クノイチと一つ屋根の下
「涼太お兄ちゃん~早くしないと、バス間に合わないーー!」
妹、三日月の声が響き渡る。
俺は着替えながら返事をし、急いで部屋を出た。今朝は俺の寝坊によって、妹に叩き起こされた。
「はやく! バスに置いてかれちゃう~! 」
俺達兄妹は、高校まで1時間バスで毎朝一緒に登校している。
三日月は俺の通学鞄を先に手に取り玄関へ向かっている。
「おい、待てって、家の鍵忘れてるって。」
「鍵・・・? あ、あー、えっと、どこにやったっけ?」
スカートのポケットや鞄の中をガサガサしているが、なかなか見つからないらしく、焦っている。
たまに、ドジな所を見せる俺の妹のそういう所が可愛い。昔は妹に対して、可愛いとかいう感情は一切無かったが、最近になって三日月に魅力を感じてきた。
小柄な体型で髪は高めのポニーテール、色白の肌をしていて顔は小動物のような、くりっとした目をしていて幼げな雰囲気。そうでありながら、柔らかそうなしっかりとしたものを持っていて、体つきは大人の女性に近づいている。
「えー、本当に鍵どこいったんだー?」
スカートにも鞄にも鍵は無かったらしく、風呂場に向かう妹についていく。脱衣場で洗濯機横のカゴから昨日の服を一枚一枚調べている。俺はその様子を後ろから黙って見ていたが、三日月がカゴの中からジャージを取った瞬間そこから黒いフリルのついた薄い生地の下着、それは三日月のパンツがひらりと落ちていくのにドキッとした。
そしてしゃがんでいる三日月のスカートの裾が少し捲れて、色白な太ももと紺色のパンツが見えている。
こんな絶景を俺の頭の中に永久保存できたらどんなに良いと思っていると、こっちを向いて困った顔をして三日月は言ってきた。
「お兄ちゃん、やっぱり見つかんない。」
「全く、昨日帰ってきて何処にやったんだよ。」
息を大きく吐いて溜め息をついて壁に寄りかかると、ズボンからチャリンと音がする。何かと手をやると、それは家の鍵だった。
まあ、俺も人間だから忘れることはあるさ、と悪びれないで鍵を出して、三日月の顔の前にかざす。
「あったぞ。家の鍵。」
「あ! ・・・涼太お兄ちゃん・・・もう。」
三日月は基本、兄の俺に対して反発したり怒ったりをしない。というか、どこかよそよそしい所があるのだが・・その理由はもう、わかっている。
俺が先に玄関から外に出て、次に三日月が出て家のドアを閉める。そこで三日月に声をかける。
「今日、お父さんとお母さん・・
それと、“妹”が亡くなって何年目の日だっけ?」
三日月は振り向き、俺の顔色を確認したように真っ直ぐ目を見て言った。
「8年目だよ。」
「そうか・・三日月。お前は・・・」
ようやく、気持ちの決心がついた。もう手放せる。
「お前は、俺の妹じゃ、ないんだろ?」
三日月は、こくんと頷く。
その瞬間、俺の視界がボヤけ気が遠くなった。
気がついたときには、俺は家族のお墓の前に来ていた。隣には三日月が立っている。
「ここで、話した方が良いって・・思って。
ここには、涼太お兄ちゃんの妹も眠っています。墓標には、お父さんとお母さんの名前しか書いてないけど。」
「そして、私はクノイチ。この世界とはまた別の次元の異世界から来たの。」
俺の妹であった女の子が、いつも家で見せていた小動物のようなくりっとした目で俺に種明かしをしてきた。




