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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第四章~新しい客~
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5.何か問題でも?

「…何か用ですか?」


 今村は二度寝しようと思っていた所で呼び出されて不機嫌だった。理事長は真剣な顔で今村に尋ねる。


「…今村君…君は『死霊術』を使えるんですね…?」


 重々しい口調で告げられたそれに今村は軽く頷く。


「それが何か?」

「…いえ。…どこでその禁術を…」

「元々知ってましたけど何か問題でも?…ってかそれどこで知ったんですか?ヴァルゴとか?」

「呼びました~?」


 名前を呼んでみると目の前に淡い水色のロングヘアーの超美幼女が現れた。理事長は即座に立ち上がる。


「これはっ!犯s…」

「黙って下さい汚らわしい~…で、仁さんは私を呼びま…どうしたんですか~?じろじろ見て~」


 今村は突然現れたヴァルゴの体をじろじろ眺めて天を仰いだ。


「あの馬鹿…ほいほい『神核』使いすぎだろ…何?急に色に目覚めたのか?」

「え~…と…とりあえず今村君…そちらの御嬢さんは…」


 理事長は我を取り戻して今村に尋ねるとヴァルゴが答えた。


「私はヴァルゴです~天帝ですね~…で~仁さんは何で私の名前を呼んだんですか~?」

「いや寧ろ何で聞こえた?」


 その辺の疑問をぶつけてみると意味ありげな顔で話を逸らされた。


「…まぁいいや。で?『死霊術』が何か?ってか俺に何か文句があるんですか?」

「…いえ。」


 諦めて理事長との話に戻した今村だったが何故か理事長はあっさりと引いてくれた。


「…じゃあもういいですね?失礼します。」

「はい。」


 今村は普通に理事長室から出て行った。その後をヴァルゴが付いて行く。そして理事長室に残された理事長は更なる問題に頭を抱えることになった。



















「…それで~仁さんに訊きたいことがあったんですよ~」


(何か口調があざといけどまぁいいや。)


「というより~この口調イライラするんですが~どうしたらいいですか~?」

「知るか!」

「この体になってからこんな感じなんですよ~」


 微妙に困った顔になるヴァルゴ。そんな表情もとんでもなく可愛く、多くの男性を紳士・・の道に引き摺り込みそうだ。


(…アーラムとかはもしかしてこんな趣味なんかねぇ…)


 だが目の前にいる男はまずもってして近眼で見えていない。というより治せるのに見る気がない。


「…で?聞きたいことって何だ?」


 思考の一部を飛ばしつつ今村は中庭で本題に入った。当然と言ってはなんだが高校内なのでヴァルゴが見えないように魔法をかけている。でないとお巡りさんを呼ばれてしまう。


「『神核』ってどうすればいいんですか~?」

「意味が分からん。」


 言ってる内容が曖昧すぎて伝わらなかったので斬って捨てた。ヴァルゴも伝え方が悪かったと思って内容を変える。


「つまり~『神核』の使い方と進化の方法が分からないんですよ~」

「あぁそういうことね。…じゃあ一回天界に行って説明しようか。『ワープホール』」


 今村はそう言って空間に黒い穴を開けた。そしてヴァルゴの手を引いて中に飛び込んだ。





「到着っと…どうした?あぁ手を触られたのが嫌だったか。後で消毒しろ。」


 今村は天界に着いてすぐにヴァルゴと手を放したがヴァルゴが自身の手をじっと見ているのを見てこともなさげにそう告げた。


「…寧ろ洗いたくないまであるんですけどね~」


 その呟きは当然今村の耳には入らない。天界の門兵はヴァルゴの顔を見てすぐに道を譲り、今村達はヴァルゴの部屋に入った。


「…さて、説明しようか。」

「…二人っきり…部屋…もしかして…でもまだ…お…お風呂入った方がいいですかね~?」

「…俺に手を掴まれただけで全身洗う気か…まぁいいけど。」


 何故かもの凄い卑屈になっている今村。理由は寝不足と朝からの傍若無人な態度に対する自己嫌悪だ。だが結果は割り切るのでもうお終いだ。


「そんなことはどうでもいい。…さて、『神核』の説明だったな。まず『神核』には幾つかの段階がある。」


 今村はそう言って壁一面にモニターを張り付けた。


「はいこのグラフに注目。『神核』は中位が一番多い。で、その中位ってのが『帝神核』ってやつだな。…で、数は少ないけど下位の『王神核』ってのと上位の『真神核』ってのがある。」

「王→帝→真の順番ですか~。」


 ヴァルゴは羽ペンで紙にメモを取りながら今村に確認を取る。今村は頷いた。


「そ、…でもまぁその辺はかなり適当だな。俺とか古い奴等ぐらいしか見分けつかないだろうし。…大体自称。」

「強さに違いはあるんですか~?」

「ある。借りれる力が段違いだ。」


 そして今村はモニターを別画面に変えた。今度は三つの棒グラフが並んでいる。今村はどこからか取り出した指示棒で一つずつ指していく。


「まず『王神核』を持ってる奴が使えるモード1。まぁお前なら『天帝モードLv.1』だな。『帝神核』の半分の力しか使えない。」

「王は帝の半分…Lvは何ですか~?」

「一個上がるとLvも1上がる。最大3でそん時は『天帝モードLv.Max』とでも言ってくれ。『神核』自体の能力は力の吸収と技の向上だからLvは上げてて損はないと思うぞ。」


 今村は指示棒片手にそう言ってヴァルゴが書き取るのを待つ。


「…で~『神核』のLvを上げるにはどうすればいいんですか~?」


 ヴァルゴは書きながら今村に質問する。今村は少し瞑目して答えた。


「…能力を使えば大体伸びるんだが…時間がかかるんだよな…」

「すぐに上げるにはどうすれば~」

「…アレは…いや。…無い。」


 断言した。ヴァルゴは今村が言いたくないことなのだろうと判断してこれ以上の追及をやめる。


「…ありがとうございます~。…それでなんですけど~、この後予定とかあります~?」

「…いや、特にはないが…」


 急に話の内容が変わったので少し戸惑いながらも今村はヴァルゴにそう返した。するとヴァルゴは花の綻ぶ様な笑みを浮かべる。


「よかったです~!ならこれから食事は如何ですか~?天界料理です~」

「…おぉ良いのか?」

「はい~」


 今村の返した返事にヴァルゴは更に上機嫌になる。そして席の準備とコックへの指令のために部屋を出て行った。そして待っていた方がいいだろうな~と思った今村は部屋で呟いた。


「…短期で上げるのが…ねぇ…何で『プリンスキス』って技で…何で高位に位置する呪いの技なんだろうね…というよりも『プリンスキス』だけ明らかに汎用性が高くて便利すぎるんだよな…まぁプリンスなんざ柄でもねぇしそんな歳でもないから是が非でもしないがな…」


 その言葉は誰にとって幸いか、今村以外の誰も聞くことはなかった。



















「…あの…ご主人様は…」

「…理事長に呼ばれたっきり帰ってきませんね…」

「…とりあえず俺は今日からここに住むことになったんだが…」


 その日の夜、「幻夜の館」では帰ってこない今村を待つ三人の姿があった。


「…初仕事みちあんないを終えて今日の業務終了ですか…」

「…『ワープホール』使ってどこかに行ったのは分かりますし、実験器具もそのままですから帰って来ないということもないんでしょうけど…」

「…先に晩飯を…」

「鯖缶でも食べてて。」


 祓は自身の部屋に大量に残されていた缶詰を相馬に投げつけた。


「ぎゃうっ!」


 それは第三宇宙速度を超えて相馬の眉間にヒット。相馬は昏倒した。


「…よく生きて…」

「事故死にしては駄目ですかね…」


(…そうすれば先生が変なことを考えずに…これが来なければ…)


 祓は若干忌々しげに相馬を一瞥し、今日はもう帰って来なさそうだと判断して自室に帰り、月美も与えられた部屋に帰った。


 そして今村が翌日帰ってくるまで相馬はそこに打ち捨てられていた。





 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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