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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第一章~最初の一年前半戦~
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34.終戦

「『月光刃げっこうじん』っ! 死ね! 死ねぇっ!」


 白銀の斬撃が宙を舞う。


「『魔炎波』あなたこそ死ねばいい……」


 青色の炎が斬撃ごと辺りを食い散らかす。「死に中州」に残された砂地はもうボロボロになっていた。


「お前がぁぁああぁっ!」


 閃光。それに遅れて轟音。祓はそれを難なく受け止めて喰らった。


「この程度じゃ足りない……もっと……もっと力を溜めて壊してやる……」


 それを挑発ととったチャーンドは辺りが震え出すほどのエネルギーを自身に溜め始めた。祓はそれを虚ろな目で見る。


「『我。我が怨敵を滅ぼすことを決め、ここに力を顕現す。月夜烏つきよがらすよ……」

「アホかてめぇはっ!」


 詠唱をしていたチャーンドの頭に音速の拳が振り下ろされる。


「やりすぎだろ! 結界もなしに何やってるんだ!?」


 殴った主はそれでチャーンドが死ぬとは露程も思っておらず、実際死んでいなかった。だが、チャーンドは一瞬訳が分からないで動作主の方を思いっきり睨みつけた。


「あぁ? 何か文句あんのか?」

「……え?」


 睨み返してくる人物に目を疑うチャーンド。それに虚ろな目をしていた祓も正気に返る。


「その氣は……先生……? 生きて……」

「何だテメェら幽霊でも見た顔しやがって……生きてちゃ悪いのか?」

「そんなわけないじゃないですかっ……」


 完全に涙目になる祓。一方チャーンドは合点がいかない顔をしている。そして「死之川」に入ると残骸を拾い集めて今村の方に持って来た。


「あ、俺がいる。」


 今村は「氣」からすぐにそれが何だか判断した。チャーンドは頷いて今村に尋ねる。


「これはどういうことだ? もし……我を驚かせようと思った悪戯なら流石に性質が悪いぞ……?」


 チャーンドがジト目でそう言う間にも今村は残骸を鑑定していた。そして鑑定結果を告げる。


「うん。間違いなく今世の俺の体だな。変質部分しか残ってないけど。」

「……変質部分?」


 チャーンドは訳が分からず鸚鵡返しにそう訊く。今村は頷いた。


「九行とかいうやつの呪いを盗って体が一部変質してたんだよ。……ってことは。この体は今世の体じゃない……でも呪力あり、『αモード』使用可能。前世の体かな?」


 全く訳が分からないといった顔をする二人に今村は説明し直す。


「つまり、まず『死之川』が赤かったのは俺の前世の血が活動していた所為で、状態は毒。」

「……まぁ、前世の仁の血ならば何でも溶かせるだろうな……調査もできないだろう。」


 おかしな納得をするチャーンド。祓は理解が追い付いていない。しかし、今村は続けた。


「で、血の川のどっかに多分前世の俺の体があった。……つってもこんなことできるのはアーラムぐらいしかいないけどな。」

「……それは……可能なのか……?」

「いや、勿論前世の俺の体だけだと欠損箇所が多すぎてそのまま生き返ると死ぬな。でもそれを補って生きるのに十分なパーツがあった。―――今世における俺の体だな。で、勝手にとっかえひっかえして要らないパーツは血で溶かして栄養にする予定だったけど呪いの力が一部分だけ強すぎたから消化しきれなかったんだろ。」


 一息に説明を終えると今村は「ドレインキューブ」で残骸から呪いを取り出して吸収した。


「まぁ多分そんな感じ。無意識下で今の状態じゃ『ドレインキューブ』はうまく使えないしね~」

「本当に……先生なんですね……?」

「まぁ……そうなるかな~?」

「無事でよかった……」


 駆け寄り抱き着こうとする祓。しかし今村は祓を避けると鋭く冷静に言い放った。


「触るな。」


 その短い言葉に祓は身を強張らせて止まった。それを見つつ今村は祓に訊く。


「ところでチャーンド喋ってるけどまだ妖女なんとかって思ってる?」

「え……あ……いえ……」

「じゃあいいや。『αモード解除』。」


 祓の様子がおかしいのに全く気が付かない今村は祓の返事に戦闘状態を解除してもいいかと思い「αモード」から通常状態に戻った。その直後激痛が今村を襲う。


「!? いって…いってぇ!? 何だ?」

「どうしましたっ!?」


 チャーンドはその場からすぐに原因を解明しようと能力を解放。祓は慌てて駆け寄るが今村はまたも静止を促す。しかし、今度は止まらなかった。


「触るなっつってんだろ!」

「ごめんなさい! 勝手ですけど……散々酷いことしましたけど! でも! ……死なないで……死なないでくださいっ!」


 今村を抱き締め必死で「キュアモーラル」を施す祓。今村はそんなことは訊いていないと少し困惑気味になる。


「いや……その辺はどうでもいいんだけどよ……溶けるぞ?」

「へ? 溶ける……?」


 今村が何を言っているかわからない祓。今村は説明してあげた。


「だから、前世の血がまだ表面に残ってるからさぁ……触ると溶けるぞ?」

「……先生は私のことが嫌いになったから触るなって言ったというわけではないということですか……?」


 祓の顔にほんの少しだけゆとりが生まれ、今村は祓が溶けるといっても何やら見当違いの反応をしているのを見て激痛に苛まれながら祓の問いに答える。


「? 別に嫌いになった訳じゃないな。うん。大体その程度で如何こうって心は持ってないよ? 裏切られてるのは慣れてるし。」


 その言葉を聞いて今まで今村の痛みの原因を調べていたチャーンドの顔が悲痛に歪む。


「なんてったって俺の前世の死因は一番の親友と思ってたやつからの刺殺だからね。それに比べりゃ赤の他人・・・・からの攻撃なんて可愛いもんさ。」


 歪んだ笑みで突然言われた言葉に祓は沈痛な面持ちをするが何も返す言葉がなかった。




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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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