サークル活動は、波乱の予感?3
試合は一対一の引き分け。
Aチームからのキックインで再スタートを切る。まずはマーサにパスを回すAチームのメンバー。ボールを受け取ったマーサはゆっくりしたドリブルでアラのポジションにいた二人…大河とルリの注意を引き、一旦斜め後方の神風にボールを戻す。
神風は一気にダッシュをし、追いかけてきたルリと大河を巻いて再びマーサへパスを回した。受け取ったマーサはそのままゴール前まで一気に突っ込む。
反応した敵のフィクソがマーサに駆け寄ってきたが反応が遅かったために追い付かない。
マーサは勢いの付いたまま斜め上にボールを蹴り上げ、見事にシュートを決めた。
(おお〜!息の合った連携プレー!剛力さんもパス回しは上手だったけど、神風さんも凄いな!)
「マーサさん、ナイシュー!」
「ナイシュー!」
Aチームの雰囲気が盛り上がる。それを見た大河が思わず呟いた。
「あちゃー、また入れられちゃったなぁ。」
その呟きに反応したルリが返事をした。
「ドンマイ。次狙ってこ。」
ーーーーーーーーーー
その後、試合は一進一退の攻防が続き、一点差でAチームが勝利を収めた。
レフリー役の剛力が試合終了のホイッスルを鳴らし、チームの交換を促す。
コートの外に出た夢姫達にユウユウが寄ってきた。
「お疲れ様ぁ♡いい試合だったねー♡」
「あ、ユウユウ。ありがとうございます。」
「ゆめちゃん、シュート決めてたねぇ!マーサさんもシュート決めてたしぃ。今日の女性陣、みんなかっこよかったよぉ♡」
(か、かっこいい……?男に対してかっこいいはキラーワードかも知れないけど、女に対してかっこいいは有りなのか……?)
夢姫は少々複雑な顔をしながら返事をした。
「あ、ありがとうございます。」
剛力が声をあげる。
「まだコートに入ってない人〜!試合始まるから来て〜!」
「あっヤバッ!呼ばれちゃったから、行ってきまぁす!」
「ユウユウ、頑張ってきてください。」
「はぁい♡」
ーーーーーーーーーー
剛力はレフリー役を交代するため神風に声を掛けた。
「はい、神風君。レフリー役よろしく!」
「わかりました。」
(レフリー役は神風さんなんだ……。)
神風と顔を合わせずに済んで、なんとなくほっとした夢姫。ちなみに、今回はCチームに夕日と剛力、Dチームに小ノ道がいる。
「……先攻後攻を決めるので、チーム毎に代表決めてこちらにきてください。」
コイントスの結果、先攻はDチームとなった。
ピッ!
鋭いホイッスル音が響く。試合開始の合図だ。
Dチームの男性メンバーが静かにキックオフし、試合が動き出した。Dチームのメンバーはまずメンバー内の女性へパスを回す。パスを受け取った女性はしばらくドリブルをして敵の注意を引き付けた後、小ノ道へパスを回した。
……が、ボールの流れを読んでいた剛力が急に駆け出しパスカットをした。
剛力はそのままボールを奪って駆け出し、前方にいた夕日に向かってパスを回した。夕日はしっかりボールを受けると、思いっきりボールを蹴った。
ザシュ!!!
ボールはネットを揺らし、見事にゴールが決まった。
「きゃーん♡入ったぁ!ゆず……剛力さぁん!!♡」
夕日は剛力に抱き付いた。
「お、おい、ユウユウ!!みんなの前だぞ……」
(……んんん!?ユウユウ、剛力さんに抱き付いてる!?ユウユウは神風さんが好きじゃなかったの!?)
「え!あの二人って……。」
「あらまぁ、お熱いこった。あれじゃ恋人同士なのバレバレだよな。」
夢姫は返事が返ってきたことにびっくりして後ろを振り向くと、そこには大河がいた。
「大河さん……!」
「見ての通り、アイツらデキてんの。あれでも隠してるつもりらしいけど、あんなの誰が見たってバレバレだっつーの。」
(ユウユウ、私をお姫様抱っこした神風さんをイケメンやら王子様やら言ってたし、神風さんが好きなんだと思っていたけど……勘違いだったのか。ちょっとホッとした。………ん?ホッとしたってなんだ!?)
「そ、そうだったんですね……。」
「暗黙の了解、ってやつ?口に出しては言わないけど、このサークル内じゃみんな知ってるぜ。知らないのはあのバカップルくらいだよ。ははっ!」
「バ、バカップル……。」
(バカップルかどうかはさておき、確かにあれを見たら恋人同士なの分かっちゃうよね。)
「………ところで、神風とは、どーなのよ?」
「……え?」
「アイツとは連絡取ってねーの?」
「えっと、連絡先知りませんが。」
「………それマジで言ってる?じゃあ他のメンバーのは?」
「そもそも、誰とも連絡先交換していませんが?」
「……まじか。おっし!ゆめちゃん!サークル終わった後飲み行くぞ!!」
「え!?いきなり何ですか!?」
「この後の予定は?」
「な、ないですけど……。」
「じゃー決まりな!俺、ちょっと飲み物買ってくるわ。」
大河はそう言い残し、颯爽と去っていった。
残された夢姫はポカンとした顔で佇んでいた。
(え、えええー!?いきなり何なのよ!!)