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よろしくお願いします!
「よろしい! その貢物。しかと受け取った!」
今まで以上に尊大な態度で、姉上が『竜の門』に捧げる『カステイラ』にナツミが手を伸ばそうとして、
シュンッ!
その手と『カステイラ』の間を、物凄くヤバイ何かが通り過ぎた。
「え? ええ!」
誰かが発した声と同時に物凄くヤバイ何かは地面を抉り、観光名所のこの場所に、深い傷跡を残した。
まあ、そんな事できる人物は、一人しかいないのだけれども。
「あらあら? これは神にも等しいとされる、古の竜に捧げる供物であって、私の愛して愛して、愛おしくて愛おしい、愛弟に擦り寄ろうとするビッチドラゴンに捧げる者では無くてよ?」
右腕を振り下ろした姉上が、ニッコリとほほ笑む。
それに対しナツミは、
「何を言ってるんですか! 私はビッチじゃありません! この数千年! 私は夫一筋です!」
「え! そこ? 自分がドラゴンとか疑われてるけど、そこに食いつくの!」
思わずツッコんだ!
でも、それ以上に黒髪に黒い瞳の少女の、夫一筋なんて言葉にびっくりだけどね!
「ふふんっ! 当たり前です! 私は誇り高き古竜! 例え甘味が欲しくて欲しくて、娘に内緒でこっそり人化してアルバイトして甘味を買っているとしても! 古竜の誇りは失わぬ!」
うん?
旦那一筋なのは敢えてスルーするが、古竜の誇りってのが甘味のがどうのって下りで、なんか軽く感じるのは僕だけか?
そんな僕とナツミのやり取りに、
「あらあら? それはそれは…………」
姉上が、自分の唇に人差し指を当て、それはそれはとってもいい笑顔を向けた。
ああ。
これアレだ。
微笑む姉上に僕は視線を落し、深い深いため息を吐いた。
だって姉上のその笑みは、
獲物を見つけた時の、姉上のソレだったのだから……。
「あらあら? それでは断罪の時間ですわね?」
意味不明の言葉だが、唇の指をつつっと横にずらし、妖艶な笑みを浮かべる姉上の仕草に、僕のツッコミは四散した。
「え? ええ! 今、私の登場シーンだよね? 古竜を探しに来た勇者に、謎の美少女ツアーコンダクターが正体を明かすとこよね? それなのになんで私、こんな殺気が漂う場所に荒らされてるわけ?」
にこやかに、
でも、無表情にナツミに歩を進める姉上。
どうやら、数千年生きてるとされる最古の竜でさえ、姉上の行動は理解不能のようだ。
しかも、その理由が、
「あらあら? 例え世界を救うと言われる最古の竜でも、私の愛弟に色目を使ったんですもの、それは完全に、『死!』を覚悟していただなければ……」
なんとも理解しがたい理由だった。
「え? ええ!! 私、こんな坊やに色目なんて使ってないし! 今でも夫一筋だし! それになにそのルール! 私知らないんですけど!」
普通そうだよね!
僕もその意見にほぼ同意するのだが、
「おろおろ? いくら古竜殿であっても……わっちの主殿を、こんな扱いじゃと? それはそれは……聞き捨てならんのう?」
なぜかここでヒルダ参戦!
ニッコリと口角を上げているが、目がまったく笑ってない!
そればかりか、なにその両手に溜めてる禍々しい魔力は!
「え? え? 私、最古の竜だよ? そう言ったよね? 魔王とか神見たく強いんだよ? それなのにやる気? それとも殺る気!」
言葉とは裏腹に、歩み寄る二人に対し、物凄く腰が引けてるのは気のせいか?
まあとにかく最古の竜を、大した理由もなくボコるのは不味いだろう。
そう思った僕が、静止の言葉を口にしようとした、
刹那!
ガコンッ! ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
地響きと共に、何の前触れもなく『竜の門』が開いたのだった…………。
ここまで来ておいてなんですが、作者絶不調のため少々更新が滞ります。
出来る限り早く更新できるよう頑張りますので、
お願い!
捨てないで!