない。」


「っかぁ〜!お前なぁ、ダチなんだから心配に決まってんだろ!!立ち上がれるってことは怪我は酷くねぇんだな?」


「古傷が傷んだだけだ。」


「はぁ〜……。お前、脚痛めたんなら黙ってねーでちゃんと言えよ!負けず嫌いにも程があんだろーが!……とりあえず、賭けは保留な。怪我が良くなったらまた試合しよーぜ?」


「僕はくだらない事を長引かせたくない。早く勝ってお前を黙らせたい。」


「……神風、お前がストイックな性格なのはよく知ってるが、なぜそこまで勝ち負けに拘る?」


「お前には関係ない。」


「はっ!そーかよ!!分かったよ。じゃあ、ここから先はお互い自由にやろーぜ?」


「言われなくてもそうするつもりだ。」


「……ふーん?あっそ。あ、ゆめちゃん、明日空いてる?」


いきなり話を振られた夢姫はびっくりして頭が真っ白になってしまい、素直に明日の予定を答えてしまった。


「え、私!?明日は空いてますけど……。」


(はっ!待てよ!?この流れから行くと嫌な予感がする!!)


「や、やっぱり訂正!明日は予定あったかも!あは、あははは……。」


大河は意地悪そうな目付きで夢姫をジロリと見て、ニヤッと笑いながら口を開いた。


「やーだなー、ゆめちゃん嘘がバレバレ♡予定ないなら、明日は俺とランチ食べに行こ♡」


「うう……。」


「はい、決まりー!ゆめちゃん、好き嫌いある?ないならこっちで決めるから、後でラインで集合場所伝えるね〜。」


大河と夢姫のやり取りを聞いていた神風が口を挟んだ。


「大河、やめろ。ゆめちゃんが嫌がってるだろ。」


「は?お前には関係ねーだろ。それより、お前は脚の痛みを治すのが先だろ。じゃ、ゆめちゃんまた明日〜。」


「あ、おい!待て、大河!」


大河は神風の呼びかけを無視して去って行った。

大河が去った後、神風は夢姫に話しかけた。


「ゆめちゃん、明日大河と会うんですか?」


「え?うーん、そうですね……。」


(本当はあまり会いたくないけど、変に断ってサークル内でギクシャクするのは嫌だしなぁ。まぁ、ランチだけなら大丈夫かな。)


「明日アイツに会うつもりなら、今日これから僕と一緒にご飯に行きませんか?」


「えぇ!?でも、神風さん、脚が!」


「脚なら大丈夫です。痛みも引いて普通に歩けますし、今でも医者には定期的に通っているので、近々みてもらえば問題ありません。……それとも、大河はよくて僕とは嫌ですか?」


「いや、そんなことはないです!でも……。」


「じゃあ、これからの時間を僕に下さい。着替えが終わったらまた休憩棟に来て下さい。僕もこれから着替えてきます。……では、後ほど。」


神風は夢姫にそう言い残し、スタスタと去って行った。



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