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傭兵である俺がエロゲーの世界に転生した件について  作者: エージェントK
第1章 小学生編
3/34

第1話 狼の豚転生

どうも明けましておめでとうございます。年末・正月と浮かれて更新が遅れてしまいました。申し訳ないです。m(__)m

今回から本編になりますのでよろしくお願いします。


※ノクターンに18禁仕様を投稿していますがなろうでの投稿を優先しているためノクターンでの投稿が遅れます。ご了承お願いします。


…………


 「どうしてこうなった」





 俺は鏡に映るマヌケ面に思わず最期の時と同じセリフを呟いた。




 いやいやいやいやいや!ちょっとまってくれ!!



 俺完全に死んだよな!?ヘリからパラシュートなしでフライアウェイしたよな!?そんで母なる大地に叩き付けられてミンチになったよな!?ならなんで――――






「俺は生きているんだ………?」



 混乱状態の思考のまま俺は辺りを見渡す。小さな部屋だ、目の前には洗面台と鏡がある。つまりここは洗面所だ。これだけなら死んだという夢を見た俺が寝惚けた状態のまま洗面所で顔を洗ってる最中に夢の内容を思い出して慌てているというマヌケな話で済むのだが………




「知らない洗面所だ」


 勿論ネタではない、ガチで知らない洗面所だった。俺はフリーランスの時代から各国に隠れ家(セーフティハウス)や別荘を設けていた。(仕事の度に現地の宿泊施設の予約をするのがメンドかった)隠れ家の数は優に100を超えたが、そのどれにも該当する洗面所はなかった。

 



 俺は留守中に隠れ家に爆弾などの仕掛けがされてもすぐに解るように100以上ある隠れ家の間取りや特徴を全て頭に叩き込んで違和感があればすぐに解るようにした。(実際ある隠れ家に久しぶりに来たら違和感が半端なかったからすぐに屋外に出たら出てすぐに隠れ家が吹っ飛んだ。後日俺が壊滅させた麻薬組織の残党が時限爆弾を仕掛けたのが解った)



 問題なのは洗面所だけではない。俺が再度鏡を覗き込めばマヌケ面が映っていた。うん、とりあえず言いたい………


「お前、誰だよ?」


 鏡に映る顔が俺の顔じゃなかった。俺は傭兵という仕事柄、無精髭を蓄えていた。(主な仕事場である中東は髭を生やすのが成人男性のステータスだった)しかしこの鏡に映る顔はなんだ?髭が一本も生えてないどころか顔立ちが幼過ぎる。これじゃあ小坊のガキじゃないか………ん?てか背も低くね?俺って180くらいあったと思ったんだけど鏡見る限りこれ……150もないんだけど……



「まさか……」


 俺は恐る恐る自分の体を見る。180センチあった背は150センチ未満と小柄に、戦場で鍛え上げた丸太のような手足は太くはあるが脂肪のみで筋肉はまるでなく非力なものに、中東やアフリカで浅黒く日焼けした肌は真っ白な肌に、そして割れた腹筋のあった腹はポッコリと突き出た脂肪の塊があるのみだった………。


「なんじゃこりゃぁあ!?」


 思わずジーパンが似合う刑事のセリフを叫んでしまったが不可抗力だと弁明したい。だって長い年月をかけて鍛え上げた自慢の体がこんな子豚ボディになっちまったんだ。誰だって叫ぶ筈だ。


「つーか臭っ!何この臭い?」


 見た目子豚という視覚の暴力の後は嗅覚の暴力が襲った。臭いのだ、匂いの元は勿論この子豚ボディである。この臭いはまるで数週間風呂に入っていない匂いだ。てかよく見たら髪がペタペタで脂ぎっている風呂に入っていないの確定じゃないか……。


「ユキオちゃんどうしたの!?」


 洗面所の外から女性の声と足音が聞こえる。どうやらさっき思わず叫んでしまった声が洗面所の外にまで聞こえたようだ。ユキオ?はて、どっかで聞いたような………。


「ユキオちゃん!開けるわよ!?」


 俺が思考の海に沈んでいる間に女性はこの洗面所前に着いたようだ。って、不味い不味い!!


「えっ!?ちょ、まっ―――」


 こちらの返事を待たずに洗面所のドアが開く。


「ユキオちゃんどうしたの!?」


 ドアを開けたのは妙齢の女性しかも女優レベルのかなりの美人さんだった。勿論俺にこのような美人さんの知り合いはいない。


「え、と……」


「具合が悪いの?それともどこか怪我をしたの?」


 なんて言えばいいかわからない俺に気付かない女性は屈んで怪我をしていないか俺の体を見回す。


 とりあえずこの状態は不味い、俺はこの場を誤魔化す為に頭を働かす。


「だ、大丈夫だよ……そ、その洗面台にゴキブリが出て、驚いただけだから………。」


 とりあえず目の前の女性を安心させるために適当な嘘で誤魔化す。今の俺はこの女性曰くユキオなる子豚ボディならぬ肥満気味小学生(?)なので口調も小学生らしいものにした。くっ、37にもなって小学生の真似事とは恥ずかし過ぎるっ。


「ゴキブリですって!?ユキオちゃん怖かったでしょうに……」


 ゴキブリという単語に驚きの声を上げた女性は両手を広げ――――


「え、ちょ!?むぐっ!」


 いきなり俺を抱き締めた。おぉ!この女性以外と胸があるな……抱き締められたことで俺の顔面に女性のお胸様が直撃する。ふふっ、久しぶりだ。お胸様に顔を埋めるのは半年前に行ったオッパブ以来だ。


「むぐぐ、く、苦しいよ……」


「あら、ごめんなさい」


 俺はしばらくお胸様を楽しんだが女性が強く抱き締めるもんだから少々息苦しいので名残惜しいがハグを止めさせた。ああ、実に名残惜しい……


「それにしてもうちにゴキブリが出るなんて……マサオさんに頼んで業者さん呼ぼうかしら?」


「う、うんそうだね。ゴキブリは一匹いたら百匹いるなんて言うし」


 よし!このまま会話を合わせて切り抜けよう。


「そうなのよね~……あ!ユキオちゃん朝御飯出来たから早くいらっしゃい、ママ久しぶりに朝食作るから張り切っちゃったわ!」


「う、うん解った。楽しみにしてるよ」


 俺の返事に満足したのか女性は洗面所からウキウキしながら出ていった。はぁ~、なんとか誤魔化せた。ひと安心した俺は再度鏡を見る。そこには相変わらず、子豚ボディのガキが映りこんでいた。


「とりあえずなんとかなったけどこれって……」


 お胸様のお陰で思考が大分落ち着いた俺は、ある程度自分が置かれた状況を理解し始めていた。どうやら俺は信じられないことだが、死んであの女性が言うところの『ユキオちゃん』なるこの子豚ボディの持ち主に憑依転生したようだ。


 死語地獄に墜ちることを覚悟していた俺としては、記憶持ちで第2の人生をスタートできるなんて大変ありがたいことだ。とりあえずメッカの方向に十字を切りながら念仏を唱えなければ(錯乱状態)、だが問題もある憑依先であるこの『ユキオちゃん』だ。さっきは混乱してて解らなかったがお胸様のお陰で俺は思い出した。俺はこいつをいや、このキャラを知っている。こいつは………


悪原 征男(あくはら ゆきお)……」


 エロゲ製作会社ユートピアの名作『悪夢の学園』の主人公、悪原 征男その人なのだ。


「主人公に憑依転生ってのはテンプレだけどさ、何でこいつなんだよ……」


 あんまりな事実に俺はリアルorzをしてしまう。エロゲの主人公に転生と聞いたらヒロイン達とラブラブエッチ出来る勝ち組と思うかもしれないが、この悪原 征男は例外だ。

 ゲーム開始時、つまり高校1年16歳の征男のスペックはあまりに酷い、身長は160センチ未満、体重は80キロ以上とチビデブな肥満体型で偏った食生活、運動嫌いなのに汗かき、止めに風呂嫌いのため体臭はかなり臭い(今もかなり臭いが)一人称は『私』で口調も紳士的なのだがそれは外面だけで内面は、いつも可愛い女の子にエロいことをする妄想ばかりしている。


 結局のところ見た目、体臭そしてオタク趣味のせいで女子からは敬遠され男子からは虐められるというハードモードな主人公だ。


 普通の純愛もののエロゲなら主人公どころか主人公の親友ポジすら出来なさそうな男だが、生憎『悪夢の学園』は普通のエロゲではない。このエロゲは凌辱、催眠、寝取り、調教と負のオンパレードなのだ。


 物語は、主人公が高校に入学してから始まる。小中と同様に女子からは敬遠され男子からは虐められる毎日を過ごす主人公、悪原 征男のもとに送り主不明の小包が届く。中身は作品世界観ではまだまだメジャーなガラケーしかしただのガラケーではない催眠機能が付いたガラケーであった。半信半疑の征男は試しに自分を虐める不良グループに催眠ガラケーを使う。すると今まで自分を虐めていた不良どもが自分に従順な狗になったのだ。その事に味を占めた征男は自分を小馬鹿にした女子や学校のマドンナを自分専用の性奴隷にするために行動するという内容なのだが、端的に言って……この主人公クズである。


「マジ何でこいつなんだよ。同じエロゲでももっとマシなのあったろうによ~」


 グゥ~


「………」


 落ち込んでいたら腹が鳴った。こんな時でも人間の三大欲求からは逃れられないようだ。


「朝飯の準備出来てるんだよな、早く行こ」


 落ち込んでいても何も始まらん、とりあえず朝飯食ってから考えよう。(現実逃避)そう決断した俺は洗面所を後にした。




















 ダイニングに行くと先程の女性がキッチンから料理を運んでくるところだった。俺こと征男に対する言動からしてこの女性は征男の母親、『悪原 征乃(あくはら ゆきの)』だと思う。ゲームだとイラストが無いのでさっきは解らなかったが、征男のことをちゃん付けで呼ぶ存在と言ったら彼女しかいない。


「か、母さん料理並べるの手伝うよ」


 確認の為に目の前の女性を母さんと呼んだ……これで外したら洒落になんない。


「あら、ユキオちゃんがそんなことを言うなんて珍しいわね?」


 とりあえず母、征乃で間違いなかった。しかし俺が手伝うと言ったら心底驚いているな……?あ、しまった!征男は内弁慶で親の手伝いをするキャラじゃないということを失念していた。なんとか誤魔化さないと!


「いつも、母さん達には世話になっているからね、タマには親孝行しないと」


「もう!ユキオちゃんたら!親が子供の世話をするのは当たり前なんだから気を使わなくていいのよ……でもありがとう。ママ嬉しいわ」


 フゥ~、誤魔化し成功。征乃さんは怒りながら喜ぶという器用なことをしていた。まあ、自分の息子が始めて母である自分のことを気遣ってくれたんだ。そりゃ嬉しいに決まっている。


「いいんだよ。母さん、とりあえずお箸とか小皿出して置くね」


「ありがとう、助かるわ」


 いや~、危なかったな。怪しまれないように原作通りの征男のキャラを演じた方がいいのだろうか?でもな~演技とはいえ征乃さんを原作通りに邪険に扱いたくないな。


「お早う征乃さん。おっ!珍しく早起きだな征男」


 俺が棚から箸と小皿を出している時にダイニングに男性が入って来た見た目は30代以上40代未満のスマートな体型の人だった。


「おはようございます。マサオさん♪」


「父さんおはよう!」


 この男の名は、『悪原 政男(あくはら まさお)』征乃の夫にして俺こと征男の父親である。


「お、母さんの手伝いか?偉いぞ征男!」


 政男さんは嬉しそうに俺の頭をワシャワシャと撫でた。


「ちょ!?父さん恥ずかしいから止めてよ」(にしてもこんな脂ぎった頭よく撫でれるよな)


「ハハハハ!スマンスマン嬉しくてつい…な」


 たかだか母親の手伝いでここまで喜ばれるとは想定外だった。征男の奴どんだけ親を邪険にしてるんだよ………。


「それより父さん母さん、僕お腹空いた」


「ごめんねユキオちゃんそろそろ食べましょうか?」


「食べよ、食べよ!久しぶりの征乃さんの手作り料理だ。楽しみだな!」


 こんなことで誉められると思わなかった俺は朝食を催促して話の流れを変えた。ちなみに原作開始時の一人称『私』は中学辺りから使い始めたものでそれまでは一人称は『僕』を使っていた。


「「「いただきます!」」」


 朝食はごはんに味噌汁、焼き鮭、だし巻き玉子、漬物と朝食の定番メニューだった。


「うん、相変わらず征乃さんの料理は美味しいな」


「あらやだ、マサオさんたら!」


子供の目の前で新婚夫婦なみにイチャイチャしてるバカ夫婦がいるが俺はそれどころじゃない。


「おいしい……」


 あまりの美味しさに独り言を呟いてしまった。


 そう朝食が美味しすぎるのだ。こう見えて俺は料理にはうるさい、戦地で満足に飯が食えなかったことが度々あった。その為非番の時は各地の料理を食べ歩き美食家とは言わないまでもグルメであると自負している。そんな俺でもこの朝食には心底驚いた。味噌汁は化学調味料を使うことなく煮干しなどから出汁を取ったのか、しっかりと出汁が出ておりながらサッパリとした味わいになっている。焼き鮭も程よい塩加減でごはんが進む。だし巻き玉子は……おぉ、出汁と砂糖のバランスが素晴らしいしょっぱ過ぎず甘すぎない絶妙な味の加減がいい、漬物は……ほほぅ、手作りか!凄いしょっぱ過ぎない美味しさとポリポリとした歯ごたえがいい。


「え?」


「ん?」


おや?さっきまでイチャイチャやってた親がおとなしくなったな。


「ねえ、ユキオちゃん……今何て言ったの?」


 征乃さんはなぜか、信じられないと言った感じで俺に聞いてきた。


「えっと、おいしいって……」


 訳が解らなかった俺はとりあえず先程の独り言を言った。するとどうだろうか、征乃さんは感極まったと言わんばかりに突然涙を溢し、政男さんは最初驚いていたが突然、嬉しそうに笑いだした。えぇ!!俺また地雷踏んだ!?




「おいしいって……いつも味が薄い!不味い!ってママの料理を残してたあのユキオちゃんが……」


「ハハハッ、今日は珍しいことづくしだな」


「ア、アハハ、僕も母さんの料理の良さがわかるくらい味覚が大人になったんだよ」


 少し無理があるかもしれないがそれっぽい理由で誤魔化す。 


「そうか、征男お前も成長したな」


 納得した政男さんはまた嬉しそうに俺の頭を撫でた。はぁ~何回目の危機だよ。そういえば原作の征男は両親が仕事でいないときは、食事をハンバーガーやコンビニ弁当で済ませていたな。あんな濃い口で大味なもん食べ慣れれば征乃の繊細な料理は口に合わない筈だ。




 その後、征乃も落ち着いたため食事が再開した。それにしても……


「ズズズッ……味噌汁ウメー」


 俺は味噌汁をすすりながらこの世界の原作である『悪夢の学園』のことを思い出していた。ハマって何度もプレイしたが最近はユートピア製作の新作エロゲーに熱中していて、『悪夢の学園』の内容が記憶から薄れていたのだ。さっきだって原作征男の性格や味の好みすら直前になるまで失念していたんだ。ボロを出さない為にも思いださなければ……









 まずは家族について情報を整理しよう。目の前で征乃さんの食事を美味しそうに食べている。悪原 政男は最終学歴が高卒と俺の前世の父親に比べたら天と地の差があるが、政男さんはなんと一代で小規模ではあるが貿易会社を立ち上げた商才ある人物で世界中を飛び回っている。そんな政男さんの隣で政男さんとイチャイチャしている悪原 征乃のは世界的に有名なバイオリニストで世界各地でコンサートを開催している。


 なんの因果か、俺は別ベクトルではあるが、またエリートの家庭に生まれてしまったようだ。おっと、話がそれてしまった。つまり主人公の両親は仕事の関係上ほぼ家に、いや日本にいない。今回みたいに家に二人揃っていることの方が珍しいくらいだ。原作だとそれを利用し美少女を自宅に連れ込んで肉奴隷調教をしていたな。


 


「ところで父さん母さん、今度はどの国に行くの?」


漬物をポリポリ食べながらなんともなしに聞く


「パパが今回行くのはイギリスでな出発は一週間後だな」


「ママは、フランスね。細かい予定は、フミちゃんがいないから解らないけど出発は大体マサオさんと同じくらいかしら?」


 ちなみにフミちゃんとはバイオリニストである征乃さんのマネジャーのことだ。


「ふ~ん、一週間後かぁ……」


 自由に行動出来るのは一週間後…か、まあいいさ、それまでは小学生生活を楽しむとしよう。


「すまんな征男、いつも一人にさせて」


 政男さんがすまなそうな顔をする。たしかに自分達は仕事とはいえ小学生の息子を一人日本に残して行くとなっては、罪悪感も出てくるだろうな。


「謝ることなんてないよ父さん、仕事なんだから」


 原作の征男ならともかく精神年齢37の俺からしたらこんなこと些細なもんだ。


「征男……」


「ユキオちゃん……」


 うっ、両親の申し訳なさそうな眼差しがツラい。また話を変えないと……。


「それよりも父さん母さんお土産持って帰って来てよね。楽しみにしてるから!」


「ああ、解った。征男が気に入りそうな物を持って来るよ」


「ええ、ママもフランスのお土産イッパイ持って帰って来るからね」


「ありがとう、父さん!母さん!」


 息子思いの母親と父親はなんだか少し輝いて見えた。



「「「ごちそうさまでした!」」」


 朝飯を終えて食後のお茶を飲んでいると、政男さんが茶封筒をよこした。


「征男、少し早いが今月の小遣いだ。大切に使いなさい」


「あぁ、うん、ありがとう無駄遣いはしないよ」


 日付が解らなかったのでいきなりの小遣いに驚いたが金は有っても困らないのでありがたく頂いた。


「いくらあるかな?どれどれ~……ブハァ!!」


諭吉が30枚、その金額に思わず口に含んだお茶を吹き出してしまった。


「どうした?足りなかったか?」


「い、いや大丈夫充分足りてるよ」


 財布から追加の諭吉を取り出そうとしていた政男さんをなんとか止める。





 悪原家は両親が仕事で成功していることもあり小金持ちだ。故に息子に使う金銭感覚が結構おかしかったりする。仕事で使う金や私生活で使う金の管理はキッチリしているのに可愛い我が子に使う金は惜しげもないのだ。恐らく普段一緒に居られない分我が子には何不自由なく過ごして欲しいという親心なのだろうが、それのせいで原作だと両親をATMとしか思わないダメ息子になってしまうのだから皮肉なものだ。



「30万か……」


 小学生の1ヶ月の小遣いにしては多すぎるな。下手なサラリーマンの月収より多いぞ。それでも原作征男は外食やオタク趣味にのために散財して来月にはもう金がないなんてことがざらだったな。


「とりあえず貯金しよ」


 金は有っても困らない、緊急時のために無駄遣いはしないようにしよう。



 さて、そろそろ学校に行く準備をしなければ、カレンダーで今日が4月20日の月曜日であることは確認済みだ。



征男の部屋に行きランドセルを見つけると今日使う教科書とノートを入れる部屋が散らかってて探すのが大変だった後で整理しないと、(征男の部屋が解らず家中の扉を開けまくったのはここだけの話)



「精神年齢37のおっさんが、ランドセル背負うってどんな拷問だよ」


 いくら肉体が小学生とはいえこれはキツい、精神が削れそうだ。時間はまだあるがとりあえずランドセルを背負いリビングに向かうとリビングの扉越しに両親のとは違う別の声が聞こえる。


「こんな朝早くにお客さんかな?」


 扉を開ける両親と両親と同じくらいの年齢の男女と今の俺と同じくらいの少女が一人いた。あぁ、この人達かと俺は一人納得した。


「征男君おはようございます」


 最初に男性が俺に恭しく挨拶をする。見た目は政男より少し高めの身長と優しい顔立ちが特徴だ。彼の名は、待田 理貴(まちだ りき)我が父、征男の専属運転手にして秘書であり会社創設時の初期メンバーでもある。


「征男君、おはよう」


 次に女性が俺に親しげに挨拶をする。彼女の名は、待田 文子(まちだ ふみこ)理貴の妻にして我が母征乃のマネージャーであり学生時代からの親友である。征乃の言うフミちゃんとは彼女のことだ。外見は、スレンダーな体型でレディーススーツを着こなすTHE・仕事のデキる女という出で立ち、自信のある凛とした顔立ちそして濃紫色の髪をショートボブにしているのが特徴だ。



 そう濃紫色の髪なのだ。アニメ、ゲームでよくある現実ではありえないカラフルな髪色、この『悪夢の学園』も例に漏れずカラフルな髪色の人物が多数登場する(勿論地毛)。でもまさか、リアルでこんな派手な色の髪を見るとは思わなかったなぁ。



「おはようございます。理貴さん、文子さん」


 挨拶をされたのでこちらも挨拶を返す。はぁ~また驚かれるな。


「「!?」」


 やっぱり……、二人は声には出さなかったが驚いていた。原作征男は、『親の部下なのだからあいつらは僕の部下だ』という謎理論を掲げ二人を見下し挨拶すらしなかった。ホント原作征男(こいつ)屑だな……。まあ、今はそんなことより、



「それと、理子ちゃんもおはよう」


 俺は二人の後ろに控えていた少女に声をかける。彼女の名前は、待田 理子(まちだ りこ)待田夫妻の一人娘で俺の幼馴染みだ。また、『悪夢の学園』に登場するヒロイン(被害者?)の一人でもある。原作開始前ということで、幼い容姿だが可愛らしい顔立ちから将来は美人になるということが誰の目から見ても明らかだ(成長が待ち遠しい)。ちなみに原作開始時は、濃紫色の髪をストレートロングにしているが今はまだセミロングだったりする(これはこれでアリだな)。


「お、おはようございます。ゆきおさま……」


 彼女はたどたどしくもキチンと挨拶をした。そういえばこの頃の理子ちゃんは人見知りが激しく、幼少の頃からの付き合いである俺にすら距離を取っている。まあ、俺の場合『部下の娘も僕の部下』というこれまた謎理論を理由に彼女に高圧的に接していたから距離を取るどころか怖がっている節がある(あと体臭)。


「理子ちゃん幼馴染みなんだから様付けは要らないよ征男って呼び捨てでいいよ」


「う、ううぅ、ごめんなさい。ゆきおさま」


 こりゃ重症だな。原作征男は理子ちゃんに対して『僕に逆らったら父さんに言い付けて君の親をクビにする』なんて下僕みたいに扱っていたからな。言い付けたとしても政男さんが理貴さんや文子さんをクビにするなんてありえないことなんだが、純粋な理子ちゃんは真に受け俺の機嫌を損ねないよう毎日ビクビクしている。


 原作開始まで約6年の猶予があるそれまでになんとか彼女との関係を修正しなければ……。


「ご子息、見ない間に変わりましたね」


「ああ、昨日は帰って来たばかりで気付かなかったが、朝起きて見たらこの調子さ」


「征男君、変わったわね。うちの娘の人見知りもなんとかならないかしら?」


「フミちゃん、諦めちゃダメよ。ユキオちゃんが成長したんですもの、リコちゃんだって成長するわよ!」


 なんか、外野が騒がしいな。


「父さん達、僕そろそろ学校に行くけど父さん達はお仕事大丈夫なの?」


 俺の一言で政男さんの表情が一辺した。


「不味い!イギリス出張の打ち合わせがあるんだった。理貴君!会社まで車を飛ばしてくれ!!」


「かしこまりました。社長、法定速度無視して飛ばします。」


 いや、法定速度は守れよ。


「こっちもフランスでの予定の打ち合わせしないと」


「はぁーい♪お茶持ってくるわね」


 慌てる男性陣と違い女性陣は落ち着いていた。政男さんと違って自宅打ち合わせで済むからかもしれんが、


「まあ、そういうことだから行ってくるね」


「いってらっしゃいユキオちゃんリコちゃん!」


「征男君、今日も理子のことよろしくね」


「おう!気を付けて行ってこいよ!!」


「二人とも、車には気を付けて」


 これが悪原家と待田家の日本にいる間の平日の日常だったりする。理貴さんが政男さんを会社まで送迎するために、文子さんが征乃さんとの打ち合わせために、そして理子ちゃんが原作征男と学校に行くために毎回この時間帯にやって来るのだ。毎回お互いの子供の話になって政男さんと理貴さんが遅刻しそうになるまでがデフォだ。


「ありがとう気を付けて行くよ」


「い、行ってきます」


 政男さん達の声を背に玄関に向かう。







「理子ちゃん、準備はいい?」


「は、はい……」


「そっか、じゃあ……


 靴を履き終え理子ちゃんに声をかける。怯えているが着いてきてくれるだけでもありがたい。なんの因果でこの世界にやって来たのかは解らないし、憑依先のこの体は問題が有りすぎるが、まあいいさ1つずつ潰していけばいい、まず手始めに……










「学校に行こうか!」








俺は未来への第一歩を踏みしめた。





 





「俺、学校の場所知らないじゃん……」


 転生初日から前途多難だった。


 




家族紹介(プラスα)だけで終わってしまった...。(;_;)

次回、他のヒロインも登場しますのでお楽しみください




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