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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第一章~最初の一年前半戦~
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30.奇襲

 チャーンドに付いて行ってすぐに転移陣に入った今村は目の前に鬱蒼とした森が広がっているところに着いた。


「ここは『月明かりの森』だ。この森は異常成長している。……それ以外に特に特徴はないが強いて言うなら動物が多いな。」

「へぇ。ちょっと行って来ていいか?」


 チャーンドの説明に興味を持った今村が入ろうとするとチャーンドに止められた。


「とりあえず名所の案内をするからその後でな。次に行くぞ。」


 チャーンドがそう言うと二人はまた転移陣で転移した。今度は山だ。


「ここは『冥府の山』だ。植物が多いから仁にお勧めだな。後で二人で来よう。さて次だ。」

「あ、ちょい待ちで。『シルベル君』……よし。」


 すぐに次に行こうとするチャーンドを少し止めると今村は呪具に位置情報を入れる。それが終わるとチャーンドと一緒にまた転移した。今度は少し高いところに出た。その両側には川が流れている。


「ここは『死に中州』で、右にある河が『三途の川』で、左にある川が通称『死之川』だ。」

「……『三途の川』は有名だが『死之川』? って何だ?」


 左にある薄っすらと赤色が付いた水が流れている川を見ながらチャーンドに尋ねる今村しかし、チャーンドは首を振る。


「わからんのだ。何をしても水に触れるとそれは溶かされるからな……調査のしようがな……」


 チャーンドの説明が終わる前に何かを察知した今村はチャーンドを突き飛ばしその何かからチャーンドを庇う。その攻撃をローブでいなそうとするが若干失敗してしまった。


「ぐっ……あぁ今の俺じゃもたんか。」

「……何で……?」


 奇襲によって結構なダメージを負った今村は襲撃者を見て歪んだ笑みを浮かべる。対する相手は今村の動きに呆然とした。


「よぉ祓。さっき振りだな元気か?」


 襲撃者は天明祓。そして理事長だった。理事長は予想外の人物に問いかける。


「……今村君。君はここで何を?」

「暇だったんで観光中です。」

「それは我々の仕事の邪魔をしていいものなんですか?」

「仕事……?」


 今村はこいつら急に冥界の主を暗殺しようとしてるのか? 頭でも狂ったのかな? と思いながら鸚鵡返しに訊き返す。理事長は自信満々に答えた。


「えぇ……妖女イシュアバルの抹殺です。」

「は? 何言ってんの? 馬鹿なの? 頭肥溜めに突っ込んで呼吸困難起こして死にかけたくらい狂ってるの?」


 理事長の阿呆すぎる発言で思わず敬意を持っていない形式上の敬語すら忘れる今村。一応、告げてみる。


「こいつ男だし、チャーンドって名前だ。……え? やっぱり惚けた?」


 今村の言葉に若干怒る理事長は負けじと言い返す。


「どこからどう見ても女でしょうが……そんな美人な男がいるわけないでしょう? 常識で語って下さい。」

「いるんですけど? 自分が常識なんて驕らないでもらえます?」


 今村は食い気味で呆れ混じりに言い返す。しかし、理事長は「それに」と付け加えた。


「チャーンド様は冥界の主の名前。そしてこの冥界においてその名を騙るのは最も禁忌とされている行為。そんなことができる者は大罪人だけです。」

「本人が本名名乗ってるんですけど?」


そんな今村の突っ込みに理事長は言い返す。


「本人は今『四界会議』に出席なさっているはずです。毎回代理も立てずに出席なさるほど真面目なあの方がこんな所にいるわけがありません。」

「お前そんなのキャンセルしたの!?」


 驚いた今村は今度は隣にいるチャーンドに大声で聞いた。するとチャーンドは今村の耳元に顔を近づけ今村にしか聞こえないように言った。


「どうせ我はあの場に行っても発言しない。それに冥界を出るときは『氣』を抑えておるし顔をフードで覆っている為誰も気付かないだろう。」

「そういう問題じゃない……」

「因みに仁と会うときはもちろんフードは外しているぞ? ……あとこいつら斬ってもいいか? さっきから黙っておれば我のことを女、女と……」


 チャーンドは結構お怒りだった。そんな中空気が読めない理事長が不用意な発言をする。


「で、今村君はその女に誑かされているわけですね? 全く……いくら美女だからといって大罪人に……」


 その瞬間キレたチャーンドは無言で日本刀を出し理事長に斬りかかった。しかし、理事長は予期していたらしく慌てず正八角形の鏡でそれを受け止める。


「ほら今村君。疚しいことのない人は急に斬りかかったりしませんよ?」

「奇襲で殺されかけて女呼ばわりされたら司馬仲達さんじゃないんだし襲い掛かりますよ……」

「……もういいです。くれぐれも我々の邪魔はしないでくださいね? 祓君準備は良いですか? 行きますよ。」


 会話を成立させてくれない理事長がチャーンドの刀を止めて祓に呼びかけると祓は戦闘準備を始めた。それを見て今村は溜息をつく。


「はぁ~あぁ。チャーンド。後始末はお前がやれよ~? 結構お偉いさん達らしいからな……『飛髪ひはつ操衣そうい』」


 そして今村はチャーンドに飛び掛かろうとした祓にローブの切っ先を向けた。祓はそれに驚く。


「あの……邪魔しないでください。それに怪我してますよね? 後で治すので動かないで安静にしていてください。」

「テメェがやったんだろうが……」


 それでも退かない今村に祓は少しムッとして訊く。


「……あの人が大事なんですか?」

「友人だ。数少ないな。」


 肩を竦めながら外に漏らさないように内側で奇襲用に「氣」を練る今村。祓はその態度に不満を持った。


「……私よりも大事なんですか?」

「勿論。」

「……私の方が胸大きくなりましたよ?」

「男と比べてどうする気だよ……」


 不意打ち用に溜めていた氣を一瞬で台無しにしてしまう今村。それを見計らって祓が奇襲を仕掛けてきた。


「ちゃっちゃ……危ないねぇ。油断させて一発で気絶させる気だったってか。思ったより悪どいねぇ……それならそれ用に行きますか。」

「……これ以上怪我させたくないんです。抵抗も邪魔もしないでください……お願いします……」


 辛そうにそう言って来る祓に今村はいつもより思いきり歪んだ笑みを浮かべて言った。


「やなこった!」


 その言葉で戦端が開いた。




 ここまでありがとうございました!


 やっとここまで……

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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