5.攻略後に
「…さて、城民に統治者の変更についてお触れを出そうか。あ、ついでに税の軽減の事についても出しとけ、お上8:農民2とかアホにもほどがある。品種改良して…こっちが6、農民4でいこうか。」
今村は統治者だったモノを蹴っ飛ばして机の上にあった書類を見ながら命令を下した。すぐに近くにいた赤髪の男が命令に従い、外に出て高札を立てる。城民の人々はそれを訝しげに見てすぐに泣き始めた。
(…何だ…?どう考えても大げさ過ぎるだろここまで聞こえる泣き声って…あ!前にもこんなことがあったとか?ありそう…喜んだ奴を殺したりとかしたんだろうな~しからば…)
今村はもう一度人を呼んだ。間を置かずに先程の赤髪の男が現れる。そして別の書類を見ながらノールックで今村は貴族の首を投げた。
「晒せ。それで安心させろ。…あぁあと…地下室に何かいる。思想犯とか言ってるが…要するにこれが気に入らないをぶち込んだだけだろこれ…」
また新しい書類を見て溜息をつく今村。次にとった書類で苦笑いを浮かべる。
「…はぁ、悪徳貴族テンプレートだな…おい近衛組。」
今村は2000人の中の女性で編成された250人の中の隊長が一歩今村の前に出る。
「いろいろ酷い目に遭った女性市民がいる。はいこれ、解放して来い。」
「はっ。」
命令を受けた二人はすぐに出て行って命令を実行する。すると城下では歓声が上がり、しばらくするとさらに歓声が上がった。今村は烏を飛ばして周囲を見張る。
「…さてと。略奪も行われてないし。そろそろ休憩しようか…」
実際にはそんなに動いてないのだが記憶の統合で3ヶ月分の労働の記憶、それに無理な術の使用。また、負けるはずはないと言っても戦争の指揮。そして並列思考使用での戦後処理…疲れて当然のことをやった今村は「雲の欠片」を使った。
「くぁ…一応まぁだ一部人間だからなぁ…趣味じゃなくて睡眠は必要だな…うん。寝よ」
今村は「雲の欠片」にダイブした。そして2秒後部屋に人が訪れる。
「…何だよ。」
今村が不機嫌な顔で出迎えたのは異世界ご一行組とルゥリン、それとルカだ。
「…えっと。止めに来たんだけど…」
「何を?」
「戦争を…」
「…あっそ。断るけど?用件は以上?なら寝るから出て行け。」
「お師匠様!添い寝は必要ですか!?」
「いるかボケ…ガキじゃあるまいし…ってか眠いのわかる?ひと眠りしたら質問会開くから今は出て行け。じゃ、お休み。」
今村は半強制的に全員を追い出した。
「…さて、今村?説明してくれる?」
一同は悪徳貴族が作った豪勢なテーブルが中央にある晩餐室に集まっていた。テーブルの上にはさまざまな料理が湯気を立てている。
「…うん。…まぁ…多分腕は悪くないんだろうけど…」
今村は小野の言葉を無視して食事を始める。…しかしすぐに違和感を感じ取った。
「…味が単調なんだよなぁ…塩一択。」
「聞いてるの?まず兵士の方たちはどうしたの!?完全に別人みたいになって帰って来たんだけど!」
「訓練を受けさせた。中の時間で半年。…あとはまぁ秘伝の薬でちょいちょいっと…う~ん…あいつら呼ぶか。『呪式召喚:スライム』」
今村は話半分で床に大量のスライムを召喚した。そして召喚した中の黒色のスライムと薄い焦げ茶色のスライムの二匹に一つずつ皿を近づけた。するとスライムの一部が皿に伸びて来て液体を出した。
「…うん。よし、あと何がいいかな…あぁマヨネーズにしようか。」
そう言って黄色のスライムを手元に来させ皿に調味料を吐き出させた。それを終えると今村は醤油とマヨネーズを混ぜてソースを作って食事を再開した。
「…えっと?もう何を聞いたらいいのか分からなくなったんだけど…とりあえず…それ…何?」
「調味スライム各種。美味しい。」
「安全なの…?」
「俺が作った。俺的には安全。…こん中で自信を持って安全に食えるって言えるのは俺と祓と…」
「お!大将ここにいたのか。…って懐かし!調味スラじゃないか!俺も飯食っていっていいかな?」
「…ルカとタナトスだな。」
タナトスがこの場に入って来て空気を固定して椅子を作って座った。
「借りるぜ…やっぱこいつの醤油が一番だよな…」
タナトスはそう言ってスライムの一部を千切り取った。そして代わりにスライムに熊の死骸を入れた。
「「「えっ」」」
「ん~合うわ~ってん?」
驚く元同級生ズに対してタナトスは塩が添えられた生魚を醤油に付けて食べながら見返した。
「…何か間違えたか…?」
魚を飲み込んで今村に訊く。今村は首を振った。
「合ってるよ。まぁ常識から外れてるからな。よし一応説明しておこうか。醤油は大豆のタンパク質を特定の酵素が分解してできるな?それを広義解釈しろ。こいつはタンパク質なら何でも醤油にするやつ。それこそ人間でもな…」
今村は人の悪い笑みを浮かべて元同級生ズに言って自身は食事を再開した。黙ってしまった元同級生ズに代わり今度はルゥリンが今村に質問を始める。
「…これからどうするつもりです?戦争始めちゃったですけど…」
「一応拠点はここで、どんどん進攻していく。防備に手を回すほどの人はいないし短期決戦でいかないとな。」
「…さっきやったやつで人を増やせないんですか?」
「きついから無理。」
今村はきっぱり言う。そして続けた。
「まぁ…軽く技術革新しながら攻め込むよ。タナトス仕込みは出来てるから明日はお前も一隊2000連れてここの北にある城落とせ。」
「ん?仕込みか~何やった?」
「…まぁ一言で言ったら釣りかな。」
「楽パターンか?」
「多分な。ここの貴族と同じなら。」
「任された。」
今村とタナトスは二人だけにわかるような会話をして終了した。今村は周りを見渡して頭を掻いた。
「あ~…この中で軍を率いたことがあるのは…」
「も!ひゃい!はい!はーい!お師匠様にしごかれました!」
ルカが口の中にものを詰め込んだ状態から無理やり飲み込んで喋って手を挙げた。今村は無視して周りを見る。だが誰も目を合わせない。
「…じゃあ…仕方ない…2000連れて西の城に向かえ。無駄な攻撃は要らないからな?」
「はいっ!行ってきます!」
「待てこのアホ!明日じゃ馬鹿が!…祓と…蜂須賀って俺から三国志の漫画借りたことあったよな?」
「え?あ…あぁ…」
急に話を振られて驚く蜂須賀。今村は軽く笑って言った。
「じゃ、大丈夫だな。明日、姜維を倒すときに諸葛亮がやった策で成功した奴するから。」
「待て、何が大丈夫なんだ?覚えてるわけないだろ。しかも何の策だよ…」
「…祓は大丈夫か?」
「はい。…ですけど先生は…」
「俺はまぁ東を落としてくる。…ついでに色々やってくるけどな。」
今村の邪悪な笑みにタナトスが反応した。
「どこでだ?」
「多分…今入って報告の感じだと…」
そう言って今村は起きてここに来るまでに手渡されたメモを見た。
「うわっ…今から糧秣揃えてるとか…この分なら明日の昼遅くに悠々とここに来るだろうな。」
「オッケイ。俺も参加する。」
「じゃ、明日が楽しみだな。」
ここに居る殆どの人々が会話の内容を理解しないまま質問会が終わり後は黙々と食事が始まった。




