第17話 男勝りなあの娘とデート
前回に続き今回も投稿が遅れてしまいました。
申し訳ないです。
ヒロインの性格に合わせてデートの内容を考えたので投稿するのが遅れた次第です。
今回は薫とのデートですのでお楽しみください。
8月中旬の早朝、俺は山の中を歩いていた。薫や雄介のお陰でこの山の中は知り尽くしているので薄暗い早朝でも迷うことはない。
「この辺でいいか」
ある程度開けた場所に来ると、背負っていたバックパックから紙袋を取り出す。紙袋の中身は黒光りする2つの金属の塊、そう和泉のおっさんから貰ったトカレフと孝から奪ったM-10だ。
「おっ!あの木試し撃ちにもってこいだな」
俺が朝っぱらからこんな山ん中を来た理由、それは銃の試し撃ちに他ならない。転生してからというもの俺が銃を撃ったのは、誠を仕止めた時だけだ。あの時は運よく当たったが、元傭兵とは言え数年のブランクがある俺がいきなり実戦で百発百中の腕前を発揮するのはまず無理だ。だから俺は実戦で外しまくって死ぬという無様な姿を晒さない為にもこれから試し撃ちをするのだ。
M-10はこの前問題なく使えたので、トカレフを手に取る。トカレフという拳銃は生産性を優先するあまり部品数が他の拳銃に比べ圧倒的に少ない、弾丸を放つのに必要最低限の部品しかないのだ。残念ながらその必要最低限の部品に安全装置は含まれていない普通自動式拳銃には暴発を防ぐ為に安全装置が装備されているしかし極寒のソ連でプロの軍人が使うことが前提のトカレフには凍結の心配がある安全装置は不要と軍上層部は考えたのだ(プロの軍人は暴発なんてマヌケなミスは犯さないという考え)。
安全装置は無いが使用者がミスらない限り暴発する確率は低い安全な拳銃だが、使用者がミスれば暴発を起こす(例えば撃鉄を起こした状態での落下、ホルスターに戻す時に誤って引き金を引くなど)。俺も暴発でケガなんてしたくないのでトカレフの扱いには細心の注意を払っている。使用する予定がないのならトカレフから弾を抜き発射出来ないようにしている。緊急時にすぐには使えないが暴発するリスクはない(緊急時にはM-10を使えば問題はない)。
ガシャン、ジャキン―――――
俺はトカレフに弾の入ったマガジンを装填し、スライドを引き初弾を薬室に込める。これでいつでも撃てる状態になった。俺は肩幅程度に足を開き膝を少しだけ曲げて前傾姿勢を取る。両手でトカレフを握り両手を真っ直ぐに突き出すようにして構える。これは『アイソセレススタンス』という拳銃の基本的な構え方の一つだ。
「何年も経ってるのに覚えてるもんなんだな……」
アイソセレスは外人部隊時代に嫌というほど練習した基本の構えだ。逆に忘れることの方が無理なのかもしれない。
トカレフを構えた俺は撃鉄を起こし的にもってこいの木に狙いを定める。呼吸を整え木の中心に狙いを定め引き金を引く
パンッ――――
銃声が辺りに響く、しかしここはど田舎の山中だ。銃声がひびいても猟師が獲物に向かって猟銃をぶっぱなした程度にしか思われない、実に好都合だ。
「初弾にしてはまずまずかな?」
俺が撃った7.62×25ミリトカレフ弾は木の中心から2〜3センチ左にズレた場所に命中した。数年のブランクがあり心配だったがこれくらいのズレで済んで少しばかり安心する。これなら少しの練習で元に戻せるからだ。
パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ パンッ!
今度は連続で撃って自身の命中率と反動耐性について確かめる。木の中心やその周りに弾丸が命中するトカレフに使われる弾丸は7.62×25ミリトカレフ弾(30口径)は世界中で主流な弾丸である9ミリパラベラム弾(38口径)と比べると弾丸は小さいのだが火薬の装薬量が多い為反動が強いのだが……これなら問題はないだろう。トカレフの装弾数は8発、先ほど1発撃ち今7発撃ったので弾切れを起こしホールドオープン(スライドが後ろに下がった状態)されたままになっている。
空のマガジンを出し新しいマガジンをトカレフに装填する。今度は片手撃ちの練習だ。基本拳銃という物は両手で撃った方が反動を抑えられ命中率も高いのだが、実戦でいつでも両手撃てるとは限らない、片手を負傷し、片手でしか銃を撃てない時があるかもしれない今度の射撃訓練はその時の為の練習である。
パンッ
パンッ
パンッ
パンッ
パンパンパンパンッ
最初の発泡は間を開けての単発射撃、4発目で大体慣れたので残りの4発は間を開けずに4連射した。単発で発泡した最初の4発は中心から僅かに反れる形で命中、連射した最後の4発は木の外周部に命中した。敵を制圧するのには不安があるが牽制ならこれで十分か……。もっと練習したいのだが、トカレフの残弾はもうマガジン
二本分(つまり16発)しかないので断念する。M-10も同様に誠を仕止めるのに一発使い残りは5発しかない。
「そろそろ約束の時間だ……帰るか」
日本での入手は、困難であると思っていた拳銃が手に入ったが新たに弾薬の確保という問題が浮上した。しかしその問題は今は後回しにしよう、何故なら今日はデートがあるからだ。
家に戻り銃等の装備を隠し身仕度を整え軽めの朝食を済ませると俺は待ち合わせ場所に自転車で向かう。
「征男ー!ヤッホー!」
待ち合わせ場所には待ち合わせの時間の10分前に来たのだが、デート相手である薫が自転車に股がりながら先に待っていた。
「すみません、待たせてしまいましたか?」
「気にしないでよ。私が待ちきれなくて早め来ただけだから」
謝罪する俺に薫がニカッと明るい笑みで答える。彼女の服装は黒いハーフパンツに英字がプリントされた白いTシャツと野球帽という男の子ぽいっスタイルだが薫らしく良いそれに俺がプレゼントした太陽のネックレスを着けているのでそれだけで十分嬉しかったりする。ちなみに俺の服装はジーンズに半袖の黒いTシャツと非常にシンプルな物だ(あ?センス0?うっせーそんなこと前世の頃から分かっとったわボケェ!)今回のデートは薫と二人っきりだ。前回の皆と一緒のデートも良かったがやはり二人っきりのデートもしてみたいと俺が意見するとトントン拍子にデートの予定が決まった(ちなみにデートする順番はジャンケンで決まった)。
「それなら良いのですが……それでは行きましょうか?」
「賛成!それじゃ刈穂にどっちが先に着くか競争しよ?負けた方が勝者に飲み物奢りね!それじゃ……スタート!!」
「あの、私まだその競争に乗るともなんとも言ってないのですが……」
俺の返事を待たずに自転車で爆走する薫に言うが勿論聞こえていないだろうな。思わずため息が出るが悪い気はしない、俺は苦笑しながら全力疾走する薫を追い掛けた。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「最初から飛ばし過ぎですよ薫さん」
俺の漕ぐ自転車の後ろで荒い息を吐きながら自転車を漕ぐ薫に俺は苦言するが今の彼女には聞こえていないようだ。俺を振り切って全力疾走していた薫だったが、秋穂と刈穂との距離はかなり離れているので何も考えずに突っ走った為に今ではこのザマだ。
「それじゃゴールは私が貰いますね」
「ま、負けるかぁ〜〜」
俺の勝利宣言で火が着いたのか、自転車を漕ぐスピードが上がる薫
「フフフ、その調子ですよ。ゴールしたらジュース奢りますので頑張ってくださいね」
俺は薫に発破を掛けると自転車の速度を早めた。結局、俺が先に刈穂に着き10分遅れでバテてた薫が到着した。
「ゴクゴク………ぷはぁ〜〜生き返るぅ〜〜」
自販機で買ったオレンジジュースで疲れた体を癒す薫
「疲れは癒えましたか?」
そんな少し子供ぽいっ薫を見て俺は笑みを溢す。
「ううっ、勝負に負けたのにジュース奢って貰うとか、凄く複雑なんだけど……」
俺の視線に気付きいじける薫、敗者が勝者から施しを受けるのは意外と屈辱なのかもしれない。
「まあまあそんなこと気にしないでデートを楽しみましょう。今日は薫さんがエスコートしてくれるんですよね?期待しています」
「うん!前回は征男に任せきりだったけど今回は私が案内してあげるから期待してね!」
俺の一言で普段の調子を取り戻した薫
「よし!そうとなったら早速行こうっ!征男、着いてきて!」
「おやおや、強引ですね」
薫は俺の手を掴むとズンズンと進んで行った。これじゃどっちが男で女なのか、わっかんねーな……。
カキィーーン
「それでデートの初っぱなからバッティングセンターですか……」
「バッティングセンターはデートの定番だからね!」
そう言いながらバットを構える薫、薫に案内されて来たのはバッティングセンターだった。いやまあ俺も運動するのは嫌いじゃないから構わないが……最初からバッティングセンター?あれって2、3件回ってから行くイメージがあるんだが……まあ、俺も薫もデート経験は先日の一回しか知らないのだ。これから色々学べば良い。
「どれどれ、ピッチングマシーンの設定をプロ野球選手レベルにして………よし!勝負だ征男!」
バットの先端を俺に向けそう宣言する薫
「またですか……今度は何ですか?」
「フッフッフッ……勿論バッティングセンターに来たんだからホームラン勝負に決まっているのだよ征男くん!」
不適に笑いながら名探偵ホームズが相棒のワトソンに語り掛けるような口調で説明する薫……てか、プロ野球選手レベルってたしか200キロの豪速球だよな?それでホームランって無茶苦茶だろ………まあ、それはそれで面白そうだから良いけどさ
「わかりました。その勝負受けて立ちますよ」
俺も薫にバットを向けながら勝負を受ける。
「そうこなくっちゃ!私もプロレベルは初めてだけど負けないよ!」
バットを構えた薫は自信満々にそう言った……ってあんたも初めてなのかよ!?
「サァ!勝負だ征男!」
ピッチングマシーンから投球される200キロの豪速球、薫はそれに向かってバットを振るったのだった。
2時間経過―――――
「ハァ…ハァ…ハァ…全然…飛ばない……」
「そりゃ……そうですよ……ハァ…ハァ」
結果だけ言うと俺も薫もホームランを打てなかった。当然ちゃ当然だな、あんな豪速球バットで打ててもホームランにはなかなかならない俺も薫も2時間連続でバットを振ったがヒットは出せたがホームランにはならなかった。
「薫さん腕大丈夫ですか?」
「あはは、少しキツいかも……ホームラン勝負は引き分けということで……あっ!征男!お腹空かない?私お腹ペコペコで……もう我慢出来ない征男勝負は後回しにしてご飯食べに早速行こう!」
そう言って薫は打席から俺を連れて出て行こうとする薫
「またあなたは、急ですね……行きますから待ってくださいよ」
こうしてホームラン勝負は引き分けに終わった。
昼飯は、薫の案内で個人経営の定食屋で食べることになった。何でも学生であればご飯のおかわりが無料の素晴らしい店らしい
「征男!次はどっちが一杯ご飯を多く食べれるか競s「却下です」えぇー!何で?今日は私が奢るから気にしなくて良いのに…」
「当然です。食事は味を楽しむ物であって競争の道具ではないので」
流石に食事くらいは勝負とかは無しでゆっくり味わいたい、だから薫の提案は却下する。薫もそこまで本気では無かったようで『残念!』と冗談めかして言いながらメニューを取り出す。さて俺も何を食べようかな?
「はいよ!トンカツ定食と鯖味噌定食だよ」
「わぁ〜おばちゃんありがと!」
「ありがとうございます」
店のおばちゃんが注文した薫のトンカツ定食と俺の鯖味噌定食を持ってくる。おお、美味しそうだ。
「うっまい!やっぱり運動した後のご飯はここに限るね、征男もどう美味しい?」
「ええ、こんなに美味しい鯖味噌は初めてです」
ガツガツとトンカツと白米をかっ込む薫の問いに俺はそう返した。ここ最近鯖味噌を食べていなかったので鯖味噌がとても旨く感じる、甘さが凄く俺好みなのだ。
「鯖味噌だけじゃないよ、ここの料理はどれも絶品なんだから!」
この店の常連である薫は、この定食屋の料理を絶賛する。たしかに鯖味噌でこの旨さだ他の料理も期待出来るな。
「嬉しいこと言ってくれるじゃないかい」
「あ、おばちゃん!」
薫と店の料理を絶賛していると厨房からさっきのおばちゃんが出てくる。聞いた話だと旦那さんと二人でこの定食屋を切り盛りしているようなので厨房は旦那さんに任せたのだろう。
「それにしても薫ちゃんが男の子を連れてくるなんて珍しいねぇ〜まさか薫ちゃんのコレかい?」
恰幅の良いおばちゃんは薫に小指を立てて聞いてくる。
「ブフゥ!ちょっとおばちゃん!いきなり何言うのよ!?」
おばちゃんの話を食べながら聞いていた薫はおばちゃんのトンでも発言に口の中の米を吹き出して慌てふためく。
「なら違うってのかい?」
「いや…まあ…違うって言ちゃうと嘘になるけどさ……」
顔を真っ赤にしながらブツブツと小声で話す薫、
「ハッキリしない子だね、好きなのかそうじゃないのかハッキリしな!」
おばちゃんに一喝される薫、珍しいないつもハキハキと喋る薫がこんなモジモジするなんて(かわええから良いけど)
「ああもう!言います言いますから!……ゴホン、私はここにいる悪原 征男が大好きです!」
立ち上がって宣言する薫、幸い今の時間帯は俺達以外の客はいないので良かったが……まさかの愛の告白に俺も顔が赤くなりそうだ。
「やっと素直になったかい」
「うわぁ〜思いっきり叫んじゃったよぉ〜」
腕を組んでうんうん頷くおばちゃんと恥ずかしさのあまりテーブルに突っ伏す薫……なんじゃこのカオス。
「そんな恥ずかしがることでもないでしょうに……しかたないね、サービスで杏仁豆腐あげるから、元気出しなさいな」
「え!杏仁!?おばちゃんありがとう!」
ええ……薫さんやあんた食べ物で機嫌直るとかチョロ過ぎませんかねぇ?まあ、ずっと突っ伏されるよりは良いけどさ
「ふぅ〜食べた食べた」
「ご飯六杯って大丈夫ですか?」
その後薫はトンカツとご飯六杯それとおばちゃんからサービスで貰った杏仁豆腐を平らげ満足していた。
「よゆーよゆー♪これくらい私からしたら八分目だよ……あっ……もしかして征男ってガツガツ食べる女の子って嫌い?」
さっきまで満足そうだった薫が一転不安そうな顔になる。やはり彼女も女の子そういう所は気にするのか。
「いいえ、薫さんみたいにご飯を美味しそうに食べる女の子は大好きですよ」
前世の仕事柄しばらく飯が食えない時があったせいか、体重気にして食べ物残す奴よりご飯を美味しそうに腹一杯食べる奴の方が好感が持てる。
「だ、大好き!?ゆ、征男そういうセリフサラッと言うの卑怯だよ……」
そう言ってカアアと顔を赤らめる薫(やはり普段勝ち気な女の子がモジモジするのはええのぅ)
「卑怯って……私は大好きだと言っただけですよ薫さん」
「うわぁ!また言ったぁ!だからそういうのやめてよね!もう!私トイレ行ってくる!」
真っ赤になった顔を両手で隠しながら店のトイレに避難する薫、どうやら男勝りで男子からも異性というより同性の友達みたいに扱われていた薫は今みたいに異性として好意を向けられるのに慣れていないようだ。
「いやぁ〜あの子があんなに恥ずかしがる姿は初めて見たよ」
おばちゃんが楽しそうにトイレに逃げ込む薫を見ながら俺に話し掛けて来た。
「征男くんだっけ?あの子は、男の子ぽいっけど意外と乙女な所があるんだ。まあ、本人は素直じゃないからそういう面はなかなか見せやしない……そんな子だけど宜しくやってくれよ」
そう言って俺に頭を下げる。客商売やってるだけあって、薫の性格をよく把握している。
「ええ私も彼女のことは好きですので責任持って付き合いますよ。あっ、すみませんお会計お願いします」
俺はおばちゃんに伝票を見せる。
「おや?今日はあの子が奢るって言ってたのに良いのかい?」
「ええ、彼女から良いことを聞けましたのでそのお礼ですよ」
その後、薫に勝手に支払いを済ませてしまった俺が怒られたのは言うまでもない。
「ムゥーまた奢られた……こうなったら征男には罰として私との勝負に付き合って貰うからね!」
奢って罰がくだされるとはコレいかに?まあ、薫と付き合っていると飽きることがないから構わないが。定食屋から出ると彼女に連れられ様々なスポーツが出来るアミューズメント施設でボウリング場やダーツ、クライミング、フットサルなどのスポーツで勝負を挑まれた。付き合う前から勝負事の好きな彼女は東京にいる東堂 恋を思い出すが彼女は元気なのだろうか?おっと、今は薫とのデート中だったこの場にいない女性の事を考えるのは失礼だなそれに……。
「さあ征男!私からボールを取れるもんなら取ってみろ!」
今はドリブルをしている薫からボールを奪うことの方が重要だ。
「ヤッタァー!征男に勝ったどォー!」
まあ、結果は俺が負けたんだけどね、流石にバッティング、ボウリング、ダーツ、クライミング、フットサルと連続で体を動かすのだ。流石にキツいバッティングで引き分けボウリング・ダーツ・クライミングでは勝ったが最後のフットサルは流石に無理だった。まあ、本気で挑んでなかったから当然の結果と言えるな。
ちなみに今は露店市の時に来た公園で休憩している。
「いやはや完敗ですよ薫さん」
「フフフ、そうだろうそうだろうやっぱり私がNo.1!!」
やっぱりチョロくね?薫さん?
「さぁ、フットサルで負けた征男には罰ゲームだ!」
「えっ?罰ゲーム?そんなこと聞いt「問答無用!」そんな!」
そして俺はイタズラ小僧みたいな笑顔で手をワキワキさせている薫に襲われたのだった。
「で、これが罰ゲームですか?」
「ムフフ、極楽じゃ〜」
現在俺は公園の原っぱで正座し薫の膝枕になっている。そう罰ゲームとは彼女に膝枕をすることだったのだ。膝枕くらい罰ゲームなんてしなくても頼めべやってやるというのに……まあ、素直に頼まない所も彼女の可愛いらしい所なんだけどな(惚れた弱み)。
「ムフフ至福じゃ〜」
「喜んで頂けて何よりですよ」
今日はデートというよりスポーツをしたという印象しかないが普段のトレーニングでは動かさない筋肉を鍛えられたし何より彼女との楽しい思い出が出来たのだ一石二鳥である。
「ねぇ……征男……」
「はい、何です?」
そんなことを考えていたらいきなり薫が声を掛けて来た。さっきまでのふざけた口調ではない、真面目な話のようだ。
「私とのデート楽しかった?……ほら私って自分勝手な所があるからさ私が楽しんでても他の皆はそう思ってもないんじゃないかなって、だからさ征男……今日私と過ごして楽しk「薫!」えっ………」
素が出てしまったが関係ない、秋穂に来てからというもの薫の突拍子しもない思い付きに巻き込まれたことは多々ある。花見、釣り、スポーツ勝負etc、様々なことに巻き込まれた。しかし俺も理子や留美、雄介だって一度も断ったことはないし嫌だとも思ったことはない。秋穂での思い出は薫が誘ってくれなかったら得ることが出来ないものばかりだ。だから俺は偽りの口調ではなく俺の本来の口調で薫に逆に聞いてみた。
「薫、俺とのデートして楽しくなかったか?」
「な、何言ってのさ征男!?楽しかったのに決まってんじゃん!」
俺の口調の変化に驚きながらも質問に肯定して返す薫、良かった……正直戦うことが取り柄でしかない俺みたいな男が彼女を楽しませられるか不安だったが薫の発言を聞いて安心する。って俺が安心してどうする不安そうな薫を安心させねーと。
「なら、その言葉が俺の答えだ」
俺は薫の耳元でそう囁く、ちょっとキザぽかったかな?あ、薫がまた真っ赤になってる。
「ッ〜〜〜!ゆ、征男はいつもこういう不意討ちする。卑怯だよ……」
そう言って俺から顔を反らす薫、だがその顔には笑みが見えた。うん、不安そうな表情は消えて安心だ。
「あ、もうこんな時間!か、帰らないと行けないなぁ〜」
場の雰囲気に耐えられなくなった薫はまだ時間に余裕があるのにわざとらしく帰る準備をする。
「さぁー帰らないと大変だー大変だー」
薫さんや演技が下手くそ過ぎませんかね?俺は薫の下手な演技にため息を吐きながら彼女の背後に近づく。
「薫……」
「え?征男、どうし「チュ」むぅううう!?」
不用意に振り返った彼女の唇に口づけをする。今日のデートのお礼という名の先日俺のセカンドキスを奪った仕返しである。アレ?俺からキスするのって今回が初めてのような?
「………」
「………〜〜〜ッ!?」
長い口づけを終えて彼女の唇を解放する。
「ゆ、征男いきなりにゃにいを!?」
いきなり唇をされて慌てふためいている薫が真っ赤な顔で俺に詰め寄る。ってか今呂律回ってなかったな。
「今日のデートの礼だ」
そんな薫に俺は満面の笑顔で返す。
「ううっ、やっぱり征男は、卑怯だぁ!」
「ハハハ、今頃気付いたのか?薫、俺は昔から卑怯者だよ」
礼と言われると文句の言いようがないので薫は真っ赤な顔でソッポを向くしかしソッポを向く前に見えたら彼女の顔はキスをされたせいか少し嬉しそうだった。
こうして薫とのデートは無事に終了した。
戦闘という非日常パートよりもデートという日常パートの方が書くのが難しいとは思わなんだ……(´Д`|||)
次回は留美とのデートを投稿しますのでお楽しみに