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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第四章~新しい客~
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2.色を知るお年頃

 とりあえず聞き間違いかと思ったのでもう一度集中してみる。


 ―――やってられんな~めんどくさいし…怠いし死にたい。あー…まいっか。―――


(…いいんですか?いや…死なれると凄い嫌ですから嬉しい事なんですけど…)


 思い人はどうやら死にたがっていたようだ。だが思い止まっていた。


「ん?祓…起きたのか。」


 どうやらこちらに気付いたようで今村は祓の方を見てきた。祓は自身を見て何を考えているのか気になり見てみる。


 ―――腐れ理事こいつを犯したいってぬかしてたよな~キショいよな~死ねばいいのにあの腐れ悪魔。歳考えろよ―――


 そういうのは今の祓に要らない情報だ。祓は今村が祓のことをどう思っているかが知りたいのだから。

 ここで祓は攻めてみることにした。


「…お早うございます。」


 ―――昼だけどな―――


 内心では突っ込みを入れられていたのもスルー。


「あの…昨日は抱き着いて…」


 微妙に覚えている事実から今村の心情を揺さぶってみる。今村は微妙な笑みを浮かべた。


「あー…忘れろ…」


 ―――全く…酔い癖の悪い奴だった…まぁ別に俺に関係ないからいいんだけどね。別の奴と飲みに行くときは気を付けた方がいいと思うが…まぁ個人責任か。プライベートまで口出しするほど仲良くないし―――


 祓はその心を聞いたとき、頭を殴られたかと思った。


(…私は先生と仲良くない…関係ない…)


「…どうした?」


 祓が表情を曇らせているのを見て今村は心配してきた。その心情に祓は少しだけ救われる。大丈夫そうだなと判断したところで今村は言った。


「…で、だ。まぁお前が死んだことになってるのは良いとして。」

「え?…あぁ…はい。」


 祓は今村が訝しげな顔をして思い出した光景に自身がフェデラシオンで死んだことになっているのを思い出した。そして続きを促す。


「…何で俺が他の奴の面倒まで見なきゃならんのじゃ…」


 祓は今村の理事長室での会話を見始めた…












「…はっ!いけませんね…祓君の事は今は置いておくとして、い…今村君にお願い事があるのですが…」


 自身に酔っていたかのように悪魔らしい手口で祓をどうするか語っていた理事長が急に我に返ると真面目な―――しかし言いにくいことを告げる顔になった。


「なんです?」


 正直かなりうんざりしていたところに更なる厄介ごとが舞い込んできそうな予感がして今村の顔が顰められる。今村は早いとこ異世界で遊びたいのだ。


「…ソードマスターという人間を知っていますか?」

「知るか…じゃない。知りませんね。」


 一瞬敬語を捨てかけたがここに居る限りは一応生徒のつもりでいるので今村は敬語に戻る。そんな風な今村のことを特に気に掛けた様子もなく理事長は続ける。


「…アフトクラトリアからの依頼なんですが…そのソードマスターと言う人物が人類最強を名乗っておりまして、手が付けられない上に強い者を出せと要求して…」

「…俺は一般市民なんで。」


 めんどくさそうに今村はそう告げた。だがその時の理事長は顔を汗まみれにして言葉を選んでいるようだった。


「えーと…スミマセンが…圧力が凄く、フェデラシオンとの外交問題になりそうだってので…」

「あ゛ぁ?受けたってのか?勝手に?」


 敬語はどこかに逝ってしまったようだ。今村がかなりキレ気味に理事長に威圧を放つ。理事長は震え上がった。


「で…ですから。今村君なら瞬殺できるでしょう…?」

「…来る前に呪い殺すか。」


 今村はそう言ってローブから札を出した。それを見て理事長が止める。


「い…一応依頼を受けたので会うだけ会って…」

「…はぁ。只でやれってか…?」


 そこで理事長は受けてくれる気があることを察して喜んだ。


「アフトクラトリアで特例権を二回発動することを許すそうです。」

「…何ですそれ…」

「逸脱しない範囲内で条例や法を作ったり改正できるというものです。」


(…滅茶苦茶だな。そんだけ脅威が高いってことか…)


 今村は溜息をついてその依頼を受けて「幻夜の館」まで帰って来たようだ。












「…まぁ客が来るから驚かないように。」


 今村の短い回想をフルバージョンで見た祓は今村の結果だけを聞いて微妙な心持ちになる。


 ―――あ、あとついでにここの使用に当たってメイドが来るっても言ってたな―――


(!これは…)


 こっちには敏感に反応した祓。祓は元貴族で心を読み続けていたのだから主人とメイドがそういう・・・・関係になる事が多くあることも知っている。


(…唯でさえ私の想いに気付いてくれないばかりか女の子の好意をたくさん集めてる先生がメイド…)


 祓は少し考えた。そこに今村の思考が入ってくる。


 ―――…にしてもあの理事化けの皮がべろんべろんに剥がれてるよな…処女で可愛い子を準備したので。とか…俺を同類とでも思ってるのか?そういう概念も呪いに含まれてるが―――


(…まずい。先生の所に新しい女の子が…どうして次々…)


「あ、ついでにメイドが来るから。」


 ―――さて、その辺はどうでもいいとして、そこいらに転がってる馬鹿ども起こして「倍数系」を創るか~まずは「サウザンドナイフ」っと―――


 今村はそう思ってチャーンドや寧々を起こす。


 ―――まぁタナトスに関しては寧々の口づけで起こしてもらうとして―――


(…そんなことを考えてるんなら何で自分のことは…?やっぱり愛していると言ってきていた人が裏切ったから…?)


 目の前でタナトスが貪欲に寧々にキスと言う名の捕食をされている間に祓は全く別のことを考えていた。




 そして、全員が帰って行った後、祓は意を決して今村に質問をしてみた。


「あのっ!」

「ん~?」


 ―――「サウザンドナイフ」作りたいんだけど何だ…?―――


「せ…先生はっ…その…恋愛とか…」

「え?恋愛がどうした?誰か好きな奴でもできた!?」


 ―――こうしちゃいられん!「サウザンドナイフ」とかよりも媚薬作らねぇと!―――


 もの凄いテンションが上がっていた。祓はそうじゃないと首を振って続ける。


「先生は恋愛をしないんですか…?それとも今気になってる人が…?」

「…ん~好きになった奴がいないからなぁ…知らん。」


 ―――なんだつまんねぇの。それに何で俺の恋愛事情を訊いてきやがるんだ?暇なのか?生憎俺は忙しいんだが…―――


 目に見えてテンションが下がっているが一応心は読んでおく。これからが祓の知りたいところなのだから。


「わ…っわ…私は…どうですかね?」

「…何が?」

「その…こ…恋人にです!」


(言った!言えた!せ…先生は…?)


 ―――相手はっ!?―――


 言い切って目を伏せた祓。そこに今村のとても面白がっている心情が流れ込んできて目を開けると思いっきり歪んだ笑みを浮かべていた。


「誰が相手だ?お兄さんに言ってみなさい。」

「え…その…先生です…」


 若干迫って来ている今村に戸惑いつつ祓はそう言う。だが先生はここが学校である限り多数いる。なので今村には通じなかった。


「誰先生?」


 通じていないのが分かっているので祓は質問内容の変更を図る。


「せ…あの先生から見て私はどう…ですかね?」

「俺から見たら普通だ。だがその辺の奴から見れば違う。これでいいだろ?さぁ話題転換は終了だ…吐け。」


 もの凄い楽しそうに今村は祓に問い尋ねてくる。だが祓は自身に何の感情も浮かべかった今村に自分でもよくわからない感情が浮かんで涙目になった。


「…でも諦めませんからね…!」


 そう言って今村から逃げ出した。そして残された今村は歪んだ笑みを浮かべて呟く。


「カッカッカ…色を知るお年頃ってね…楽しいじゃねぇか。…さて、言いたくないなら自分から言ってくるのを待つが…話題にはしまくるからな…それはそれとして『サウザンドナイフ』つくんないとなぁ~」


 今村はそう言って自室に消えて行った。





 ここまでありがとうございました!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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